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リーアム・ニーソン、映画出演100作目『探偵マーロウ』について聞く ─ SFスリラーの次回作も予告【単独インタビュー】

探偵マーロウ

リーアム・ニーソンの映画出演100作目となる記念すべき一作『探偵マーロウ』が、2023年6月16日より日本公開となる。作家レイモンド・チャンドラーのハードボイルド小説が生んだ伝説の男、フィリップ・マーロウを描く注目作だ。

原作は、チャンドラー作品の中でも最高傑作と言われることの多い『ロング・グッドバイ』の公認続編『黒い瞳のブロンド』。『クライング・ゲーム』(1992)でアカデミー賞脚本賞を受賞したニール・ジョーダンが、リーアムと4度目のタッグ作としてメガホンを取った。

THE RIVERでは、リーアム・ニーソンへの貴重な単独インタビューが実現。『探偵マーロウ』やチャンドラー作品、往年のクライムスリラー映画についてや、俳優としての今後、次回の出演作についても聞くことができた。

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探偵マーロウ

『探偵マーロウ』リーアム・ニーソン 単独インタビュー

──インタビューの前に……、リーアムさん、もうすぐお誕生日ですね!(編注:リーアムの誕生日はは6月7日。この取材はその1週ほど前に行われた。)

誕生日の話はやめよう。

──(笑)ハッピーバースデーと伝えようと思いましたが、やめておきます!(笑)
さて、『探偵マーロウ』はレイモンド・チャンドラーによる探偵フィリップ・マーロウの新たな実写映画です。僕は、チャンドラー作品の長編小説は全て読んでおります。もちろん、この映画の原作となった『黒い瞳のブロンド』も楽しく読みました。そして、あなたが新たに演じたフィリップ・マーロウも堪能させていただきました。このキャラクターは過去に何度も演じられ、それぞれ異なる魅力を持っています。あなたが演じたマーロウは史上最年長で、より経験豊かな人物に見えました。ご自身ではどのような特徴があると思いますか?

今のあなたの説明で、違いはすでに十分表現していただいたと思います。もちろん私はハンフリー・ボガートの『三つ数えろ』や、ロバート・ミッチャムの『さらば愛しき女よ』や、1978年の『大いなる眠り』も観ており、非常に敬愛しています。1973年のエリオット・グールド主演、ロバート・アルトマン監督『ロング・グッドバイ』もね。

ジョン・バンヴィル(※『黒い瞳のブロンド』原作者の名前。ベンジャミン・ブラックという別名で執筆している)のことも好きで、彼はチャンドラー財団の公認とともにレイモンド・チャンドラー風の本を書いたのです。彼の『黒い瞳のブロンド』での才筆は素晴らしかったですよね。

探偵マーロウ
©2022 Parallel Films (Marlowe) Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films

今回は、我々ならではのマーロウを作り出せたのが良かった。彼は第一次世界大戦で王立アイルランドライフルズ連隊に所属していたベテランで、彼にアイルランドの要素を与えるのも大切なことでした。というのも、レイモンド・チャンドラーの母親はアイルランド南東部のウォーターフォード出身で、私の母もウォーターフォードで生まれ育ったからです。面白い共通点ですよね。

ウィリアム・モナハンの脚本とニール・ジョーダン監督によるキャラクター描写を信用して、あとは自分の直感を信じて演じました。ニールが揃えたキャストたちは素晴らしいと思います。例えば、私の古き友人であるジェシカ・ラング(ドロシー役)。彼女と再会できるなんて最高でしたよ。なにせ、スコットランド・ハイランドで撮影した『ロブ・ロイ/ロマンに生きた男』(1995)で共演してから、もう25年が経ちますから……。

それにダイアン・クルーガー(クレア役)とも共演歴があります。コルム・ミーニイ(バーニー役)もそうですが、一緒に仕事しやすい方達ばかりです。監督のニールとはもう40年の付き合いですから、現場では毎日リラックスして過ごすことができて、そういうところが好きです。お互いに信頼しあい、尊敬しあう環境での映画撮影は喜びです。答えになっていたかな?取り止めのない話になってしまったね。

探偵マーロウ
©2022 Parallel Films (Marlowe) Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films

──そんなことはありません、ありがとうございます。さて、フィリップ・マーロウは、1930年代に登場し、40年代、50年代に描かれたようなキャラクターですので、古い男性観に基づいているとも言えます。このキャラクターを現代に甦らせるにあたって、何か注意を払ったことはありましたか?

