Menu
(0)

Search

『プレデター:ザ・プレイ』狩るか狩られるか?観たかった「プレデター」が詰まった戦慄サバイバル ─ シリーズ復習で備えよう

プレデター:ザ・プレイ
(C)2022 20th Century Studios

映画「プレデター」シリーズといえば、これまでに映画全6作が公開されている。基本的にはそれぞれ別の時代、別の舞台、そして別のプレデターが描かれているので、どの作品から摘んでも楽しめるだろう。作品を追うごとに、謎多きプレデターの習性が徐々に判明するところも魅力だ。

そのシリーズ最新作『プレデター:ザ・プレイ』が、2022年8月5日よりディズニープラス「スター」で独占配信開始となる。すでに海外レビューでは「1作目以来の最高傑作」「『プレデター』映画に求める、まさにそのもの」との絶賛が届けられる本作。300年前のアメリカを舞台に、狩猟生活をおくる人類最強の民族・コマンチ族のもとに、宇宙最強のハンター、プレデターが襲来するというプロットだ。

本作はサバイバル・スリラーの作風で、とにかくプレデターとの直接対決がストイックに描かれる。人間側はまだ原始的な生活を営んでいるので、武器といえば手製の弓矢や斧。一方、最強のオーバーテクノロジーを全身に搭載したプレデターは、お馴染みの光学迷彩で透明になり、返り血をビシャビシャに浴びながら戦慄の無双劇を繰り広げる。どう考えても勝ち目はない。しかし主人公は、これまでの「プレデター」映画の英雄たちがそうしたように、決死の戦闘の中でプレデターの“攻略法”を見出していく。それでも、人間とプレデターとの間には決定的な“差”があった。人間は“生きるために狩る”が、プレデターは“狩るために生きる”のだ……。

「プレデター」ファンのツボをプラズマキャノンで射抜く本作。シリーズにそこまで馴染みがないという方でも、この磨き抜かれた究極のサバイバルアクションは間違いなく必見だ。本記事では、いますぐに『プレデター:ザ・プレイ』を最大限楽しんでいただくべく、過去作におけるプレデターとの戦いを振り返る。記事を読めば、そのまま狩猟の世界へ飛び込めるように仕上げた。

「プレデター」映画シリーズの基本ポイント

「プレデター」映画のポイントは、作品ごとに毛色が違うというところ。例えば1987年の第1作はベトナム戦争に影響を受けた戦争映画らしさがあるが、1990年の『プレデター2』ではいきなり舞台を近未来ロサンゼルスに変えてのポリスアクションが描かれる。

もっと重要なのは、作風がバラエティに富む一方で、その基本的な構造や「お決まり」が一貫して共通しているということだ。たいていの場合、プレデターは映画前半で姿を潜めている。ここはいわば“未知との遭遇”パートで、人間側はこの世のものとは思えない惨殺死体(皮を剥がれて宙吊りにされていることがほとんど)を発見し、恐れ慄く。そこにサーモグラフィーのようなヒートビジョンからプレデターが人間を観察しているカットが挿入され、徐々にその脅威が「カカカカカ」という喉音と共に近づいていくる。やがてプレデターの“狩り”が本格化されると、人間たちには成す術なし。一人、また一人と仕留められていく中、勇敢な者は打倒プレデターの“攻略法”に気付き、死闘を繰り広げることとなる。多くの作品で、プレデターとの一騎討ちが描かれるところも定番だ。

戦争映画風、熱帯ジャングル未知との遭遇『プレデター』(1987)

『プレデター』
© 2022 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
ディズニープラス「スター」で配信中

記念すべき第一作。熱帯ジャングルを舞台に、マッチョな特殊部隊がたった一体のプレデターに狩られまくる、脂汗ダラダラのサバイバル劇が描かれた。謎に満ちた恐怖のプレデターは、光学迷彩で姿を透明にして森を駆けたり、プラズマキャノンやリスト・ブレイドといった未知の武器で軍人たちを次々と襲った。しかし、戦う意志のない女性には手を出さず見逃す、武器を持たない相手とはステゴロで戦うなど、意外と紳士な一面(?)を見せる。ただの破壊的な怪物ではなく、彼らには彼らなりの道理があるらしいということで、プレデターは映画ファンの間で一躍人気キャラクターとなった。

プレデターは蛍光グリーンの血を流すと知った主人公ダッチ(アーノルド・シュワルツェネガー)が発した「血が流れるなら、殺せる」というセリフは有名。そう、プレデターは不死身ではなく、倒せる相手なのだ。奴には痛覚もあり、携帯する救急キットで自己治療する際には、痛みのあまり悶絶の叫び声をあげることもある。やがてダッチは、全身に泥を塗りたくって身体の表面温度を下げれば、相手のヒートビジョンに検知されないことに気づく。

ラストはダッチVSプレデターのガチンコタイマン対決。追い詰められたダッチの機転によって瀕死になったプレデターは自爆して散った。残虐で凶暴であることは間違いないが、正々堂々としたサムライのような精神性に、多くのファンは敵ながらアッパレを贈った。

