Menu
(0)

Search

A24『マクベス』はコーエン監督流の緊迫スリラー、シェイクスピア映画の新たなスタンダードとなるか【レビュー】

マクベス
Photo by: Alison Cohen Rosa
マクベス
Photo by: Alison Cohen Rosa

なお本作の白眉は、空間のデザインだけでなく、追い詰められていくマクベスの緊迫感を演出する音楽やサウンドデザインにもある。劇伴の作曲を担当したのは、コーエン兄弟の全作品を手がけてきたカーター・バーウェル。シェイクスピア作品に音楽を付ける作業は本人にとっても新たな挑戦だったというが、観客の印象を一方向に誘導するのではなく、どこか曖昧で居心地の悪い状態をキープしつづけることで作品のスリルを持続させる。台詞や効果音の聴かせ方も含めたデザインの真価は、おそらく映画館など優れた上映環境でこそ発揮されるものだろう。

稀代のストーリーテラー、ジョエル・コーエンによる新解釈とスリラー映画としての構築。デンゼル・ワシントン、フランシス・マクドーマンド、キャサリン・ハンターをはじめとする俳優陣の濃密な演技。それらを支える空間やサウンドのデザイン。たしかに渋い一作ながら、シェイクスピアの『マクベス』をフレッシュに甦らせ、この物語を新たな世代に語りかける可能性を秘めた、新たなスタンダードになりうる一作だ。まずは本作を単独で、もしも興味が湧いたら過去の映画版『マクベス』と比較しながら、それぞれの語りの違いも含めて楽しんでほしい。

映画『マクベス』は2021年12月31日(金)より全国5館の映画館で期間限定公開中。2022年1月14日(金)よりApple TV+にて独占配信

あわせて読みたい

Source: 『The Tragedy of Macbeth』Press Notes, The Wrap, Deadline(1, 2

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

Ranking

Daily

Weekly

Monthly