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【長文インタビュー】『ファントム・スレッド』アルマ役ヴィッキー・クリープス ─ 「アンダーソン監督はオープンで狂ってる」

ファントム・スレッド
© 2017 Phantom Thread, LLC. All Rights Reserved.

ドレスの背景にある、美しい職人の技術

──本作には美しいドレスがたくさん登場しますが、どれが一番のお気に入りでしたか?何着かいただくことはできましたか?

この映画のファッション・ドレスを欲しいとは思いませんでした。私にとってドレスはキャラクターのようなものなので。

お気に入りは、田舎で着たシンプルで緑の紡毛ドレスですね。私のために作られたドレスなんですよ。オートクチュールの中ではレースのかな。このドレスの背景が好きなんですよね。ドレスを作るのにほぼ一週間かかったし、このドレスによってみんな団結したんです。レイノルズが意見を言うと、レースを切っていたコスチューム・デザイナーが切ることを拒むんです。「このレースを切りません。私は2つの世界大戦を生き延びたんです!破壊したくありません」ってね。そして私にもどう切るべきか意見を求められるんです。なので、ほぼ5人が一週間の間、このドレスがどうなるかについて話し合ったんです。それが好きでしたね。

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── ハイファッションについて描いた本作に出演してから、自身の服装に変化はありましたか?

いいえ、もはや以前の自分と近い状態にいる気がしますね。昔から、ファッションとは誰かが勝手にこういうものだと定義付け、相手に信じさせるものではないと思っていました。なので本作に出演して、私はより強くなれた気がしますね。

今までも「あなたは、これを着ないといけない。あれは着ちゃダメ。ちなみに、これは今のトレンドだよ」といったことに従う人ではなくて、例えばいつも祖母のくれた服を着るのが好きなタイプでした。ちなみに、そういった服は今も好きですよ。新しいものも良いですね。

私はこの映画に参加して、背後の美しい職人の技術を鑑賞できたと共に、誰かが本当に時間をかけて作り上げてくれたものに対して感謝することができたんです。それは、ファッションからあなたはこれを着るべきと言われることよりも、はるかに興味深いことでしたね。

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「アンダーソン監督はオープンで狂ってる」

── 本作を作り上げたアンダーソン監督について、今までタッグを組んだ他の監督と比べてどう思いますか?何が彼を特別にしていると思いますか?

彼は、とてもオープンであると共に狂っているんですよ。イカれたアイデアを取り入れたり、おかしなことをあなたにお願いする準備が整っているんです。

あと、私が自分なりに考えたキャラクターの解釈や行動について、彼が私に聞くオープンさを持っていたのは素敵でしたね。多くの監督は自分の権力や原動力に縛られているんですよ。「私は監督で、私があなたに指示をする」といった感じに。でもそういう人はつまらないですね。

アンダーソン監督は、他人を見下さないで「まあ、僕はどこに行こうとしているか分からないから、一緒に見つけ出そう。あなたは私のアルマだからアルマが思うことをやって」と言ってくれたんです。それは本当に特別でしたね。

── そんなアンダーソン監督のもとで仕事をしたことで、何か得たものはありましたか?

自信をもらいました。以前から考えていたことは正しかった、という自信を私に与えてくれましたね。

今までも、「んー、本当は私のキャラクターはこうしないな」と思うことが多々あったんです。それはわざと正しいと思いたかったからとか、自分が演じるキャラクターの作者になりたかったからではなくて、ただ時々、そういった確信があったんです。でも、私のそういった考えは許されませんでした。監督は「いや、そこに座らないといけない」、「脚本にはこう書いてあるんだからそうあるべきだ」って感じでしたし。特にテレビに出演した時はそうでしたね。

でも、そんな風に自分を押し殺していると、どんどん才能が奪い取られてしまうんですよ。首を切られるみたいに自分の感情や直感に逆らうので、下手な俳優になっていくんです。感情とか直感は、演技をする上での全てなのにね。なので、ポールはそういう意味ではとても賢かったですね。そう思います。

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Writer

Marika Hiraoka
Marika Hiraoka

THE RIVER編集部。アメリカのあちこちに住んでいました。

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