この映画の舞台は1939年なので、現代に甦らせたわけではないね。マーロウは1940年代ごろに描かれたので、むしろ時間を遡っているわけですから。

──現代の観客に紹介するにあたって、という意味ではどうですか?

ニールが白黒で撮影しなかった、ということがあります。私は白黒版にも個人的に興味がありましたが、ニールはカラー撮影を望みました。色のある質感で、ノワールの印象を面白く広げています。撮影監督はシャビ・ヒメネスという方です。でも確かに、ノワールジャンルに敬意を払いつつ、現代の観客を楽しませたいという意識はありましたね。

──子供の頃に『三つ数えろ』の映画版を観たのが、マーロウとの出会いだったそうですね。

はい、ハンフリー・ボガート版でした。それから、アラン・ラッドのノワール映画もいくつか観ていましたね。『青い戦慄』(1946)とか。リチャード・ウィドマークの『死の接吻』(1947)も良い。他にも『裸の町』(1948)や『堕ちた天使』(1945)、ジョン・ガーフィールドの『悪の力』(1948)……。日曜日の午後には、いつもそういう映画がテレビでかかっていてね。トレンチコートを着て、口の端に煙草を咥えた男たちの映画。私は、そういう放送を観て育ったんです。

探偵マーロウ
©2022 Parallel Films (Marlowe) Ltd. / Hills Productions A.I.E. / Davis Films

──フィリップ・マーロウについては、本よりも映画の方で馴染みが深いでしょうか?

私はもう何年も、熱心な読書家です。クライム・フィクションが好きで、特に北欧のノワールものが好みですね。しかし自分でも意外なことに、この映画の話を頂くまでレイモンド・チャンドラーは読んだことがなかった。だから、『大いなる眠り』や『リトル・シスター』『さよなら、愛しい人』『水底の女』『高い窓』は、話を頂いてから読みました。チャンドラーによるフィリップ・マーロウの小説は7作ほどありますが、どれも気に入りました。素晴らしい。予測不能な、面白い人物描写ですね。事件の脅威が現れたと思ったら、いつもまた別の出来事が起こるという、複雑な犯罪物語です。一筋縄ではいかないところが素晴らしい。

──『ロング・グッドバイ』は読まれましたか?

はい、読みました。ロバート・アルトマン監督、エリオット・グールド主演の1973年の映画版も良いですよね。スターリング・ヘイドンも出ていて。素晴らしい映画です。実によくできている。そういうわけで、チャンドラー作品原作の映画はほとんど観ていますね。

──『ロング・グッドバイ』の映画は原作から独自に翻案されましたが、本作『探偵マーロウ』でも原作とは違った展開が描かれますね。

原作のジョン・バンヴィルはレイモンド・チャンドラー財団からの公認で、チャンドラーのような文体であの本を執筆しました。刊行は2014年です。ですので本作は、バンヴィルが解釈したレイモンド・チャンドラーに基づく映画となっています。ストーリーは脚本家のウィリアム・モナハンによって付け加えられており、さらにニール・ジョーダン監督がハリウッド映画に対するオマージュとして、映画スタジオにまつわる要素を加えているのです。

──そんな本作は、あなたにとって映画出演100作目となる記念の作品です。100作目、おめでとうございます。

どうも、ありがとう。

──この業界で、これだけ長い間ご活躍を続ける秘訣はありますか?

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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