『地獄の黙示録』音響制作の舞台裏、世界初の5.1chサラウンド ─ 『ようこそ映画音響の世界へ』本編映像

あの名作映画の“音”はいかにして作られたのか。ハリウッドの映画音響にフォーカスした世界初のドキュメンタリー映画『ようこそ映画音響の世界へ』より、名作映画『地獄の黙示録』(1979)の音響制作に迫った本編映像が到着した。
戦争映画の金字塔『地獄の黙示録』で音響スタッフを指揮したウォルター・マーチは、本作のほか『ゴッドファーザー PART III』(1990)など多くの作品でフランシス・フォード・コッポラ監督とタッグを組み、アンソニー・ミンゲラ監督『イングリッシュ・ペイシェント』(1996)でアカデミー賞編集賞と2度目の録音賞を受賞。この2部門で受賞歴を持つ唯一の人物であるマーチは、“映画音響の世界に関わるもの全員の父親”とも呼ばれるほど偉大な人物だ。
『地獄の黙示録』の音響制作にあたり、マーチは、現在では当たり前のように親しまれている5.1chサラウンドシステムを世界で初めて実現。音を映画館のあちこちに移動させる未知の技術に挑み、観客の意識を戦場の真っ只中に連れていくことに成功する。また本作では、“音”の制作を担当制にする方法を採用し、環境音や武器の音、船の音、群衆のガヤなど、一人のスタッフがそれぞれ一つの音を担当。それぞれが任された音の責任を持ち、最終的に指揮者であるマーチが一つの音にまとめ上げていく様子は、さながらオーケストラのよう。それぞれのスタッフがひとつの音に集中して取り組むことで、バラツキのない一貫性のある“音”が映画全体に響くのだ。戦場の“音”を見事に表現した本作で、マーチはアカデミー録音賞に輝いた。

「映画音響」とは、登場人物の声はもちろんのこと、環境音や効果音、音楽など、映画における“音”のすべてを指すもの。本作では映画監督たちや『スター・ウォーズ』(1977)ベン・バート、『ジュラシック・パーク』(1993)ゲイリー・ライドストロームら映画音響界のレジェンド&スペシャリストへのインタビューとともに“音”の効果と重要性に迫っていく。『キング・コング』(1933)『市民ケーン』(1941)『鳥』(1963)『ゴッドファーザー』(1972)から『ワンダーウーマン』(1917)『ROMA/ローマ』(2018)まで、あらゆる映画の映像もふんだんに登場。音響技術者たちの仕事ぶり、音づくりの秘密に触れて、新たな映画の魅力を発見しよう。
映画『ようこそ映画音響の世界へ』は2020年8月28日(金)新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、立川シネマシティほか全国順次公開。