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【ネタバレ】『Mr.ノーバディ』主演と監督に聞いた、あのシーンの裏側 ─ 「カッコいいショット」作るこだわり

Mr.ノーバディ
© 2021 UNIVERSAL STUDIOS and PERFECT UNIVERSE INVESTMENT INC. All Rights Reserved.

“何者でもない(NOBODY)”と思ってナメてたオジサンが、実は激強だったという痛快アクション・スリラー『Mr.ノーバディ』が公開中だ。THE RIVERではハッチ役で主演のボブ・オデンカークと、監督のイリヤ・ナイシュラーにそれぞれ単独インタビューを行い、映画の魅力や見どころを聞いている。

この記事では、映画を観た人だけのお楽しみとして、ボブ・オデンカークやイリヤ・ナイシュラーが特定のシーンに込めたこだわりトークを、ネタバレありでご紹介しよう。劇中で印象的だった、あのシーンの裏側も語られているから、これを読んでもう一度鑑賞に出かけるのも楽しいはずだ。

この記事には、『Mr.ノーバディ』のネタバレが含まれています。

Mr.ノーバディ
© 2021 Universal Pictures

ハッチ役ボブ・オデンカーク、バスに戻るシーンがお気に入り

── セカンドユニット監督のグレッグ・レメンターさんが、「現代のアクション映画を特別たらしめるものは、新しい取り組みへの挑戦だ」とおっしゃっています。『Mr.ノーバディ』における、新しい取り組みへの挑戦とは何ですか?

ボブ・オデンカーク:面白いことに、『Mr.ノーバディ』にはレトロなところがあります。70年代アクションに立ち返るようなところがあって、ぶっきらぼうで、エグさがある。凄まじいカーアクションもありますが、スーパー・クレイジーにぶっ飛ばすクルマは出てこない。飛行機とか、最先端テクノロジーも出てこない。もっとハンドメイドな戦いです。

それよりも、キャラクターを斬新な角度からとらえていることですね。バスのシーンで、一回私が放り出されるところがありますよね?面白いですよね。あの瞬間、このアクションシーンはもう終わりかなと思われたのではないでしょうか?あれは私のアイデアなのですが、あそこからバスにもう一度戻って戦うからこそ笑えるんですよね。『ウォリアーズ』(1979)や『ニューヨーク1997』(1981)のように。

Mr.ノーバディ
© 2021 Universal Pictures

イリヤ・ナイシュラー監督、細かなこだわり

──『Mr.ノーバディ』には、シビれるようなショットがたくさんありました。ハッチがブリトーの箱の中から銃を撃つシーンは『ターミネーター』みたいでしたし、拳銃の先でレコードの針を落とすショットもカッコよかった。あんな素晴らしいアイデア、どうやって思いつくんですか?

イリヤ・ナイシュラー:冷蔵庫のブリトーの箱から銃で撃つシーンは脚本にあったものですが、もともと脚本では、箱から銃を取り出して撃つ、という内容でした。でも、箱の中から直接撃たせたい、ということになって、箱を少し切って、空砲を撃てば箱が破裂するのではないかと考えました。3テイク撮って、うまく破裂したテイクが本編に使われています。とてもエネルギッシュでカッコいいですよね。

拳銃でレコードの針を落とすショットについてですが、あれは僕がストーリーボード上で考えているときに、指を持ち上げる様子をクローズアップで撮るという古典的な映像を撮りたいと考えていて、どうすれば斬新なものになるかと。僕は常に、「見たことあるけど、ちょっと違う」ものを作ろうということを意識しています。そこで、「拳銃で針を落とす」なんて映像は見たことがないな、と思いついたんです。

(撮影は)思ったより大変だったんですよ。拳銃の……どう呼ぶのかわからないんですが、レチクルみたいな、バレルの照準器がすごく小さいもので……。苦労して何テイクも撮ったことを覚えています。あれは撮影の最終日でしたね。クローズアップ・ショットだけをまとめてやった日で。ともかく、ストーリーボードを練っている時に、銃で針を落としたらシンプルでカッコいいと思ったんです。

特に今作では、ハッチに「カッコいい」瞬間をできるだけ用意しています。例えば、彼が家の中で野球バットで戦うシーンがありますが、元々は相手の顔をぶっ叩いてバットが折れるという演出が用意されていたんです。折れる用のバットが小道具として用意されているのでね。でも直前になって、顔を叩いてバットが折れるなんてありがちじゃない?と思って。だったらボブが自分で膝を使ってバットをへし折るようにしたらどうだろうと提案したんです。そんなこと、誰も出来ないでしょう?もし僕がやったら、膝の方が折れちゃう。こういうちょっとした変更が、撮影のほんの直前になって決まることもあるんです。カッコ良さを追求した細かい調整は、絶えず行っていました。

 Mr.ノーバディ
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──ボブ・オデンカークは、バスでの格闘シーンが一番お気に入りで、誇りに思っていると言っていました。監督がもっとも誇りに思っているシーンはどこですか?

イリヤ・ナイシュラー:ひとつを選ぶのは難しいです。ただ、この映画に「弱い(weak)」シーンはひとつもないと自負しています。「良い映画とは、良いシーンが3つあり、悪いシーンがひとつもない映画のことだ」という言葉がありますよね。(※映画監督ハワード・ホークスの言葉。”A good movie is three good scenes and no bad scenes​.”)

選ぶのは難しいですが、殺し屋がクリストファー・ロイドの所を訪れるシーンは好きですね。それから、家が燃やされるシーン。ミュージカル的な要素が好きなんです。あとは…、ちょっと待ってください。(しばし考える)

そうですね、監督の立場であることを抜きにして好きなシーンは、ハッチがバスの格闘から帰ってきて、キッチンでコニー(・ニールセン)が演じている妻のベッカに話すシーン。とても実直なシーンで、演技もよかった。アクション・スリラーではなかなか見られないようなシーンだと思います。確か、15稿か20稿くらい書き直したシーンで。

ストーリーボード上では、あの一連のシーンは15ショットくらい費やしていたんです。帰宅して、家の掃除をしていて……、と。でも撮影の時にはカメラは2機だけにしました。ボブと、コニーに1機ずつです。2テイクだけとって完了、それでバッチリでした。最後にコニーが涙を見せるところも完璧でした。そこが一番好きなシーンですね。

ボブ・オデンカークへのインタビューはこちら
イリヤ・ナイシュラー監督へのインタビューはこちら

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。