『オッペンハイマー』に未公開シーンは存在しない ─ 「ノーラン作品は脚本が映画そのもの」とキリアン・マーフィー

クリストファー・ノーラン監督、第96回アカデミー賞で最多7冠に輝いた『オッペンハイマー』で主演男優賞を受賞したキリアン・マーフィーが、「本作に削除シーンは存在しない」と明かしている。
通常、映画では編集段階で削除シーンが出てしまうのは当然のことと見なされているが、巨匠ノーランの場合は当てはまらないらしい。米Colliderのインタビューに応じたマーフィーが、「どのシーンがカットされたのですか?」の質問に、「クリス・ノーランの映画に削除されたシーンは存在しませんよ」と答えた。ということは、ディレクターズカットも存在しないことになる。
『オッペンハイマー』でノーランと5回目のタッグを組んだマーフィーは、巨匠の映画作りに対するモットーを心得ている模様、「脚本が映画そのものだから、彼の映画にはDVDの特典がありません。彼は最終的に、映画がどう仕上がるかが正確に分かっているんです。ストーリーを変えるために脚本をいじったりもしません。それが彼の映画なんです」と説明した。
3時間もの長尺となる『オッペンハイマー』で削除シーンが存在しないとは、驚異的としか言いようがない。これまでにノーランがメガホンを取った映画18本のうち、脚本を兼任していないのは2002年に公開されたサスペンス映画『インソムニア』のみ。それ以外の17作品では脚本も手がけているノーランは、物語を紡ぎ上げていく段階で頭の中で全てをビジュアル化し、実際の撮影で一切の無駄が出ないよう計算し尽くしているのかもしれない。
2012年にノーランは、米MTV.comのインタビューで監督作に削除シーンがないことについて、「本編に残らないシーンを撮影するには莫大な費用がかかるため、紙面で不要な物を取り除こうとする傾向があります」と語っていた。「不要なシーンの撮影には、多くの時間とエネルギーがかかりますからね。僕の映画には削除シーンがほとんどないから、いつもDVDの視聴者をガッカリさせてしまうんです」とも述べていた。
なお『オッペンハイマー』で、ノーランはセット建設費用を捻出すべく撮影日数を30日も節約。超大作の撮影が50日余りで終了したことも明らかになっている。
映画『オッペンハイマー』は公開中。