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撮影激しすぎて「泥のように寝た」 ─ 『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』オーガスト・ウォーカー役ヘンリー・カヴィルへインタビュー

『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』ヘンリー・カヴィル インタビュー
©THE RIVER

ヘンリー・カヴィル。スーパーマンを彷彿とさせる青のTシャツのしなやかさでは、ミケランジェロ彫刻のような肉体の隆起を隠しきれていない。スーパーヒーローの等身大スタチューがそのまま動き出したかのような非現実的なオーラを纏いながらも、こちら側が気圧されるような”厳格さ”とは違う。

『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』ヘンリー・カヴィル インタビュー
©THE RIVER

THE RIVERでは、映画『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』で来日したヘンリー・カヴィルへインタビューを行った。この前日、カヴィルはトム・クルーズやサイモン・ペッグ、クリストファー・マッカリー監督と共にジャパン・プレミアのレッドカーペットに登場している。炎天下での開催となったが、ヘンリーらはスーツを着込み、長時間に渡るファンサービスを笑顔でこなしていた。

『フォールアウト』で、極太アクションを披露するカヴィル。スクリーンで見る圧倒的なまでの逞しさとは別に、御本人は柔和で誠実なオーラを纏っていた。完成され尽くした造形はあらゆる瞬間と仕草が絵になるようだが、一方で芯にあったのは親しみやすさだ。なぜだろうか。カヴィルと話しながら、そんなことを考えていた。

『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』ヘンリー・カヴィル インタビュー
演じたオーガスト・ウォーカーを指差すこちらのポージングも、何も言わずともカヴィルが自ら取ってくれた。©THE RIVER

オーガスト・ウォーカー:攻撃タイプ

──昨日のレッドカーペットはお疲れ様でした。とても暑い一日でしたが、平気でしたか?

今はフロリダで過ごしているので、暑さには慣れてるんです。でもレッド・カーペットは、そうですね…、フロリダではあんなに着込まないですからね。ちょっと着すぎてる感はありました。他の皆も、暑さそのものを楽しんでいるようでしたから良かったんですけど、普段はジャケットの中にカシミアのセーターなんて着ませんからね、確かに暑かった(微笑)。

『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』ジャパンプレミア トム・クルーズ、サイモン・ペッグ、ヘンリー・カヴィル、クリストファー・マッカリー監督
前日、酷暑の野外で開催されたジャパン・プレミアにて。©THE RIVER

──Instagramで、日本は自分にとって特別な場所だと仰っていましたね。

古代日本にいつも惹かれるんですよね。古代文化というのが好きなんですけど、日本は歴史も古い国でしょう。武士道の詩的なところが魅力的だと思います。戦が、ただの争いではなく、ひとつの芸術のようなところとか。この真髄がどこから来るのか、日本各地を巡って理解したい。きっとどこかに起源があると思うんです。この島に始めにやってきた人々が文化をもたらしたのでしょうか。そういうことを探求して、感じ取って、この道義をもっと知りたい。なぜ世界中のどこにもなく、日本だけで芽吹いたんだろう。気になりますね。

──今作では、無慈悲なCIAエージェント、オーガスト・ウォーカー役を演じられました。彼のキャラクター性は、攻撃的なファイトスタイルにも現れていましたね。

オーガスト・ウォーカーは無慈悲な男で、巻き添え被害とか一般市民への危害なんて気にしない。そんなことはどうでも良くて、とにかく敵をブン殴れるだけブン殴りたい。自分の身体がデカいのも、うまく活用しながらですね。

戦闘スタイルとなると、これが荒々しい。とにかくどれだけダメージを与えられるか、打撃に特化している。打たれ強いので、自分へのダメージはあまり気にしていなくて、ひたすら攻撃に全振りしていくスタイルです。

──カヴィルさん自身もマーシャルアーツをやられていますよね。この経験は撮影で役に立ちましたか?

