殺人鬼『くまのプーさん』ホラー映画、香港上映が緊急中止 ─ 政治的な「何か」が介入した可能性

あの「くまのプーさん」が殺人鬼として登場するインディーホラー映画『Winnie the Pooh: Blood and Honey(原題)』が、香港での上映を急きょ中止することがわかった。英Guardiansが伝えた。
本作は、A・A・ミルンの児童小説「クマのプーさん」の著作権が2022年に失効したことをいいことに製作されたインディーホラー映画。ディズニーアニメの可愛らしいビジュアルをベースに、プーさんやピグレットが連続殺人鬼として登場するという面白おかしさで、ビジュアルや予告編の公開時に大きな話題となっていた。
情報によると本作は香港にて『小熊維尼:血與蜜』のタイトルで2023年3月23日より上映される予定になっていたが、その2日前の21日夕方になって中止された。明確な理由は伏せられている。
考えらるのが「くまのプーさん」と中国の奇妙な関係性だ。2013年にバラク・オバマ米大統領(当時)が訪中した際、習近平国家主席と並んで歩く2人の姿がプーさんとティガーに似ているとネットで揶揄されたことがあった。以来、ネットで習近平氏はプーさんになぞらえられることが増え、習近平氏が日本の安倍晋三首相(当時)と握手を交わした写真は、プーさんとイーヨーのイラストにパロディされた。中国当局は、「習近平氏=プーさん」とするネットミームを侮辱的なものと捉えている。
伴って中国当局はプーさん関連の検閲に厳しくなり、同キャラクターの商品は流通できないこととなっている。2018年のディズニー映画『プーと大人になった僕』も検閲によって公開が禁じられた。
『Winnie the Pooh: Blood and Honey』は香港で一度は試写も行って検閲も通過していたが、急遽覆ることとなったようだ。リース・ウォーターフィールド監督は米Varietyに、「ここ数日で突然“何か”が起こり、複数の映画館が同時に上映を取りやめる事態となった。これは映画の品質とは関係ない」と報告しており、政治的な要因の可能性が示唆されている。
なお『Winnie the Pooh: Blood and Honey』は、米Rotten Tomatoesでは批評家スコア4%を叩き出し、「史上最低評価の映画100」にも加わった作品。馬鹿馬鹿しい映画かもしれないが、それでも中国には通用しないのだ。