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【解説】『マトリックス レザレクションズ』予告編を徹底考察 ─ 「復活」の意味、どう展開していく

マトリックス レザレクションズ
©2021 WARNER BROS. ALL RIGHTS RESERVED

『リローデッド』でアーキテクトが告げた言葉

マトリックス リローデッド
© Warner Bros. 写真:ゼータ イメージ

振り返ってみると、マトリックスの真相を本当に明かしたのは、第1作ではなく第2作『リローデッド』だった。マトリックスの創造主・アーキテクトがネオに告げた言葉を思い出してみよう。我々が3部作で見たネオはマトリックス6番目の救世主。その前には5人のネオが存在しており、いずれも人類存続のための選択をした結果、そのたびにザイオンは再構築されていたのだ。しかし、6番目のネオはオラクルによって1対1の愛を志向するよう導かれたため、前任たちとは異なる扉を通り、『レボリューションズ』でマトリックス全てを支配したスミスとの対決にひとり臨んでいった。

マトリックスはリブート(=再起動)されてきたという『リローデッド』で明かされた事実を手がかりに、もう一つの可能性が考えられる。何者かによってマトリックスが再びリブートされた、つまり新たな救世主による戦いが幕を開けるというものだ。『レボリューションズ』で全てが終わったあと、最後にスクリーンに映っていたのは、オラクルとアーキテクトの2人であったというのも、思えば示唆的な締めくくりであった。2人はこのような会話を交わしている。アーキテクト「この平和はいつまで続く?」、オラクル「それが続く限り」。

アーキテクトのいた“ソース”では、過去5人の救世主の記録も蓄積されていた。つまり、もし再リブート説が採用されているのであれば、6人目のネオによって導かれた『レボリューションズ』までの出来事を踏まえながら『レザレクションズ』を進めていくことができるわけだ。事実、予告では『レボリューションズ』を踏まえたようなシーンがわずかに登場する。

例えば冒頭00:12〜、ニール・パトリック・ハリス演じるカウンセラーらしき男とネオの会話シーン。直後に訪れるフラッシュバックらしき高速モンタージュ映像には、マシン・シティでの最終決戦を終えて横たわっている目のつぶれたネオの姿が確認できる。そして予告終盤では、ジョナサン・グロフ演じるスミスは決定的とも言えるような不可解な言葉を発していた。

スミスの不可解な言葉とモーフィアスの謎

本作でエージェント・スミスを演じるのは、3部作のヒューゴ・ウィーヴィングではなく、ジョナサン・グロフだ。なぜこんなにも容姿が違うのかと気になる方もいるだろうが、そもそもスミスは3部作でも他人に憑依し自由に姿を変えることができたため、姿が変化していることにはさほど大きな驚きもない。ともかく、グロフが演じるスミスはネオと再会したようだが、ピンと来ていないネオにこう告げている。「長い年月の果てに始まりに戻ったのさ」。

ネオに敗れたはずのスミスが「始まりに戻った」と話すのは何を意味しているのか。『レボリューションズ』で人類が勝利した後の世界がどれほど続いたのかは定かでないが、やはり何者かによってマトリックスがリブートされたのではないだろうか。

これが正しければ、姿こそ違えどヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世が演じるモーフィアスが再びネオの元に現れ、「再び戦う時だ」と告げる展開も合点がいく。その一方で、どうしても説明がつかないのがこのモーフィアスの容姿。なぜ彼は若返った姿なのだろう。映像では、マトリックス上で堂々とした戦いを見せるモーフィアスだが、どこかこの仮想世界に馴染んでいないような違和感も垣間見られた。

終末世界で救世主を信じる若きモーフィアスが、第1作同様にネオを仮想世界から蘇らせようとしたなら、現実にあるザイオンはどうなっているのだろう。予告で流れている映像はほとんどがマトリックスでの世界のようだが、センチネルらしき戦闘マシンが上空を徘徊するザイオンと思われる空虚な場所もわずかに登場する。

ザイオンの世界を想像する上で、ヒントは予告には登場していないもうひとりのオリジナル版キャストの存在にありそうだ。ロゴス号の船長であった、ジェイダ・ピンケット・スミス演じるナイオビである。もし『レザレクションズ』のマトリックスがリブートされているなら、モーフィアスやネオらと同様にナイオビもそのままの姿で登場するとは考えられない。ナイオビもマトリックスに囚われているのだとしたら話は別だが、彼女がすでにザイオンの人間なら、モーフィアスと同じくむしろ若返っているはずだ。現時点でその姿は確認できないためこれ以上推測するのには無理があるが、いずれにしてもナイオビが重要な鍵であることには間違いない。