ある程度は…、いや、やっぱり役立ちましたね。スタント・コーディネーターでトレーナーのウルフィー・スティージマンにテコンドーとボクシングの稽古をつけてもらいました。彼からは様々な武術を学ばせてもらっていて、それをどう今作に活かすか、という感じ。細かい話ですが、今回は柔術は使ってません。

『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』ヘンリー・カヴィル インタビュー
©THE RIVER

撮影後は「泥のように眠った」

──スーパーマン役とは打って変わって、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』は、CG無しの本物のアクションの数々が最大の見どころです。カヴィルさんもスタント撮影を楽しまれましたか?

もちろん!本物のロケ地で、本物のスタントを、本物の演出で楽しみました。だからこそ没入感が増していると思います。適切に撮影されていれば、観客の感覚も冴え渡る。映画が終わる頃には椅子からズリ落ちかけているかも。パンチ一つにしても、シェイキー・カメラ(※アクションの臨場感を演出するため、わざとカメラを手ブレさせる手法)で見せるんじゃなくて、演者が本当にパフォーマンスしている。「うわぁ、痛そう!」みたいなね。これをやるのが僕達の仕事で、この仕事のそんなところが大好きなんです。

──ちなみに、アクションの撮影で誰かを怪我させてしまったり、もしくはご自身が怪我したりは?

幸運にも、誰にも怪我させることは無かったです。でも、着地したりパンチしたりした時に、「ヤバい、今痛かったぞ、マズいぞ」っていうことは何回もありました。そういう時は、バレないようにこっそり去って、隠れてストレッチするんです。もし怪我をしていたら、医療スタッフが飛んできて検査されて、瞳孔をライトで照らされたりしますからね。それはマズい。だから大人しくしておいて、そのまま撮影を続行するんです。「これ以上悪くなるなよ…」って祈りながらね(笑)。

──トイレでの格闘シーンは、さぞ撮影も大変だったのでは。

確かに、トイレのシーンはかなりキツかった。もともと、4日で撮影を済ませる予定だったんですよ。出来るだけ少ないカット数で、と思っていたんですけど、あの激しい内容では厳しかった。実際には4週間かかりました。クタクタでしたよ。毎晩家のベッドまで辿り着いて、そのまま泥のように寝てましたね。それくらい本気で疲れ切っていました。

ヘリコプターのシーンでも同様でした。めちゃくちゃに寒くって、しかもヘヴィ・マシンガンをウインドウ越しに抱えていなくちゃいけない。機体も猛スピードで飛行しているから、もう風との戦いですよ。身体に堪えた。だからニュージーランドでも、ヘトヘトでベッドに(笑)。どちらがキツかったか、というより、違う種類のキツさがありましたね。

 ミッション:インポッシブル/フォールアウト
© 2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

──ちなみに海外では、トイレのシーンで両腕を振ってから構える動きを”上腕二頭筋装填(Bicep Reload)”と呼ばれているそうですが(笑)。

色々呼ばれているみたいですけど…(笑)。上腕二頭筋装填は上手いですね。

トム・クルーズから ケーキ届くも なぜか無視

──トム・クルーズとの共演はいかがでしたか?トムとの撮影初日のこと、覚えてらっしゃいますか?

はい、覚えてますよ。その日の撮影分は本編からはカットされてるんですけど、DVDとBlu-rayに収録されるはず。すごく良いシーンだったので、内緒にしておきます。Blu-ray版でのお楽しみということで。初日は凄く楽しかったですね。試されている感じでした。スタントがあったんですけど、僕がどれだけヤル気かテストされてるようで。トムも僕がどこまで出来るか見てみようという感じで、「彼なら大丈夫だ!良かった!」って。

──トム・クルーズは、共演者に甘いココナッツ・クリーム・ケーキを送りつけて、周囲では「クルーズ・ケーキ」と呼ばれているそうですね。カヴィルさんも貰いましたか?

