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アベンジャーズは誰のもの? マーベルとコミック作家遺族が著作権訴訟に突入

Photo by Chris Jackson https://www.flickr.com/photos/cmjcool/8633318298/

『アベンジャーズ』シリーズのヒーローたちの権利をめぐって、ウォルト・ディズニー・カンパニー/マーベル・エンターテインメントが、コミック作家の遺産相続人に対する訴訟に入ったことがわかった。米The Hollywood Reporterが報じている。

権利問題に発展しているのは、アイアンマンやスパイダーマン、ドクター・ストレンジ、ブラック・ウィドウ、ホークアイ、ソー、アントマン、ファルコンを含む人気ヒーローたち。きっかけは2021年8月、スパイダーマンの生みの親であるスティーヴ・ディッコの遺産管理者が、著作権法にのっとり、スパイダーマンの権利移転を通知したことだった。米国では一定期間の経過後、著作者あるいは相続人が出版社から権利を取り戻すことができる。通知によれば、スパイダーマンの権利は2023年6月にマーベルからディッコ側に渡るという。

これを受けて、ディズニー/マーベル側は、スタン・リーやスティーヴ・ディッコ、ジーン・コーランらの遺産相続人を相手に、「これらのヒーローたちは職務著作物であり、著作権移転の対象にはあたらない」という宣言判決を求めた。“職務著作物”とは、雇用関係にあった従業員が職務上で創作にあたった作品か、創作者が雇用関係になくとも、契約にその旨が明記されている作品のこと。これらは雇用者(委託者)に著作権が認められる。ディズニー/マーベルが勝訴した場合、今後も同社が権利を全面的に管理できるが、敗訴の場合は相続人との間で権利を共有することになるとみられる

キーパーソンは、相続人側の代理人であるマーク・トベロフ弁護士と、ディズニーで数々の著作権を扱っているダニエル・ペトロチェリ弁護士だ。かつて、スーパーマンを生んだジェリー・シーゲル&ジョー・シュスターが、DCコミックスから権利を取り戻そうとした際、トベロフ氏がシーゲル&シュスター側の、ペトロチェリ氏がDC側の代理人を務めた過去もある。2008年、スーパーマンの権利の一部はシーゲル側にあることが認められた。

ペトロチェリ氏はマーベル・ヒーローの権利をめぐり、すでに複数のコミック作家や権利相続人に対する裁判を起こしている。争点は「コミックのキャラクターは誰の創作物で、法的に誰が所有者とみなされるべきか」ということ。マーベルにはキャラクターを生み出す際、複数人のライターやアーティストが協力しながら創作する方法を採っているため、この点も大きなポイントとなる。2012年にはゴーストライダーの権利に関する裁判もあったが、当時はこの方法論のために、マーベルが権利を所有するとの判決が出ていた。

なお2009年には、伝説的コミック作家であるジャック・カービーの遺族が、スパイダーマンやX-MEN、ハルク、ソーなどの権利移転を求める訴訟を起こしている。ただし、2011年に地方裁判所が、2013年に控訴裁判所が、同様に“カービーの作品は職務著作物であり、権利はマーベル側にある”との判決を下した。遺族側は最高裁に再審を請求したが、この時は審理以前に和解が成立している(遺族側の代理人はトベロフ弁護士だった)。

今回の訴訟について、ディズニー/マーベル側は、ジャック・カービーのケースと「事実上同じ状況」との見解を示した。前述の通り、相続人側が勝訴した場合、今後はキャラクターの権利が共有されるため、利益も分割されることになるだろう。ただし、問題となっている著作権の移転はあくまでもアメリカ国内に限ったもの。海外での使用については、今後も引き続きディズニー側が管理することができるという。

トベロフvsペトロチェリ、ここでも

Source: The Hollywood Reporter

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。