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ノーランの撮影現場にも「椅子はある」 ─ 広報担当者が報道否定も、『ダンケルク』俳優は「椅子なかった」

クリストファー・ノーラン Christopher Nolan
© LFI/Avalon.red 写真:ゼータ イメージ

“映画監督、クリストファー・ノーランの撮影現場では椅子に座ることも許されない”。『ダークナイト ライジング』(2012)『インターステラー』(2014)に出演したアン・ハサウェイの発言が世界的に報じられるや、映画ファンや業界関係者などの間では、この話題が大きな物議を醸した。これを受けて、ノーラン側はハサウェイのコメントを一部否定するに及んでいる。

もともとハサウェイの発言は、ノーランがセットに携帯電話を持ち込ませないことに触れ、「クリス(ノーラン)は椅子も許さないんですよ。椅子があったら人は座る、座るってことは働いてないってことだって」述べたもの。しかし、“ノーランが撮影現場で人を座らせていない”との説は大きな批判を招いた。ハラスメントであり、スタッフ全員にそんなことを要求しているのであれば訴えられてしかるべきだ、という論調もあったのである。

そんな中、記者のジェフ・ジェンセン氏は「『ダークナイト ライジング』『インターステラー』の現場に行きましたが、椅子はあったし、何回か座った」証言。『ダークナイト ライジング』に警官役のエキストラで参加したという脚本家のアーロン・スチュワート=アン氏も「椅子もテーブルもたくさんあった」記した。その後、ノーランの現場に椅子があることを証明する写真もSNS上には多数投稿されている。

思わぬ騒動を受け、ノーランの広報担当者であるケリー・ブッシュ・ノヴァク氏は米IndieWireに声明を発表。“ノーランは人を座らせない”との説を否定した。

正確を期せば、セットで禁じられているものは携帯電話(持ち込まれてしまうこともあります)と煙草(一切持ち込まれていません)だけです。アンが言っている椅子とは、ビデオモニターの周りに並べられるディレクターズ・チェアのことで、これらは実際の必要性ではなく、ヒエラルキーに応じて割り振られるもの。クリスは自分が座ることはしませんが、セットで椅子を禁止したことは一切ありません。キャストとスタッフは、いつでも、どこでも座りたい時に座ることができますし、しょっちゅう座っています。」

しかしながら気になるのは、ハサウェイが何をもって「ノーランは椅子を許さない」と話したのかということである。実際のところ、ノーランの撮影現場にも“椅子がある”ことは確かなようだが、ハサウェイのコメントもなんらかの実体験に基づくものではなかったのか。

実は2017年7月にも、“ノーランの現場には椅子がない”と語った人物がいた。『ダンケルク』(2017)に出演した名優マーク・ライランスである。マークは英The Irish Newsにて「ノーランは役者を椅子に座らせたがらない。だからどこにも椅子がない」と述べて「みんな、他の役者の上に座ってますよ。僕は年寄りだから、若い役者の上に座らせてもらってます」とジョークを一言。同作に出演したバリー・コーガンは、英The Independentにて、椅子がない理由を「俳優を緊張させておくため」と説明。当時はペットボトルの持ち込みも禁じられていたといい、そちらは「雑音で気が散るから」だとされた。

ここから想像されるのは、ノーランがメインキャストには厳しい要求を貫いていたということだ。ノーランの現場にも椅子はあるということだが、アン・ハサウェイやマーク・ライランスらが、実際に「いつでも、どこでも座りたい時に座る」ことができていたかどうかはわからない……。

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Source: IndieWire(1, 2), The Irish News, The Independent

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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