貰いました。クリスマスに届いたんですよ。「ハッピー・クリスマス フロム・トム・クルーズ」って書いてあって。「すごい!トム・クルーズからケーキが届いた!」って。だって、フロム・トム・クルーズってカードに書いてあるんですよ。これはもう、ナッツか何かをベースにした超健康志向のケーキだなと思ったんですけど、まぁ食べなくてもいいかなと。冷蔵庫に入れて…、いや、冷蔵庫にも入れてないや。隅っこの方に置いといたんです。

ある日、自宅に友人が来て「これ何?」って聞かれたんです。「あぁ、それトム・クルーズから来たケーキ」って言ったら「は?」って。「だから、トム・クルーズから来たケーキだって。」健康志向か分からないけど、食べるつもりは無いよと言ったら、「マジで言ってるの?一切れくらいは食べとけよ、トム・クルーズから来たケーキでしょ?!」って言うもんだから、「はいはい、わかったよ」ってことで、一切れだけ食べてみたんです。

これがもう、めちゃくちゃ健康に悪い、綺麗なケーキでして。その人と一緒に、3/4くらいペロっといっちゃいました。美味しかったんですよ。次届いたら、もう放置しない。即、平らげたいと思います。

※ちなみに前日の記者会見で、サイモン・ペッグはクルーズ・ケーキを「邪心の塊」と呼んだ。トム本人曰く「自制心を試すために送っている」とのことだが、サイモンは毎回あっさりやられてしまうという。

冷酷なウォーカー、正義のスーパーマン

──カヴィルさんは、正義のヒーローであるスーパーマン役としてもお馴染みですね。対して、今回のオーガスト・ウォーカーは無慈悲で、ちょっと意地悪なところもあるキャラクター。演じるのはどちらの方が難しいのですか?また、ウォーカー役で誰かを参考にしたりは?

 ミッション:インポッシブル/フォールアウト
© 2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

オーガスト・ウォーカー役では、特に誰かを参考にはしていません。ただ役を掘り下げて、自分の中にある「嫌な奴」を反映させて、表現しました。オーガスト・ウォーカーとスーパーマン、それぞれに難しいところがありましたね。

オーガスト・ウォーカーは、最初のうちは何者か分からない。周囲をイラつかせて、注意を惹こうとしている。状況を読み、周囲を自分の良いように泳がせている。それでいて大人しくしている。こういうのは演じにくいんですよ。やれることがあまりない。つい大きく演じたり、目立ったりしてしまう。そうじゃなくて、”無”を演じるというか、ひっそり演じなくてはいけない。

ヒーローを演じるのも、とても難しい。特にスーパーマンの場合、力がありすぎるから。無敵なんじゃないかというくらいですよね。だから、一般的な人間が取るリアクションが演じられない。通常なら、人間のリアクションを自然に再現できれば、いい役者だねということになるけど、スーパーマンの場合は逆のことをやらないといけない。人間のリアクションを慎重に模倣して、かつ彼らしく見せなくてはいけないんです。スーパーマンは人間というより、人間らしくあろうとしている。脅威となるものがないので、彼には恐怖 があまりないんです。だから感情の作りが全然違う。

本当の脅威が現れたとき、──脚本に書かれていれば── キャラクターの感情も顕になる。それでようやくキャラクターに深みが出てくるんです。でも、あくまでもそれが脚本に書かれていればということが前提で、そうでなければ、ただの人間のフリをした男になってしまう。スーパーヒーローを演じるのに難しいのは、そういうところですかね。脚本にも完全に書かれていれば、スーパーマンの心情を掘り下げることができると思います。

一方でオーガスト・ウォーカーの場合は、(人間性が)はじめから危険であることが分かっている。CIAきっての殺し屋で、抹殺のために動く男。だから観客も、このキャラクターは殺しも厭わないんだなということが分かっている。そういったキャラクター性を表情にも出すことができるので、こちらの方が演じやすかったですね。

「僕もヘリ操縦を習得したい」

──今作『フォールアウト』撮影前と比べて、ご自分の中での最大の変化は何でしたか?

