なぜマドンナが?映画『ピクセル』宇宙人からの不気味なビデオメッセージ、その元ネタとは

映画『ピクセル』(2015)は、地球を襲うレトロゲームのキャラクターたちがポップでカラフルなように、ひたすら明るいコメディ・トーンの作品だ。難しい言葉がわからないおバカなアメリカ大統領のように、頭を空っぽにして「てやんわやん」なピコピコ狂想曲を愉しめばいい。
ただしひとつだけ、妙にゾっとする不気味な描写がある。地球に攻撃を仕掛けるヴォルーラ星人から送られてくるビデオ・メッセージだ。
この映画では、1982年当時に流行していたゲームやTV番組などのポップ・カルチャーを収めた映像を、友好の証として地球外生命体に贈る。受け取ったヴォルーラ星人はこれを「果たし状」と勘違いし、映像に収められていたレトロゲームに登場するキャラクターやオブジェクトの姿を象って攻撃を仕掛けてくる。
ヴォルーラ星人は、当時流行していたテレビの映像を用いて地球側にメッセージを複数回発信する。80年代のテレビに夢中になったアメリカ人にとって懐かしの人物が、宇宙人に操られて不敵な言葉を語る様子は、さぞ不気味に映ったはずだ。おそらく若き日のマドンナくらいしかピンとこなかった我々日本人でもゾッとするのだから、その衝撃は容易に想像できよう。
では、ヴォルーラ星人から送られてきたビデオ・メッセージに登場したあの謎の古い映像はいったい何だったのか。この記事ではその全ての元ネタを解き明かそう。
1回目:ロナルド・レーガン、タミー・フェイ・メスナー、マドンナ
「地球の住人たちよ、我々はヴォルーラ星人だ。」
ヴォルーラ星人からの一度目のビデオ・メッセージは、TVドラマの放送電波をジャックして送られてきた。ノイズと共に映し出された映像は、当時のアメリカ大統領ロナルド・レーガンの姿。映像の冒頭では、レーガンの頭部がエイリアンに切り替わっている。
続いて現れるパーマ姿の情緒的な女性は、歌手でタレントのタミー・フェイ・メスナー。その後に登場するのが80年代のマドンナだ。このインタビューのオリジナル映像は1984年9月に行われたMTVによるもの。劇中ではNASAが1982年にビデオを発信しているはずなので、時系列が矛盾する。
2回目:リカルド・モンタルバン、エルヴェ・ヴィルシェーズ
センチピード戦の勝利後の打ち上げ会場となったバーのテレビに現れたのは、メキシコ出身の俳優リカルド・モンタルバン。1947年の『闘牛の女王』でハリウッド・デビューを果たし、70年代から80年代にかけてはアメリカのTVドラマで活躍。『スタートレック』シリーズではカーン役として知られる。
センチピード戦勝利の証として、ゲーム『ダックハント』に登場する犬のキャラクターを地球に贈った。
続いて登場した小人症の男性はエルヴェ・ヴィルシェーズ。フランスの俳優で、オリヴァー・ストーンの長編デビュー作『邪悪の女王』(1974)や『007 黄金銃を持つ男』(1974)などに出演。1993年に50歳で拳銃自殺により亡くなった。
リカルドとエルヴェのふたりは、1977年から1983年にかけてアメリカで放送されたTVドラマ『ファンタジー・アイランド』のコンビとして知られる。
3回目:ホール&オーツ
パックマン戦の祝賀会場で流れたビデオ・メッセージに登場していた男性二人は、アメリカの人気デュオ、ダリル・ホール&ジョン・オーツ。『ピクセル』公開の2015年10月には来日公演も果たしている。
「これから12時間のうちに地球の破壊を開始する。その後に地球のためにこの歌を歌う」として流れた楽曲は、1972年の楽曲『シーズ・ゴーン(追憶のメロディ)』だ。1976年に再販売され、全米7位のヒット曲となった。
このビデオ・メッセージのホール&オーツは、本人がモーション・キャプチャーで新たに撮影し、CGで80年代当時の姿に加工した映像である。
「昔のCMを使ったメッセージ」とは
『ピクセル』ではもう一本、ヴォルーラ星人から送られたビデオ・メッセージがあるが、存在が語れるのみで映像としては登場しない。
これは、大統領がケーキ作りを楽しんでいるところに現れる女性職員による「昔のCMを使って異星人のメッセージが」という報告で確認できる。ここで女性は、”Where’s the Beef? Lady”(ビーフはどこ?のおばあさん)のCMが使われていたこと、メッセージの前に「ビーフはどこ?」と尋ねていたことを明かしている。
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