『ルイス・ウェイン』が描く、美しく感動的な「悲しみ」と人生 ─ 監督に単独インタビュー

──そんな彼の人生を映像化するにあたって、素晴らしい手法を使用されていたと思います。映像アスペクト比は4:3を使用していて、色使いやライティングも、美しい絵画のようでした。
映像は、彼の絵画からの影響を取り入れています。この映画の審美感は、その時々で彼の精神状態がどうであるかによって変化していきます。
アスペクト比を4:3にしたのは、おとぎ話のような雰囲気を目指したからです。また、楽しい猫の共演を描いたルイス・ウェインが好んだと言われるグループブロッキングにも適しているので、それを真似た表現というわけです。
彼の絵画の手法はカラフルで、様々なパターンを用いていましたので、彼ならではのセンスを再現して、ルイス・ウェインの世界観を作り上げました。もちろん映像デザインは、感情的・精神的なストーリーテリングの一部と考えています。

──僕は昨日、カフェでこのインタビューの準備作業をしていました。この映画のサントラを聴きながら質問案を考えていたんですけれど、サントラを聴いてカフェで泣いちゃいましたよ(笑)。素晴らしい楽曲で、映画のことを思い出したら、思わず泣けてきちゃって……。この楽曲は、弟さんであるアーサーさんが手掛けられたとか?
あはは(笑)。アーサーとは長いこと一緒に仕事をやってるんですけど、初期の頃に脚本を送ったら、アイデアをいくつか送り返してくれて。各部門で協力し合って世界観を作っていくのが好きなんです。ロケハン中も、渋滞にハマったらデモの曲を流して、撮影監督やデザイナーに聴かせていました。逆に、僕の方からもデザインミーティングであがってきた画像を送ることもたまにありました。
アーサーは、初期の頃からシンセサイザーを使わず、“電気”の感じをオーガニックなやり方で表現しようとしていたんです。そこで、テルミンのようなクラシックな楽器を使ったんですね。
楽曲のコンセプトとしては、劇中で描かれるあの時代感もありつつ、モダンな雰囲気も取り入れたかった。テルミンのような楽器は、よくエキセントリックで風変わりなものとみなされていて、そのためSF映画に使われることも多いのですが、そんなところがまさにルイス・ウェインに似ている。そこが気に入っています。ルイス・ウェインは、エキセントリックな人物として扱われがちなのですが、実際には非常に大きな感受性をお持ちの方なんです。
アーサーは、テルミンをとてもエモーショナルに使ったと思います。この楽器の音がアンサンブルを率いて、それが愛のテーマになる。ちょっと変わった楽器を使うというのが、本作のストーリーにもピッタリだと思っています。
──本当に涙を誘うスコアだと思います。まるであの曲が自分の代わりに泣いているような。それでいて、温かみがあって。
そして、猫っぽさもあるんですよね(笑)。

ここにまとめた他、ウィル・シャープ監督からは劇中の象徴的なシーンについてのネタバレ情報も語っていただいた。映画を鑑賞した方には鳥肌モノの解説となっている。
映画『ルイス・ウェイン 生涯愛した妻とネコ』は2022年12月1日、日本公開。