マトリックス レザレクションズ
©2021 WARNER BROS. ALL RIGHTS RESERVED

トリニティの新能力に見られる謎

最後に見ていくのは、冒頭でも記したように3部作とは違う雰囲気を醸し出しているトリニティだ。このチャプターでの考察は、これまでの「マトリックス再リブート説」という前提は一旦忘れ、予告編内で見られることのみに基づいて考えていきたい。

予告編ではトリニティについて興味深い“変化”が見られる。仮想空間上で驚異のアクションを見せていた彼女は、新しい戦闘能力を身に着けているようなのだ。それは映像2:06〜あたりで見られる。『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(2019)に登場するブラックキャナリーほどではないが、超音波のようなものを発しているのだ。

さらに注目してほしいのは、トリニティが叫んだときに出るオーラのようなもの。一見、トリニティの顔が超音波による振動で浮きあがってしまっているようにも見えるが、一時停止してよく確認してほしい。トリニティの顔ではないのだ。なかにはアジア系女性の顔も確認できる。叫んだときに別の顔が出てしまう仕組みこそ、予告編では明かされていないが、これは『レザレクションズ』のトリニティを解き明かすヒントかもしれない。

そもそもトリニティは『レザレクションズ』で死んだはずだが、何かが起きて再び蘇った。その“何か”は予告編でも示唆されている。トリニティが新能力を発揮する直前、2:03〜あたりに映っているマシンに繋がれた坊主姿の人間を見てほしい。目を凝らすと、トリニティの横顔にも見えないだろうか。坊主といえば、第1作で現実に蘇ったばかりのネオを想像する人も多いだろうが、ネオに扮するキアヌ・リーブスにしてはわずかに見える肩や腕のラインが細いようにも感じられる。

ここで考えられる仮説はこうだ。「『レボリューションズ』で死んだはずのトリニティが、その後ネオと人類の取引を交わしたマシン・シティの主“デウス・エクス・マキナ”によって救われ、予告映像のようにチューブで繋がれながらマトリックスのなかで生活していたら?」。監督のラナ・ウォシャウスキーは2012年の映画『クラウド アトラス』で同じ人間が姿を変えて後世に蘇る“転生”という概念を扱った。『レボリューションズ』で死んだはずのトリニティも何らかの形で“転生”しているとすれば、叫んだときに現れる“別の顔”の仕組みに説明がつくかもしれない。

曲「White Rabbit」の本質

ここまで考えられる限りの可能性を模索してきたが、どれが正解なのか、そもそも正解などあるのかは正直なところ分からない。しかし、予告編に見られるあらゆるものが『レザレクションズ』の物語の大きなヒントになっていることは確かだ。

公開まで残り4ヶ月、筆者は予告編で流れる曲、ジェファーソン・エアプレインの「White Rabbit」で歌われることの“本質”を考え続けていくことに決めた。ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」を歌ったこの曲、予告編でどうしても使用したいとラナ・ウォシャウスキー監督自らが選曲したものらしい。

予告編だけでも第1作を上回るほどの「不思議の国のアリス」要素が押し出されていたが、「White Rabbit」の歌詞に何かヒントがあるかもと思い、これは筆者にとって最後の望みだ。以下に、歌詞の一部を記してみたので、皆さんもぜひ一考してみては。

ピルを一粒飲めば、あなたは大きくなる One pill makes you larger
もう一粒ピルを飲むと小さくなる And one pill makes you small
それは、お母さんがあなたにあげたもの And the ones that mother gives you
絶対に何かしてはいけない Don’t do anything at all
アリスの元に聞きに行ってごらん Go ask Alice
あの子が10フィートの背の高さの時に When she’s ten feet tall

映画『マトリックス レザレクションズ』は2021年12月公開予定。

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Writer

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SawadyYOSHINORI SAWADA

THE RIVER編集部。宇宙、アウトドア、ダンスと多趣味ですが、一番はやはり映画。 "Old is New"という言葉の表すような新鮮且つ謙虚な姿勢を心構えに物書きをしています。 宜しくお願い致します。ご連絡はsawada@riverch.jpまで。

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