『エスター ファースト・キル』エスター役、エスター姿でハロウィンパーティーに行ったのに誰にも気づかれなかった【6000文字単独ロングインタビュー】

前代未聞、映画史上初。10歳当時に演じた役を、大人になった役者がCG若返り技術も使わずに再度演じるという離れ技に挑んだ話題作『エスター ファースト・キル』がいよいよ日本公開となった。
前作『エスター』では、裕福な一家にやってきた孤児のエスターが、家族を恐怖に陥れていくサイコスリラーが描かれた。一度見たら忘れられない強烈な娘エスターを演じたイザベル・ファーマンは、あれからすっかり大人になり、現在は26歳(本作撮影時は23歳)。そんな彼女が、なんと遠近法などのトリックを使って、少女エスターをもう一度演じているのだ。
本作の物語は『エスター』の前日譚。アメリカで暮らすオルブライト家に、行方不明になった愛娘エスターが発見されたとの知らせが届く。大喜びで娘と再会した家族だったが、そこで再び身の毛もよだつ恐ろしい真実が明かされることになる……。
THE RIVERでは、奇跡のエスター役再演を果たしたイザベル・ファーマンに単独インタビュー。ブロンドヘアで登場したファーマンは、およそあの恐るべき少女エスターを演じたとは思えないほど明るく朗らかで、まさに別人であった。

驚くべき撮影裏話や、思わず吹き出すビックリ話など、イザベルの楽しいトークを約6000文字の大ボリュームでたっぷりお届け。前作『エスター』のネタバレが含まれているが、新作『エスター ファースト・キル』を観る前でも観た後でもお楽しみいただける、大充実のインタビューとなった。
『エスター ファースト・キル』エスター役イザベル・ファーマン 単独インタビュー
──イザベルさん、本作『エスター ファースト・キル』では本当に10歳の女の子に見えましたよ!だから、こうして顔を合わせてお話しすると、まるで別人のようで頭が混乱します(笑)。本作で14年ぶりにエスター役を再演するというオファーが来た当初はどう思いましたか?
ありがとうございます(笑)。実は、製作のエンターテインメント・ワンで企画が始動する以前、どういう新作にするかを決めるより前に、プロデューサーのデヴィッド・レスリー・ジョンソンにお会いしていたんです。そこで、きちんとした脚本になるのかを知りたかった。「フレンズ」のように、最近はリバイバルものやリブートものはたくさんありますが、『エスター』にもそういう可能性はあるのかが気になっていたんです。
そこで彼としっかり話し合って、そこから企画が始まった形です。なので、私はその始まりの瞬間から、エスター再演の声をかけてもらう以前から携わっていました。それで、本編をご覧いただいたように、良い形での内容がまとまったというわけです(笑)。

──10歳の頃に演じたエスターを大人になってから再演されたわけですが、興味深いことに、デジタル若返りを使用しませんでしたね。デジタルだと自然な仕上がりにならないと考えたのですか?
いくつかの理由があると思うんですけど、最大の理由は、すごくお金がかかるから(笑)。本作だって大きな映画だけど、例えばウィル・スミスが若返りをやった映画『ジェミニマン』(2019)ほど大規模というわけじゃなくて。あの技術はすごくお金がかかるんです。
監督のウィリアム・ブレント・ベルと『ザ・ボーイ -残虐人形遊戯-』(2020)のプレミアでお会いした時、私の姿を見てすごく驚いていたんです。「正直、デジタル若返りがなくてもいけるんじゃない?」ってことで(笑)。私も若干困惑したんですけど、作品の準備を進めながら、本当にいけるかどうかを試していきました。遠近法を使うというアイデアを出した1人が監督で、カメラアングルを工夫すれば、ただデジタルで私を若返らせるのではなく、観客を不安にさせるような映像が撮れると考えていきました。
これがとてもうまくいったと思います!私も初めて完成版を観た時、びっくりしましたよ。毎日撮影に参加していた私ですら、どんな仕上がりになるのか全くわかっていませんでしたから。初めて観た時はプロデューサーのアレックス・メイスに「私、本当に10歳みたい!」って言いました(笑)。製作陣や撮影監督が、きちんとビジョンを持っていたおかげです。

