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『マトリックス』トランスジェンダーの暗喩、当初からの狙いだった「SFの世界で変化を語るには想像力が必要」

マトリックス リローデッド
© Warner Bros. 写真:ゼータ イメージ

キアヌ・リーブス主演マトリックス3部作を手がけたラナ&リリー・ウォシャウスキー姉妹は、公開当時は男性として、アンディ&ラリー兄弟として知られていた。2人がトランスジェンダー女性であることを公表したのは、ともに2010年代のこと。2000年代後半から心ない報道がなされたのち、ラナは2012年に女性として公に登場。リリーは2016年に声明を公開した。

2020年6月、リリーは『マトリックス』について「怒りと憎しみから生まれた」映画だったと語っていた。資本主義や大企業、社会への怒りを散りばめ、ジェンダーの要素、トランスとしての経験を反映したというのだ。このたびリリーは、Netflix Film Clubにて真意を明かしている。

(トランスジェンダーの寓意は)当初からの狙いでした。けれども、当時は世界に準備ができていなかったんです。企業のレベル、実業界にその用意がなかった。けれど映画は一般に広がるアートフォームなので、世界に発表するということは、手放すことでもあります。公に語られるようになるわけだから。私はそういうところが好きなんです。つまり私たち人間は、芸術に関わることで、何かを新しい形で、新しい角度から語ることができる。革命的なプロセスだと思います。」

『マトリックス』の脚本執筆中を振り返り、リリーはトランスとしてのアイデンティティが前面に出ていたかどうかは「わからない」と話している。しかし、当初は完成版と異なるアイデアがあったことも確か。第1作にはネブカドネザル号の乗組員としてスウィッチという女性が登場したが、当初は「現実では男性、マトリックスでは女性」という設定のキャラクターだったというのだ。

「私とラナは言葉を持っていなかった」とリリーは語る。「だから私たちは想像の世界にずっと浸っていたのだし、SFやファンタジーに惹かれたのだし、『ダンジョンズ&ドラゴンズ』で遊んでいたんです。すべては世界を作るということでした」。当時の経験が自分たちをフィルムメーカーとして解放したのだと思う、と彼女は分析する。

どうすれば、自分たちの存在をあらゆるジャンルの中で語ることができるのか。その点でいえば、あらゆるジャンルの影響を汲みつつ、新たに作り上げた『マトリックス』の世界は絶好の舞台だっただろう。カンフー映画やアニメ、西部劇といったジャンルを活かし、その中に「トランスとして、クィアとして、できるだけいろんなことを織り込もうとしていました。無限に広がる想像力の中でビジュアルに落とし込みたかった」とはリリーの談。その作業はとても楽しかったという。

現在、『マトリックス』がトランスジェンダーをめぐる物語として解釈されていることをリリーは喜び、「トランスの方々にとって意義の深い映画になって本当によかった。“『マトリックス』に救われた”と言ってくださるんです」と話している。「SFの世界で変化を語る時には想像力が必要になります。それは世界を生み出すことだったり、不可能だと思われたことが可能になることだったりする。だから、トランスジェンダーの方々に届くのだと思います。そういう方々の人生の助けになれたことをうれしく思います」。

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Source: Netflix Film Club

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

THE RIVER編集部。「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。劇場用プログラムや各種媒体への寄稿なども喜んで承りますので、お気軽にお尋ねください。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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