『スター・ウォーズ』の音はこうして作られた ─ ジョージ・ルーカスと音響ベン・バートが明かす『ようこそ映画音響の世界へ』

『スター・ウォーズ』ブラスター音やR2-D2の電子音など、映画の印象的な「音」はこうして作られた。ハリウッドの映画音響にフォーカスした世界初のドキュメンタリー映画『ようこそ映画音響の世界へ』が明かしている。

映画を観るとき、多くの人があまり意識していないであろう “音”の効果。しかしその背景には、音響技術者たちの計り知れない努力や想像もつかないようなアイデアが存在する。彼らは時に膨大な時間とお金を費やし、実際の音以上の無数の音を重ねて表現。映像だけでは補えない画面外の状況までも音で伝える。

『ようこそ映画音響の世界へ』には、そんな彼らの仕事の一端や映画の音創りの秘密が盛りだくさん。この度、貴重な秘密の一部が明らかになる映像が特別に公開された。

世界中で愛され続け、熱狂的なファンも多い『スター・ウォーズ』シリーズ制作の裏側に迫る本編映像。冒頭から次々と映し出される、有名なシーンの数々の音の裏側は、それだけでファンの心を射止める。

ジョージ・ルーカス監督が語るのは、シリーズで音響デザインを担当したベン・バートについて。ルーカスやスピルバーグといった著名な映画人を輩出した名門南カリフォルニア大学の学生だったバート。彼は卒業する頃、音声に興味がある学生を求めて学校を訪れたルーカスの代理人と出会い、『スター・ウォーズ』のアウトラインを聞いてすぐに飛びついたという。

撮影の始まる1年も前からロサンゼルス中で『スター・ウォーズ』のためのあらゆる音を録音。映像のメインには、2人が数ヶ月も試行錯誤しながら、あの人気キャラクターR2-D2の声を創り出したエピソードを語る様子が収められている。

人間の言葉を発さないR2-D2について「何を言っているかわかるようにしたかった」と話すルーカスと「意味不明になるのが心配だった」と語るバート。2人はルーカスの家で映画に音を入れる作業をしながら失敗を繰り返していた。話し合いをする中でR2-D2の声へのイメージを膨らませ、バートは「言葉とは音の表情なんだと気づいた」と語る。

それから問題は一気に解決し、バートが録音した声とキーボードの音を重ねてあの馴染みのあるR2-D2の声が誕生。音響デザイン「あり」と「なし」の場合が比較される場面もあり、音が与える印象の重要性に気付かされる。

さらに本作の中では、バートが『スター・ウォーズ』に関わることになって最初に任された、ウーキー族の声に合う音を集める過程などを知ることができるシーンも。チューバッカの声に隠された驚きの正体とは一体？

このほか映画音響に関する見逃せない・聴き逃がせない多くの情報が明かされる全編は、音響設備の整った劇場で鑑賞したい。映画音響とは、観客を作品世界に引き込んでいく未知なる音作り。それに挑み続ける音響技術者たちの飽くなき挑戦と奥深き仕事の秘密を知れば、これからの映画鑑賞も違ったものになるはずだ。　

『ようこそ映画音響の世界へ』は、世界的に活躍する映画監督たちや、『スター・ウォーズ エピソード4／新たなる希望』（1977）などを手掛けたベン・バート、『地獄の黙示録』（1979）などで知られるウォルター・マーチ、『ジュラシック・パーク』（1993）などに携わったゲイリー・ライドストロームといった映画音響界のレジェンドを始めとした、その道のスペシャリストたちへのインタビューと共に、“音”が映画にもたらす効果と重要性に迫っていく感動と興奮のドキュメンタリーだ。

映画音響の進化において大きな偉業を残した『キング・コング』（1933）、『市民ケーン』（1941）、『鳥』（1963）、『ゴッドファーザー』（1972）から近年の話題作『ワンダーウーマン』（1917）や『ROMA/ローマ』（1918）など名作映画の映像をふんだんに使った、映画愛、仕事愛に包まれた感動と興奮の映画音響ドキュメンタリー『ようこそ映画音響の世界へ』は、2020年8月28日（金）より新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、立川シネマシティほか全国順次公開。