『ワン・バトル・アフター・アナザー』好評の裏で1億ドルの損失か

レオナルド・ディカプリオ主演、ポール・トーマス・アンダーソン監督による『ワン・バトル・アフター・アナザー』は映画ファンから高評価だ。米Rotten Tomatoesでは批評家スコア95%、観客スコア85%の双璧をなし、ここ日本でもXを中心に高い支持を得ている。
ところが興行収入の面では、そうではない。2025年9月26日に公開を迎えた本国アメリカでは初週末ランキングで1位を獲得したものの、国内興収は2,200万ドルとやや控えめ。3週目を終えた現時点で、国内累計は5,668万ドル、世界累計で1億4,000万ドルとなっている。
上映時間2時間41分となるこのR指定映画の製作費は1億3,000万ドルと報じられており、そこに7,000万ドル以上とされる宣伝費が乗る。損益分岐点は約3億ドルと見られ、このままでは「1億ドルの損失が見込まれる」と、米Varietyはセンセーショナルに伝えた。もっとも、ワーナー・ブラザースは同記事を通じ、2025年の自社配給作品は『罪人たち』『マインクラフト/ザ・ムービー』のヒットもあって収益目標はすでに達成していると主張している。
作品としての損失は別作品で埋め合わせが効くとして、『ワン・バトル・アフター・アナザー』の次の期待は賞レースだ。アカデミー賞に向けては、すでに『タイタニック』(1997)や『ラ・ラ・ランド』(2016)に並ぶ14部門ノミネートの可能性が語られており、スタジオ側もチェイス・インフィニティ(主人公の娘役)を“主演女優賞候補”として売り込む方針という。ほか、主演男優賞にディカプリオ、助演男優賞にショーン・ペンとベニチオ・デル・トロ、助演女優賞にテヤナ・テイラーとレジーナ・ホールが食い込む可能性もあり、実現すれば史上初の6人ノミネートだ。
Varietyでは本作の興行不振について、「イベント性が足りなかった」「観客にFOMO(話題に取り残されることへの恐怖)を抱かせることに失敗した」とのアナリストの声も。評論家と観客の熱狂をよそに、数字の上では“静かな戦い”に終わりつつある『ワン・バトル・アフター・アナザー』。だが、本作の確かなパワーは、観た者の心に響くはずだ。“革命はテレビに映らない”。
▼ レオナルド・ディカプリオの記事
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Source:Variety