『007』MGM社、NetflixやAppleへの会社売却を検討か ─ すでに複数企業と面会済みとの報道

『007』シリーズを製作する米メトロ・ゴールドウィン・メイヤー(MGM)社が、NetflixやAppleなどの大手企業への会社売却を検討している可能性が浮上してきた。米CNBCによれば、すでにMGMは両社を含む複数の企業とのあいだで、企業買収の興味をうかがう面会を実施しているという。
『007』をはじめ、MGMは『ロッキー』『ホビット』『キューティ・ブロンド』シリーズなど数々の話題作を手がけてきた。『ドラゴン・タトゥーの女』(2011)と続編『蜘蛛の巣を払う女』(2018)、『トゥームレイダー:ファースト・ミッション』(2018)もMGM作品だ。もっとも、同社は2010年に財政難により破産状態となっていた。しかしながら、『007 スカイフォール』(2012)と『ホビット 思いがけない冒険』(2012)が世界的大ヒットを記録したことにより破産を回避している。
MGMが企業売却を検討しているとの噂は、これまでにもしばしばささやかれており、詳細な報道もなされてきた。2019年12月、米Wall Street JournalはMGMとAppleが交渉準備に入ったと伝え、2020年1月には米The Hollywood Reporterも、MGMの人事や内情に触れながら“売却の可能性あり”と報じたのだ。ただしタイミングとしては、大ヒットが期待される『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2020年4月10日公開)の封切り後、MGMの価値が高まった後になると予測された。
もちろん、MGMが売却されるかもしれないという話題には、近年のストリーミングサービスの台頭や、大企業同士の買収・合併が相次いでいる背景がある。いまやディズニーやワーナーなどの大手スタジオ、米CBSなどのテレビ局は自社の映像配信サービスを有することも多く、そこでどんなコンテンツを配信できるかという問題は、オリジナル作品の配信に注目が集まる今でも健在なのだ。ディズニーが20世紀フォックスを買収したのも、配信サービスのコンテンツ増強が目的のひとつだったとされる。
そうした状況にあっては、『007』など充実のラインナップを有するMGMの注目度は高い。たとえばAppleやNetflixが『007』シリーズを独占配信できるとなれば、それだけでもサービスにとっては大きな強みとなるだろう。報道によれば、MGMが売却される際には100億ドル以上の値が付けられるとみられる。
もちろん現時点では、MGMや関係各社からの発表はなく、売却についても具体的な情報は出されていない。ただし、もしもAppleやNetflixがMGMを手中に収めることになれば、テック企業が歴史ある映画スタジオを買収するという、まさしく時代の変化を象徴するような出来事となるだろう。本当に異例の買収劇は起こるのか、それとも……。
Sources: CNBC, Wall Street Journal, The Hollywood Reporter