『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』任天堂の宮本氏が求めた「これだけは絶対にやってはいけないこと」

2023年最大の大ヒット映画のひとつとなった『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』は、それまで“知っているようで実はほとんど知らない”マリオやルイージといったゲームキャラクターのキャラクターに肉付けを行った。この映画でマリオとルイージは、実在する街であるニューヨークのブルックリンに暮らしており、「スーパーマリオブラザーズ」という名義の配管サービス業を立ち上げるという設定が与えられたのだ。
マリオたちを大スクリーンへ運ぶ以上、そこには必ず物語や背景設定が必要で、これは映画公開前から注目されていたポイントだった。任天堂の代表取締役フェローである宮本茂は映像化にあたって、「マリオがどういう人物なのかを考えすぎることよりも、ゲーム画面で見たことを、できるだけ誠実に大スクリーンに視覚化することの方が、ずっと重要でした」との秘訣を米Varietyに語っている。
そのため宮本にとっては、マリオがどのように走り、どのようにジャンプし、どのように拳でブロックをしたから壊すのか、といった動きを映像化することこそ、こだわるべきことだった。「ランダムなことのように見えますが、そうした細かいことの積み重ねが、ファンの記憶に直結するのです」と宮本は話す。
だから、劇中に登場するアイテムについてや、そのロジックについては具体的な説明がない。宮本を口説いて映画化権を獲得し、共に製作したイルミネーション・スタジオCEOのクリス・メレダンドリは「説明アレルギー」なのだと、この映画の監督アーロン・ホバースは表現する。
確かに『怪盗グルー』『ミニオンズ』シリーズに登場するミニオンたちについても、どういう生き物なのかは謎のままだが、あえて知る必要もないこととされている。マリオの映画では、「キノコがどこからやってきたものなのか、どうやって流出を巨大化させるのか、そういうことをじっくり説明することはありませんよね」とホバースは指摘する。

マリオやルイージの出自については必要最低限の設定が書き加えられたばかりで、その他の要素について、細かいことは伝えられない。そもそもSF映画ではないのだし、物事の理屈自体はゲームでお馴染みになっているのだから、余計な説明をする必要もないのだ。「もしもスーパーヒーローのレンズを通してマリオを見たなら」、とホバースは続けている。「ピーター・パーカーがクモに噛まれてスーパーパワーを手に入れることに比べたら、全然おかしな話じゃないですよ」。
- <
- 1
- 2