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ノーラン最新作『オッペンハイマー』は「キャリア史上最高の脚本」 ─ 主演キリアン・マーフィー、「特別な作品になった」と自信

クリストファー・ノーラン Christopher Nolan
© LFI/Avalon.red 写真:ゼータ イメージ

クリストファー・ノーラン監督の最新作『オッペンハイマー(原題)』は、ノーラン史上最高傑作となるかもしれない……。主人公の物理学者ロバート・オッペンハイマーを演じたキリアン・マーフィーが、その恐るべき完成度に自信を示した。

2020年9月、「オッペンハイマーについての脚本を書いた。君にオッペンハイマーをやってほしい」との連絡を受けたキリアンは、信じられない気持ちで電話を切ったという。直後、ノーランはキリアンに会うため、脚本のコピーを持ってダブリンを訪れた。ホテルで脚本を読み終えた第一印象を、キリアンは「今まで読んだ中で一番の脚本だった」語る

本作は、第二次世界大戦下で原子爆弾の開発・製造計画「マンハッタン計画」を主導した物理学者ロバート・オッペンハイマーの半生を描く物語。ノーランは「オッペンハイマーの物語ほど、危険に満ち、紆余曲折があり、倫理的なジレンマに満ちているドラマティックなストーリーを他に知りません」と豪語。「(歴史を変えた)その瞬間に立ち会いたかった。歴史上最も重大な出来事の、その中心にいた人物の知性と体験に観客を連れていきたい」と述べている

秘密主義で知られるノーラン作品ゆえ、キリアンも映画については自由に語れないというが、「心から驚き、感銘を受けると思います。僕が何を言っても、この映画をIMAXで観るのに比べたら取るに足らないこと」とコメント。「この映画を、この映画でクリス(ノーラン)が成し遂げたことを誇りに思います。僕たちの歴史においても特別な作品になった」と力を込めた。

キリアン・マーフィー Cillian Murphy
Photo by Maximilian Bühn https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Cillian_Murphy_Press_Conference_The_Party_Berlinale_2017_02.jpg

ノーランとキリアンの関係は、2003年、『バットマン ビギンズ』(2004)のためバットマン役のオーディションをキリアンが受けた当時に遡る。結果的にバットマン役ではなくスケアクロウ/ジョナサン・クレイン役で『ダークナイト』3部作に出演したキリアンは、そのほかにも『インセプション』(2010)『ダンケルク』(2017)に出演してきた。

『ダンケルク』にはひとつの逸話がある。キリアンが演じた謎の兵士は、脚本にほとんど説明がなく、役名さえ存在しなかったのだ。キリアンは撮影当時、ノーランから「一緒に考えよう、この人物の感情の変化をふたりで見つけたい」と言われ、ともにその仕事をやり遂げたのだと強調する。「それは信頼と尊敬によるもの。僕たちはお互いを長年理解し、信頼し、尊敬しています」。

長らくノーラン作品の脇役を担ってきたキリアンにとって、『オッペンハイマー』は満を持しての主演作。「より大きな責任を担っていいタイミングだと思っていましたが、本当に大きな役が来てしまった」と言う。しかし、主演俳優としてノーランとタッグを組めたことへの思いは格別のようだ。

「公の場でも、個人的にも、クリスには“君が僕を使いたいと思い、僕のスケジュールが空いていたら、いつでも映画に出るよ”と言っていたんです。役の大きさは気にしないと。だけど本当は、彼の映画で主演をやってみたくてたまらなかった。[中略](オッペンハイマーは)複雑で、矛盾を抱えた、非常に象徴的な役柄。けれど、史上最高の監督のひとりと一緒ですから。この仕事をクリスとやれることには自信がありました。」

共演者にはエミリー・ブラント、マット・デイモン、ロバート・ダウニー・Jr.、フローレンス・ピューをはじめ、ベニー・サフディ、ラミ・マレック、ジョシュ・ハートネット、ゲイリー・オールドマン、ケネス・ブラナー、デイン・デハーン、マシュー・モディーンら豪華キャストが揃った。ノーラン史上最大の挑戦が、もうすぐそのベールを脱ごうとしている。

映画『オッペンハイマー(原題:Oppenheimer)』は2023年7月21日に米国公開予定。

Source: AP News

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。