90年代近未来のLAポリスアクション『プレデター2』(1990)

『プレデター2』
© 2022 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
ディズニープラス「スター」で配信中

ベトナム戦争映画風だった1作目から作風をガラリと変えて、この2作目は都会が舞台のポリスアクションものに。話が直接繋がっているわけでも、前作キャラクターが再登場するわけでもないことから、「プレデター」シリーズの制約のなさを見てとることができる。

もっとも、前作のジャングルでの戦いは、この世界では恐るべき事例として記憶されていることが語られる。どうやらプレデターは熱気におびき寄せられるらしく、今度は気温43℃という異常温暖化のロサンゼルスに襲来。麻薬ギャングとロス市警の戦いに乱入し、ギャングたちを殲滅した。

前作でダッチが編み出した泥塗り作戦に倣って、今回の人間側は熱感知できない防護服を着用して戦いに挑む。しかし、ヒートビジョンはプレデターにとって数あるモードのうちの一つに過ぎず、あっさり視認されてしまうという大失態。投げればブーメランのように手元に戻ってくるレイザーディスクや、捕らえた相手をワイヤーで切り刻むネットランチャーなど、新登場の殺戮兵器で大暴れするプレデター。今作でも、首に手をかけた女性が妊婦であると気付くと解放するなど、狩りにストイックな姿を披露している。

『プレデター2』は、ラストシーンが重要なので押さえておきたい。主人公ハリガンは迷い込んだプレデターの宇宙船でとんでもないものを発見する。なんとそこには、これまでにプレデターが狩ったと見られる人間や古代生物に加え、映画「エイリアン」シリーズのエイリアンの頭部骨格が戦利品として飾られていたのだ。やがて熾烈な一騎討ちの末にプレデターを倒したハリガンのもとに、長老のような個体(エルダー・プレデター)たちが現れる。ついに絶体絶命かと思いきや、ハリガンは彼らから立派な戦士だと認められたらしく、1715年製の古い銃を授けられ、「よくやった」と解放される。実力を認定した相手には敬意を払うという、戦闘種族プレデターの本質が象徴的に描かれた瞬間だ。

敵の敵は味方!SF大作『エイリアン vs プレデター』(2004)

『エイリアン vs プレデター』
© 2022 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
ディズニープラス「スター」で配信中

日本公開時、「どちらが勝っても…人類に未来はない」のキャッチフレーズも話題となった、プレデターとエイリアンが夢の(悪夢の?)対決を繰り広げる一作。本作では『エイリアン』の世界観に倣い、作風はSFアクションだ。『プレデター2』のラストで、プレデターの宇宙船にエイリアンの骨が飾られていたことに着想を得て製作された。

舞台は謎の地下遺跡。そこはプレデターが成人の儀式のためにエイリアンと戦うための場所だった。映画の序盤でプレデターは、挨拶代わりと言わんばかりに人間の捜索隊を殲滅。そこにエイリアンが出現すると、人間そっちのけでエイリアンに突進、豪快なジャイアントスイングをお見舞いする。病を患う男性には手を出さないという割り切った性格は本作にも登場(結局、病の男性が不意打ちを仕掛けたことにブチ切れて返り討ちにしているのだが)。

本作では、プレデターの興味深い歴史が明らかになる。なんとプレデターは数千年前より度々地球を訪れては、古代の人類に建造技術を教え、神と崇められていたらしい。そして彼らは、究極の獲物であるエイリアンを繁殖させ、自ら戦うために、人間たちに生贄を求めていたというのだ。彼らは、エイリアンを倒すことを成人の儀式とし、その証としてエイリアンの酸性の血で体に印を刻むという。一方、プレデターが敗れたときは文明ごと消滅させていたらしい。つまり人間としては、プレデターに勝ってもらわないとマズい。そこで登場するのが「敵の敵は味方」理論。人間はプレデター側につき、エイリアンと戦わせた。

本作最大の特徴は、人間に協力するプレデターが登場することだ。劇中でスカー・プレデターと呼ばれる個体は、触れたものを溶かしてしまうエイリアンの強力な「酸」対策として、エイリアンの死体で武器や防具を作って主人公レックスに手渡し、行動を共にするようになる。ラストではレックスとプレデターが共に併走して危機を逃れると、戦士と認められたレックスはプレデターと同じ印を顔に刻まれることとなる。

しかし、このラストはさらなる地獄の始まりに過ぎなかった。なんと死んだプレデターの体内にエイリアンの卵が産み付けられており、これがきっかけで次作の「プレデリアン」が登場してしまうことになるのだ。

最凶最悪の「プレデリアン」との死闘『AVP2 エイリアンズ VS プレデター』(2007)

『AVP2 エイリアンズ VS プレデター』
© 2022 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
ディズニープラス「スター」で配信中

