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ルーカスフィルム、『スター・ウォーズ』出演者のCGアーカイブを実施 ― 『最後のジェダイ』で活用済み、今後も「CGクローン」製作か

『スター・ウォーズ』シリーズを製作するルーカスフィルムが、今後、映画出演者のデジタル・アーカイブを実施する方針であることがわかった。『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(2017)でVFXスーパーバイザーを務めたベン・モリス氏が明かしている。

俳優の「CGクローン」、今後も製作可能に?

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)は、映画界に、映画ファンに大きな衝撃を与えた作品だった。1994年にこの世を去った俳優ピーター・カッシングが、『エピソード4/新たなる希望』(1977)と同じ姿でターキン総督として登場。これは代役の俳優にCGのターキン総督を組み合わせることで生まれた、いわば「CGクローン」ともいうべきものだったのである。同作のラストには若かりしレイア・オーガナ(キャリー・フィッシャー)も登場、これらは倫理面で大きな物議も醸している。

ではルーカスフィルムは、今後こうした「CGクローン」を作るのだろうか? すぐに作らないとしても、その可能性をどのように捉えているのか。米Inverseの取材にて、モリス氏は“俳優陣のデジタル・アーカイブ”の存在を否定していない

「映画に登場する主な俳優は、全員(デジタル・)スキャンしていきます。必要かどうかはわかりませんが、アーカイブとしてスキャンするのではありません。追って参照するためのものです。若い俳優、年を取った俳優、全員が対象です。」

モリス氏によれば、スキャンによってアーカイブが残されるのは、エイリアンまで含むありとあらゆる出演者だという。「アーカイブが目的ではない」「追って参照するためのもの」と明言されている以上、すでに「CGクローン」の可能性を見越したものであることは間違いないだろう。

注意

以下の内容には、映画『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のネタバレが含まれています。

©Walt Disney Studios Motion Pictures ©2017 & TM Lucasfilm Ltd. 写真:ゼータ イメージ

レイアの宇宙遊泳、CGと生身の組み合わせだった

モリス氏によれば、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の製作には出演者のCGアーカイブが活用されていたという。
2016年12月に死去したキャリー・フィッシャーのデジタル・スキャンを利用して、劇中でも印象的だった「レイアの宇宙遊泳」は作られたのだ。ファースト・オーダーの攻撃によって宇宙空間に放り出されたレイアは、フォースの力を使って自力で帰還する。製作費の事情でシーン全体を撮影することができなかったため、CGとの“合わせ技”が採用されたそうだ。

デジタル・アニメーターのステファン・アルピン氏は、その舞台裏をこう説明している。

「キャリーが演じたのをライアン(・ジョンソン監督)が撮った映像がありました。そこに、真空状態の彼女が氷に覆われていくなどのアイデアが加わったんです。そこで、キャリーをCGの姿に置き換える必要がありました。彼女の演技をそのまま維持しながら、必要な部分にアニメーションを合成する。ですから、ほとんどすべてがキャリー自身ではあるんですよ。」

レイアが宇宙に漂うシーンは、キャリー本人に非常に気を遣って撮影が行われたという。キャリーの近くで爆発を起こさない、スタントは本人が演じないといった複数の条件が、実写とCGを混合させるという“合わせ技”の使用を後押しした。

「複数の方法で撮影して、あとから表面にデジタル処理を加えました。(宇宙へ)吸い出されるところはデジタルのレイア、本人に(カメラが)寄るところはキャリー自身、砕けた岩の間を飛ぶところはミックスです。キャリーにワイヤーを付けられなかったので、あとから(デジタルに)置き換えるため、スタントパーソンの演技を使用しました。」

この方法は、『ローグ・ワン』でピーター・カッシングや若きキャリー・フィッシャーを登場させたのと同じものだ。すでにルーカスフィルムは、『最後のジェダイ』撮影当時のキャリー・フィッシャーのデジタル・アーカイブを保有しているのだろう。

先日マーク・ハミルは、若い頃のルーク・スカイウォーカーをCGで復活させることに賛成だと述べていた。おそらく、ルーカスフィルムはすでにマークのアーカイブも保有していると思われる。「事実は小説より奇なり」という言葉があるが、『スター・ウォーズ』の映画製作は、もはやそれ自体がSF映画の世界に肉薄しつつあるようだ……。

Source: Inverse

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。