(一度ため息をついて)クリストファー・マッカリーやトム・クルーズと素晴らしい経験をさせて頂いたことかな。お二人とも、この業界で経験豊富な大先輩です。彼らと仕事を共にできたことが、最大の変化ですね。今では僕にも知識が付きました。彼らは、編集段階でもノウハウを惜しげなく見せてくれたんです。「何か知りたいことはある?」と尋ねられるので、「そうですね、コレとコレとコレを…」と答えたら、「いいですよ、コレはこうやるんですよ」って教えて下さって。ふと、輪の中に入れてくれるんですよ。チームの一員に歓迎してもらえたんです。だからこそ、多くを学ぶことができました。

隠されていることが一つもなくて、常に「これをこうやってるんですよ」ってオープンになっているんです。「編集室に来たかったら、おいで!」って誘ってくれたり。「お邪魔になっちゃうので…」と遠慮してたんですけど、「全然、全然!そんなことないから、おいで!」って。エディターさんとも一緒に過ごして、色々なことを教えてもらいました。勉強、勉強、勉強。僕の人生の中でも、この12ヶ月感は特に学びの濃い期間になりましたね。

──学びと言えば、ヘリコプターの操縦も学びたくなってしまったのでは?

やりたいですねぇ…。ニュージーランドにいる時に、何度かヘリコプターを飛ばしたんです。ウェイド・イーストウッドというセカンド・ユニットのスタンド・コーディネーターさんに連れられて、ニュージーランドを飛び回りました。その時にちょっと操縦させてもらったんですけど、楽しかった!これが難しいんですけど、すごく面白いんですよ。トムがやってるのを見て、僕も習得したいなという気になりました。もしかしたら将来必要になるかもしれませんし。だから、やります。まずは時間を作らないと。簡単には習得できませんからね。週末コース的なものでもないし。時間を作ってニュージーランドに行く。僕はやりますよ!

ギャラリー

身体は大きく、気品に満ち、この上ないほど端麗な容姿に恵まれたヘンリー・カヴィル。一方で、親しみやすさをも感じさせるギャップの正体は何だったか。

カヴィルは、プライベートでは「ヒストリー・チャンネル」や「ナショナル・グラフィック」といったドキュメンタリー番組や「デクスター」「GALACTICA/ギャラクティカ」などのドラマを観るのが好き。ゲーマーでもあり、『マン・オブ・スティール』(2013)でザック・スナイダー監督からスーパーマン役オファーの電話があった時には、MMOゲーム「World of Warcraft」のダンジョン攻略に夢中だったために、(ザック・スナイダーからの着信であることを黙認しながら)無視したというエピソードも知られる。

こうした背景や、ヘリコプター操縦を習得したいと熱望する話ぶりからわかるように、ヘンリーには夢中になったものにはトコトンのめり込む、少々オタク気質にも似たパーソナリティが感じられた。カヴィルは心血注いだ『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』の撮影エピソードやスーパーマンへの想いを、とめどなく溢れる言葉で一気に話してくれた。健気な少年の心を忘れておらず、涼しい瞳でこちらを真っ直ぐに見つめながら。カヴィルが持つ「親しみやすさ」は、こんな無邪気さから現れているのかもしれない。

ヘンリー・カヴィル出演の映画『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』は、2018年8月3日(金)より全国ロードショー。ちなみにカヴィルは、スーパーマンになぞらえて、「カル」と名付けた秋田犬を飼っている。なぜ秋田犬を選んだのか?

「見た目ですね。まず見た目が立派だった。それにすごくお利口さん、懐いてくれるし。」

『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』公式サイト:http://missionimpossible.jp/

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。