『オッペンハイマー』は実写撮影で核爆発をいかに再現したか? ─ 「CGでは実際の脅威を表現できない」

人類初の核実験である「トリニティ実験」を、クリストファー・ノーランはいかに実写で再現したか──。映画『オッペンハイマー』の米国版メイキング映像では、その一端を窺い見ることができる。
これまでにも数々の作品で実写撮影にこだわってきたノーランは、『オッペンハイマー』でもその方針を踏襲。『ダークナイト ライジング』(2012)の核描写では批判も受けたが、今回は史実に忠実な描写を心がけたという。
「CGで核爆発を描くのは『ダークナイト ライジング』では成立したし、あの映画におけるスタッフの仕事にはとても感謝しています。しかし、トリニティ実験のような実在の出来事で、しかも記録映像が非常に身近な場合、CGでは実際の映像にある脅威を表現できないのです。」
トリニティ実験の再現という重責を担ったのは、特殊効果スーパーバイザーのスコット・フィッシャー。『インターステラー』(2014)『インセプション』(2010)『TENET テネット』(2020)などにも参加しており、ノーランの信頼も厚い人物だ。「巨大で、異なるアングルから何度もやり直せて、しかも的確な爆発にしなければなりませんでした」と語る。
メイキング映像では、爆発の衝撃波を再現する装置や、トリニティ実験の爆発時に巻き起こるキノコ雲の仕組みについても説明されている。「最上部に約240リットルのガソリンと高性能爆薬があり、それが爆発した0.2秒後にアルミニウム粉で閃光を出し、さらに0.5秒後には最下部のモーターを爆発させます。ガソリンと軽油、火薬が巻き上げられてキノコ雲ができるのです」
特殊効果スーパーバイザーのフィッシャーと、視覚効果スーパーバイザーであるアンドリュー・ジャクソンにノーランは大きな称賛を送る。
「ふたりはさまざまな研究と開発をおこない、興味深いアナログのメソッドによる実験を何度も実施してくれました。あらゆる爆発を、あらゆるフレームレートでいかに実写で撮るか。いろんな要素があのシークエンスには詰まっています」
また別の映像で、ノーランはこのようにも言っている。「トリニティ実験の爆発は、美しく魅力的でありつつ、同じくらい恐ろしいものにしたかったのです。完成した映画ではそれが実現できたと思います」
映画『オッペンハイマー』は公開中。
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Source: Variety, Universal Pictures