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「映画館が闇に包まれた」前代未聞の事態、クリストファー・ノーラン監督が心からの訴え

クリストファー・ノーラン Christopher Nolan
© LFI/Avalon.red 写真:ゼータ イメージ

新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を受け、全米では愛すべき映画産業が危機的な状況にある。北米映画興行のほぼ全てとも言える97%の劇場(約5,000館)が閉鎖状態に入り、ウォルト・ディズニー・カンパニーとユニバーサル・ピクチャーズは、興行収入データの発表を一時見合わせるとも発表。カリフォルニア州では外出禁止令まで発表された。映画業界に限らずだが、「不要不急」とされる産業はいま、深刻な死活問題を迫られている。

劇場興業が実質的な停止状態に陥った中、「新時代の巨匠」映画監督のクリストファー・ノーランが声をあげた。米The Washington Postに自名義でエッセイを寄稿、「映画館はアメリカ人のソーシャル・ライフに欠かせない。彼らは支援を求めている」と呼びかけている。ここには、映画を愛し、映画を想うノーランの切なる思いが綴られている。

ノーランはまず、これまで各地で人々をもてなしてきた劇場、およびその従業員を憂慮している。思い入れ深い劇場チェーンの「B&Bシアター」が、418館を閉鎖し、2,000人にも及ぶ従業員が一時解雇されたというのだ。

「『映画』と聞くと、人はまずスター俳優やスタジオ、華やかなものを想像すると思う。だが、映画ビジネスというのは、劇場の売店で働く人だったり、機材を運用する人だったり、チケットもぎり、作品のブッキング、広告業、それに地元の劇場のトイレ清掃員と、こういった全ての人々を指すものだ。ほとんどが固定給ではなく、時給で働く、ごく一般の人々だ。私たちが集まるコミュニティで、あるだけのお金で、民主的な生活を営む人々なのだ。」

この危機的状況の中で、ノーランはこうした劇場閉鎖措置が、経済的損害をいかに覚悟した上で下されたものかを理解して欲しいということ、および映画産業における「本質」を見て欲しいと訴える。「(映画産業は)社会生活に欠かせないものである。大勢に仕事を供給し、大勢を楽しませる。友人や家族と共に、夜をゆっくり楽しく過ごしてもらうために、従業員が物語を提供してくれて、もてなしてくれる、喜びがある場所だ。フィルムメーカーとして、私の仕事はこうした従業員の存在や、迎え入れられる観客無くしては有り得ない。」

米Netflixは2020年3月20日、失業状態にあるキャストや製作スタッフを支援するために1億ドルの救済基金を設立すると発表している。一方ノーランがここで訴えるのは、作品を観客に届けてくれる劇場や、そこで働く従業員にも手を差し伸べるべきというものだ。「劇場従業員は政府からの支援を必要している。加えて、劇場運営コミュニティは、スタジオとの戦略的かつ前向きな連携が必要だ。」

映画館は闇に包まれた。これがしばらく続くことになる。しかし、映画の持つ価値は下がらない」とノーランの言葉は力強く、リーダーシップを感じさせる。「この危機が去った時、人が集まりたいと思う欲求や、活き活きと過ごし、愛や笑い、そして共に涙したいと思う欲求は、より強くなるはずだ。」

ノーランは、映画ビジネスとは人間の原理的な本能に基づいているものだと論じる。人は物語を愛し、感情の高まりを、カタルシスを愛する。そして、人は皆で集まりたいという欲求があるのだと。ノーランはこのエッセイを、次のように結んでいる。「私自身もそうだったが、映画館に行くのは、音響や、スナック菓子、ソーダとポップコーン、それに映画スターのためだと考えていたかもしれない。しかし、実際は違ったのだ。私たちは、お互いのために、映画館に行っていたのである。

クリストファー・ノーラン監督は映画そのものの価値を強く信じており、人々が劇場に集まり、共に笑い、涙し、物語に夢中になることの人間的な必要性を説いた。日本では劇場閉鎖とまで深刻化していないものの、北米や中国ではずっと悲観的な状況にあるのだ。今は、ノーランの言う「この危機が去った時」が1日もはやく訪れてくれることを冷静に待つほかない。「この短期間の損害なら、ほとんどが取り戻せる」と、ノーランは励ましている。

Source:The Washington Post

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER編集長。ライター、メディアの運営や映画などのプロモーション企画を行っています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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