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Netflix映画は「映画」か「ドラマ」か ― スティーヴン・スピルバーグ「アカデミー賞にはふさわしくない」と発言

スティーヴン・スピルバーグ
Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/36150879236/

ハリウッドにおいて、各社が展開にしのぎを削る映像配信サービスは今や映画スタジオ同様の存在感を放っている。Netflix、Hulu、Amazonはそれぞれオリジナルの映画・ドラマ作品を製作し、揃って高い評価を得ているのだ。
なかでも特筆すべきはNetflixの健闘ぶりだろう。近年はオリジナル映画をアカデミー賞に複数送り込んでおり、第90回(2018年)は長編ドキュメンタリー賞を『イカロス』(2017)が受賞、同部門には『ストロング・アイランド』(2017)もノミネートされた。なお『マッドバウンド 哀しき友情』(2017)は助演女優賞、脚色賞、撮影賞の3部門にノミネートされている。

しかし、こうした動きはハリウッドの映画人に完全に歓迎されているわけではない。2017年には『ダンケルク』(2017)のクリストファー・ノーランがNetflixを批判し、のちに謝罪して話題となったが、巨匠スティーヴン・スピルバーグはNetflixの映画賞進出に複雑な思いを抱いているようだ。

Netflixオリジナル映画は「映画」か「ドラマ」か

ITV Newsのインタビューに登場したスピルバーグは、映画館に足を運ぶという体験と映像配信サービスの関係について問われると、1950年代の状況を引き合いに出してこう述べている。

「1950年代前半も、現在と同じように(テレビは)映画に挑戦していました。人々が映画館から離れ、みんな自宅にいたんです。1950年代はテレビでコメディを見るのが楽しい時代で、映画館には行かなかった。ですから、ハリウッドはテレビと競い合うことに慣れているんですよ。」

しかしスピルバーグは、ある環境が当時と現在で大きく異なるのと指摘している。それは、ハリウッドの巨大スタジオが収益を保証された大作映画に力を注いでおり、以前は数多く製作されていた小規模の作品がストリーミング・サービスに流れる傾向があるということだ。この状況が進むと、映画監督たちの意識にも影響が生じる可能性があるのではないかという。

「製作費を増やしたり、サンダンス映画祭を競ったりという苦労をする映画監督が減っていきますよ。もしかすると、映画を劇場で、一般に公開するという箔をつけようとすることも。そして、多くの作り手たちが(スタジオではなく)映像配信サービスから出資を受けるようになります。映画賞への資格を得るために、わずか一週間の劇場公開を約束してね。」

アカデミー賞の場合、ノミネートを受ける長編作品はロサンゼルスにて7日間以上連続公開された映画に限られる。こうした条件のため、Netflixは『マッドバウンド 哀しき友情』を含む複数の作品を劇場公開しているのだ。しかしスピルバーグは、Netflix作品はあくまでオスカーにはふさわしくない、と続けている。

「テレビのフォーマットに作品を委ねたら、それはテレビ映画です。優れた番組はエミー賞には値しますが、オスカーにはふさわしくない。いくつかの映画館で1週間未満の上映をして、形だけの資格を得た映画が、アカデミー賞のノミネートに適しているとは思いません。」

スピルバーグ自身も述べているように、現在のハリウッドでは、かつてなら映画館で上映されていたであろう作品が次々に映像配信サービスへと流れている。賞レースにふさわしいかどうかは別にしても、2018年には『クローバーフィールド パラドックス』がNetflixにてサプライズ公開され、アレックス・ガーランド監督作品『アナイアレイション -全滅領域-』は北米以外ではNetflixで配信された。今後、映像配信サービスで公開される映画はますます増加の一途をたどることになりそうだ。
また2019年には、ディズニーが自社独自のストリーミング・サービスを開始予定。ディズニーの20世紀フォックス買収が完了すれば、これには事実上2つの巨大スタジオが資本とスキルを投入することになるわけである。

では、そうした状況下において、スタジオの判断で劇場公開を見送られた映画は、どれほど優れた作品でもアカデミー賞にふさわしくないのだろうか? リビングで新作映画を観る観客がさらに増えていくとして、それでも「劇場公開されていない」という理由だけで賞レースの候補に挙がらないという状況がやってくるとして、それは本当に健全だろうか……。

ちなみに2019年、Netflixはマーティン・スコセッシの新作映画『ジ・アイリッシュマン(原題:The Irishman)』をオリジナル作品として配信する製作費1億4,000万ドルともいわれるこの大作は、ロバート・デ・ニーロアル・パチーノ、ジョー・ペシ、ハーヴェイ・カイテルという映画スターを起用したスコセッシ得意のマフィア映画にもかかわらず、膨らみつづける予算の問題からハリウッドのスタジオが手放した一本だ。そこに手をさしのべたのがNetflixだったわけだが、さて、この映画をハリウッドは「映画」として扱うのか、それとも「ドラマ」として扱うのか。ことによっては映画業界の流れを変える一本として注目が集まることだろう。

スティーヴン・スピルバーグの新作映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』は2018年3月30日より、『レディ・プレイヤー1』は2018年4月20日より全国ロードショー

Source: ITV News
Eyecatch Image: Photo by Gage Skidmore

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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