『ミッション:インポッシブル』トム・クルーズ主役卒業の構想があった ─ 『ゴースト・プロトコル』脚本大幅修正で見送りに

「列車の中で起こることは、直接的にも比喩的にも、“トム・クルーズがこの映画を引き受ける”という宣言になっているんです。彼はIMFのメンバーを引き受け、映画そのものを引き受ける。あのシーンはその両方なんですよ。彼はひととおり説明しますよね。“ここまでにこんなことが起こった、これからはこうする、悪いヤツはこいつらだ”。すべてが整えられるんですよ。」
マッカリーの名前は『ゴースト・プロトコル』にクレジットされていないが、おそらく彼は映画全体を構築し直すほど大きな作業に取り組んだのだろう。同ポッドキャストでマッカリー自身が語ったところによると、『ゴースト・プロトコル』の肝であるイーサンの妻ジュリア(ミシェル・モナハン)の設定、ジェレミー演じるブラントの過去を完成版の形に整えたのはマッカリーだったとのこと。マッカリーの参加以前、二人にはまったく別の設定と展開が用意されていたという。しかもロバート氏のいう、“雪の中での激しい戦闘”は本編に存在しないのだ。

なおマッカリーは、自身が脚本を修正したあとも、別の脚本家がプロジェクトに参加していたことを明かしている。「LOST」(2004-2010)のデイモン・リンデロフが、「スタジオの意向に沿った結末にするため」雇われたというのだ。
「(スタジオの求める結末は)映画にまったくハマりませんでした。僕の書いた脚本の方向性ではなかったんです。スタジオ側は、自分たちの気に入った結末をなんとか成立させようと手を尽くしていましたね。しかし、その時にはもう、彼らの求めるものではない方向性で撮影が進んでいました。デイモンが気の毒ですよ。名誉のためにいえば、そもそも彼は的外れな仕事のために雇われたんです。スタジオが求める結末と、『ミッション:インポッシブル』が求める結末との間で走り回ることになってしまった。『ミッション:インポッシブル』というシリーズには、自らの意志がありますから。」
“トム・クルーズ卒業計画”が誰の意向によるものだったのか、その真相はわからない。しかしスタジオ側がマッカリーの脚本に沿わない結末を求めていたということは、それがスタジオの要求だったという可能性も十分に考えられるだろう。
既定路線だったトム・クルーズの主役卒業を覆したマッカリー監督は、その後トムやスタジオの信頼を受けて、第5作『ローグ・ネイション』と第6作『フォールアウト』で脚本・監督を務め、今後は第7作、第8作の連続公開を控えている。しかし、もしもトムが主役ではなくなっていたら、きっと現在の『ミッション:インポッシブル』はなかったはずだ。たったひとりのフィルムメーカーによって、映画史に輝く人気シリーズは救われていたのかもしれない。
映画『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』Blu-ray&DVDは発売中。シリーズ第7作は2021年7月23日に、第8作は2022年8月5日に米国公開予定(ともにタイトル未定)。
Sources: Light the Fuse(1, 2), Collider(1, 2)