──あなたを子どもに見せるために、遠近法トリックが使われたということですね。共演者たちは厚底靴を履いて、あなたより身長を高く見せていたそうです。まるで手品みたいですね。他にもビックリするような仕掛けはありましたか?
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ビックリするような話、ありますよ。実は私、ずっとスクワットするみたいに膝をかがめて歩いていたんです。共演者たちは厚底靴を履いていたんですけど、それでも若干(身長差に)違和感があったので、私はちょっとスクワットするように歩いたんです。
(身長を低く見せるための)専用の椅子も準備されていたんですけれど、それに座って動くと、きちんと身体が動いているように見えなかったので、結局それはやめになった。そこで、カメラ・オペレーターが座るButt-Dolly (キャスター付きの丸椅子)が使えるぞということになって、それがスタントシーンでは魔法の武器みたいになってくれました。足を地面につけて動かせるからです。
キャスター付きの椅子に座って足で地面を蹴りながらシリアスなシーンを演じていたので、傍から見ると滑稽で、撮影現場では笑いが起きていました。でも完成した本編をみると、ちゃんと怖いシーンになっている。撮影現場はかなり面白いことになっていたんですけどね!(笑)

──なるほど(笑)。しかし、こうしてお声を聞いていると、劇中でのエスターの声は少女っぽく聞こえるように少し高くされていたのかなと思います。本作で、喋り方はどうされたのですか?
実は、1作目と同じ方言コーチについてもらったんです。当時、私は10歳だったなぁ。その方と一緒に、方言やアクセントを固めていきました。エリック・アームストロングという方なんですけど、1作目でエスターの喋り方を固めてくれたのは彼なので、今回も絶対に彼がいいと、こだわりました。
ただ、コロナ禍だったのでご一緒したのはZoom上のみ。毎日1~2時間、全シーンを通しで打ち合わせました。彼は私が子役だった頃から知っているから、もっと高い声や甘ったるい声を出すべきところが全部わかるんです。やっぱり1作目当時は10歳だったから、思春期で自然と声が変わる途中だった。その時の高音域の出し方を取り戻すのは、ちょっと時間がかかりましたね(笑)。
──1作目当時は10歳だったということですが、その年頃はまだ自分のアイデンティティも確立されていなかったことと思います。エスター役というホラーキャラクターのパブリックイメージから脱却しようと苦労されたことは?
いえ、私は幸運だったと思います。1作目は劇場公開でもヒットしたし、それからも自宅で観る方もたくさんいた。アメリカでは、私の周りの人たちはみんな中学や高校時代に友達とお泊まり会をする時に、肝試し感覚で『エスター』を鑑賞するんです。そんな作品にまた数年越しに戻ってきて、新しいことをやれるなんて最高です。
エスター役のイメージに苦しんだとか、そういうことはありませんでしたね。当時は幼かったから、コトの大きさがわかっていなかった。でも、大人になっていく中で、時々「見たことあるけれど、どこで知ったのかわからない」「同じ学校に通っていたっけ?」とうろ覚えで声をかけられることがありました。それでこの新作が公開されて、メイクをして外に出たら、「あなた、エスター役だったのね!やっとわかった!」と言われるようになった(笑)。すごく面白いと思います。
幸運なことに、私は“普通の子ども時代”も過ごすことが出来たし、「エスターの子」として見られることはありませんでした。もちろん仕事周りの方たちからは「エスターの子」として見られるんですけど、昨年『The Novice(原題)』という映画に出演してからは、その両作の出演者として見られるようになって、とても良かったと思います。
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