【ネタバレ】『オッペンハイマー』演説シーン、オッペンハイマーの「罪悪感とやり直したいという願い」を込めたとノーラン監督が語る

この記事には、『オッペンハイマー』のネタバレが含まれています。

『オッペンハイマー』スピーチ途中の幻覚、オッペンハイマーの「罪悪感」を表現
映画『オッペンハイマー』では劇中後半、ロスアラモス国立研究所でのトリニティ実験を終え、広島と長崎に原子爆弾が投下された。オッペンハイマーは勝利に沸き立つロスアラモスの住民の前に立ち、勝利のスピーチを披露する。「世界はこの日を記憶するでしょう。爆撃による結果を決定づけるのは時期尚早ですが、日本人は好まなかったことは確かだ」と。
聴衆から拍手喝采を受けるオッペンハイマーに異変が起こる。突如どこかから少女の叫び声が発せられ、オッペンハイマーには歓声が聞こえなくなる。「あなた方が成し遂げられたことを誇りに思います。ドイツ人にも使えるよう間に合わせられたら良かった」となんとか言葉を引き出すが、周りでは不気味な音が鳴り続き、突然ピカッと辺りが白い閃光に包まれる。息を荒げるオッペンハイマーは、顔の皮膚がただれた若い女性や会場に降る灰を見るのだった。
ほかのシーンでは、オッペンハイマーが広島や長崎での原爆投下をラジオで知り、その惨状に打ちひしがれる様子も描かれるが、クリストファー・ノーラン監督は本作が「結果についてを描いたもの」と米Vultureで言い表している。「人々が忘れてしまいがちな結果の遅発性についてを描いているのです。この映画は、そのさまざまな表現に富んでいます。直感的なものもあれば、物語的なものもあります」。
オッペンハイマーがスピーチ時に幻覚を見たシーンについては、ノーラン監督が想像したオッペンハイマーの心情が如実に描かれているのだそう。「オッペンハイマーの物語に没入した時、最後に悟った」こととして、ノーラン監督は製作時をこう振り返っている。
「彼は広島や長崎に対して一度も謝罪を申し入れていませんが、爆撃後のあの夜、彼がした行動というのは、罪悪感や、自分の行いをやり直したいという欲望に取り憑かれている人の行動です。物語を伝える際、私はそれを感じました。彼が感じたに違いない心の中の動揺やそれがどう現れたかへの自分の解釈に忠実でありたいと思ったのです。」
ちなみに、幻覚の途中で映し出された皮膚がただれた若い女性を演じたのは、ノーラン監督とプロデューサーを努めたエマ・トーマスの長女であるフローラ・ノーラン。実の娘を起用したことの意味について、ノーランは「もし究極に破壊的な力を創りだしたなら、それは自分自身の近くにいる大切な存在をも破壊してしまう」と語っていた。まさしくオッペンハイマーの心情が痛烈に伝わるシーンとなった。
▼ 『オッペンハイマー』の記事
Source:Vulture