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『X エックス』シリーズ完結作『MaXXXine』最速レビュー ─ 華やかで斬新なゴア描写と、驚きのラスト

MaXXXine
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(カナダ・トロントから現地レポート)タイ・ウエスト監督&ミア・ゴス主演のスラッシャーホラー3部作 『X エックス』シリーズ。史上最高齢の殺人鬼が登場し話題となった『X エックス』、老婆パールの若き頃を描いた『Pearl パール』に続き、完結編となる『MaXXXine(原題)』が、全米で2024年7月5日に公開を迎えた。

本作は、1作目の6年後を描き、80年代のハリウッドを舞台にグロテスクで強烈な物語が展開していく。本作はキャストも超豪華。「エミリー、パリへ行く」などで知られる人気女優リリー・コリンズが新進気鋭の“スクリームクイーン”女優として、名作ホラーに出演してきた名優ケヴィン・ベーコンが不気味な私立探偵として、そして人気歌手ホールジーが主人公の同僚として華を添える。

ナイト・ストーカーの殺人事件が世間を震撼させていた、1985年のロサンゼルス。1作目『X エックス』の惨劇で唯一生き残ったマキシーン・ミンクス(ミア・ゴス)は、AVやピープショーなどに出演しながら生計を立てていた。そんな彼女は新作ホラー映画『The Puritan Ⅱ』のオーディションで主役に抜擢され、ついにスターになる夢の一歩を踏み出す。しかし、その夢を阻むかのように彼女の周囲で次々と殺人事件が発生。さらには、彼女が6年前に撮影したAVが自宅に届けられるなど、謎の存在がマキシーンを追い詰めていく。

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3部作の完結編ということあって、マキシーンの凶暴性が華やかに、そして恐ろしく描かれている。スプラッターシーンでは、デヴィッド・クローネンバーグ監督の作品を彷彿とさせる斬新さも持ち合わせており、グロ描写に耐性のあるホラーファンでも驚くようなシーンが豊富だ。少しずつ痛めつけるような描写は少なく、思い切った殺し方が多いため、恐ろしい爽快感を味わえるのも本作の最大のポイントである。また、ミア・ゴス演じるマキシーンの「スターになる」夢への執着がこの作品の魅力を一層引き立てている。そして本作では、ハリウッドサインのほか、スターになると名が刻まれるハリウッドウォークオブフェイム、さらには、映画スタジオのユニバーサル・スタジオ・ロットにある“あの名作ホラーに登場する屋敷”も使われており、マキシーンのようにハリウッドに憧れを持つ人を刺激するシーンばかりだ。

注目してほしいのは、マキシーンがホラー映画撮影のために自分の顔の型をとるシーン。背景をよく見ると作業室には『X エックス』の惨劇を思い起こさせるような、血みどろのマスクや手足が置かれている。型を取るためにマキシーンが液剤を頭に塗られるシーンは、サウンドが工夫されており、自分がマキシーンの立場になったように感じることができる。「息をするのを忘れないで」スタッフからそう言われ、タイマーのクロックがチクタクと鳴り響く中、ひたすら型が固まるまで息をし続ける……そんな不安を掻き立てるシーンが非常に不気味で、リアルな緊張感を与える。

ちなみにこの作業室だけではなく、コカインの入れ物がアヒルになっているなど、全編を通して『X エックス』や『Pearl パール』との「ちょっとしたつながり」を見つけることができるので、そこも楽しんでほしい。『X エックス』シリーズファンへのラブレターのような『MaXXXine』は、完結編を飾るにふさわしい。「スターになりたい」マキシーンを追い詰める存在とは…?果たして彼女は「スター」になれるのか、驚きのラストにも注目だ。

Deadlineによると、『MaXXXine』はオープニング週末の3日間で670万ドルの興収を記録。これは1作目『X エックス』のオープニング興行収入の1.5倍に当たり、同日公開された『怪盗グルーのミニオン超変身』の7,500万ドルには及ばないものの、ホラー映画としては大成功と言えるだろう。

タイ・ウェスト監督のこだわり抜いた工夫、ミア・ゴスの快演を思いっきり楽しめるA24作品『MaXXXine』。日本公開は未定。

Writer

Ayaka SaitoAyaka Saito

カナダ・トロント在住の映画レポーター/コラムニスト。北米で感じ取れる「ポップカルチャーへの熱」をお届けします。好きなジャンル:ホラー、好きなヒーロー:DCブルービートル。

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