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【ネタバレ】「ロキ」第1話の上映シーン、こうして生まれた ─ 構想の発端を監督が語る

ロキ
(C)2021 Marvel

この記事には、「ロキ」第1話『大いなる目的』のネタバレが含まれています。

ロキ
(C) 2021 Marvel

経験していない人生を「回想」する

「ロキ」の物語は『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)ののち、四次元キューブによって2012年のニューヨークを脱出したロキが、神聖時系列の出来事を監視する組織・TVAにさっそく捕縛されるところから始まる。TVAによって“予定外”であるロキの脱出は、神聖時系列に分岐を生み出し、別の時系列(=マルチバース)を新たに生み出してしまうものだったのだ。別の時系列に分岐してしまったロキは、“変異体”として認識されている。

そこでロキが見たものは、その後に控えている自分の未来、しかし“もはや自分ではない自分”の未来だった。TVAは神聖時系列で起こるロキの人生をすべて記録していたのだ。ロキは自分の過ちから母親を死なせ、その後は父親を失い、兄と和解するも、その矢先にサノスの手で殺害されてしまう。自分が経験していない人生を、ロキはフィルムに記録された映像を通じて知った。それは、自分が苦しんできた家族との確執と、それがいずれ解決を迎えるという“運命”である。しかし、そこはもう戻ることのできない「元の時間軸」だ。

監督のケイト・ヘロンは、このシーンを「『素晴らしき哉、人生!』(1946)や『クリスマス・キャロル』のようなもの」と形容している。「ロキの人生には、つらかった時も、気持ちが兄に届いた時もあった。そこには希望があったんです。そこで、ロキが自分の記憶を、まるで舞台のように観られたら素晴らしいものになる、と提案しました」。そこで何よりも重要なのは、“ロキに見せるべき瞬間”を正しく選び抜くことだった。

「たとえば、ロキは母のフリッガを心から大切に思っている。彼女の死を見せることが大切であることはわかっていました。すると、トム(・ヒドルストン)が、オーディンの“息子たち、愛してるぞ(I love you my sons.)”という言葉も必要だと。そこで、ロキの勝利した時も、変化や成長の余地も、ともに見せたいと思いました。」

この方法は当初、ロキの物語をあまり知らない視聴者にも、ロキの置かれている状況を端的に示せるものとして採用された。ただしヘロン監督が大切にしたのは、あくまで「映画ではなく舞台のように」人生を見つめること。『マイノリティ・リポート』(2002)でトム・クルーズ演じる主人公ジョン・アンダーソンが“そこにいない妻”を見る場面を参考に、「そこにいないのに触れられるかのように思える、それがつらい」というシーンを目指したという。「ロキは観客の目線で自分の人生を見ることになる。自分の死に対して、ロキは私たちと同じように反応するのです」

ヘロン監督によると、ロキが自分の人生を見つめたあと、メビウス(オーウェン・ウィルソン)と言葉を交わすシーンは、とてもリラックスした雰囲気の中で撮影されたそう。心理的にハードな演技を要求されるため、「トムのやりやすい雰囲気を作ることをとにかく大切にした」と語っている。「トムは素晴らしい演技をしてくださいましたし、ロキが焦点を変えていくのがすごく良い。大げさに聞こえますが、ロキにとっての現実が変わったのです」。

ディズニープラス オリジナルドラマシリーズ「ロキ」は配信中。

Sources: Bustle, The Hollywood Reporter

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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