前作で誕生してしまった、エイリアンとプレデターのハイブリッドという最悪の個体「プレデリアン」との戦いが描かれた壮絶な一作。物語は前作と地続きだが、ホラー要素がグッと高められた続編となった。

初めてプレデターの母星らしき惑星が描かれ、プレデターがマスクや武器を選んで“出陣”する姿が描かれる。この個体は「ザ・クリーナー」と呼ばれ、特殊な薬液でエイリアンやプレデターの痕跡を溶かして回る掃除屋。ハンターではないので、これまでのプレデターとは行動倫理が異なり、武器を持たない人間でも容赦無く襲った。

しかし、もっと恐ろしいのがプレデリアン。エイリアンの頭部や尻尾に、プレデターのドレッドヘアーを併せ持つこのハイブリッド種は自身の繁殖を主目的としており、なんと人間の妊婦に自分の卵を注入して産ませるという最悪なグロテスクさ。わらわら湧いて出るエイリアン“ズ”相手に激闘を繰り広げると、クライマックスでは夜の雨が降り頻る中でのプレデリアンとの一騎討ち。覚悟を決めたプレデターがマスクを外して戦いに挑む姿は、もはやヒーロー然としており印象深い。

デスゲーム要素も?再びジャングルに戻った『プレデターズ』(2010)

『プレデターズ』
© 2022 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
ディズニープラス「スター」で配信中

シリーズ1作目ぶりにジャングルに舞台を戻したサバイバルアクション。人間界から選別されたよりすぐりの殺し屋たちが突然謎のジャングルに放り込まれ、事態もよくわからないままに過酷なサバイバルを強いられる。実はこのジャングルは異星で、プレデターの猟場だったのだ。

脱出不可能な環境で、見ず知らずの者たちと探り合い、協力と裏切りが交錯するという構図は、2000年代より流行したシチュエーションスリラーやデスゲーム系作品に通ずるところも。また、フィールドにパラシュートで投下されるという導入は、『フォートナイト』『PUBG』などに代表される最近のバトロワゲームっぽさもある。

お気に入りのシーンに挙げられることが多いのが、日本刀を握ったヤクザとプレデターの、草原での堂々たる決闘シーン。ここでもプレデターは、相手の武器が刀一本と知ると、自らもリスト・ブレイドのみを用いて正々堂々の勝負に出た。これまでその精神性がサムライと比較されることが多かったプレデターのチャンバラ対決が、初めてサムライ映画のトーンで描かれた渋い名場面だ。

この映画に登場するプレデターは「バーサーカー族」と呼ばれる種族で、別種族のプレデターを生け捕りにして囮に使うという習性も見られた。過去作へのオマージュが色濃い作品で、1作目でダッチが編み出した泥塗り戦法や、『エイリアン vs プレデター』で展開された「敵の敵は味方」理論が踏襲された。

舞台は現代、ならず者たちが集結して戦う『ザ・プレデター』(2018)

『ザ・プレデター』
© 2022 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.
ディズニープラス「スター」で配信中

2018年に公開された直近作。舞台は現在のアメリカで、シリーズで最も現実的な設定となっている。劇中では、プレデターが1987年や1997年にも地球に襲来したと語られるが、これはもちろん「プレデター」『プレデター2』の出来事だ。

これまでもプレデターが人間側について共闘することもあったが、今作では人類を守るために到来した「フィジティブ・プレデター」が登場。これを裏切り者とみなして狩りに来た、一般個体の倍の身長はあろうかという最強巨体「アルティメット・プレデター」が出現。プレデター同士の死闘が繰り広げられると、殺した相手の頭部を脊髄ごと引っこ抜くという強烈なシーンも描かれた。

本作の特徴は、『特攻野郎Aチーム』や『スーサイド・スクワッド』のように、礼儀も常識もない寄せ集めアウトロー共が生き残るべく協力するという展開。さらに、プレデターの言葉がテロップで表示されたり、通訳機を通じてメッセージを送ってきたりという描写も新鮮だった。ラストシーンの評価が賛否分かれたことも記憶に新しい。

これを待ってた!原点回帰の『プレデター:ザ・プレイ』はサバイバルスリラーだ

プレデター:ザ・プレイ
(C)2022 20th Century Studios

こうして過去シリーズを振り返ってみると、プレデターの映画は時系列や舞台、作風に決まったルールがないことがよくわかるだろう。最新作『プレデター:ザ・プレイ』の舞台は300年前のアメリカで、ネイティブ・アメリカン最強の民族・コマンチ族がプレデターと遭遇し、狩るか狩られるかの死闘が描かれるという内容。監督のダン・トラクテンバーグは米メディアで「これは前日譚映画というわけではないんです。“プレデターのオリジンが明かされる”みたいな内容ではない」と説明するが、プレデターの映画は(『エイリアン vs』シリーズを除けば)必ずしも物語が直接繋がっているわけではない。つまり、いきなり『プレデター:ザ・プレイ』の鑑賞から始めても問題なく楽しめるということである。

トラウテンバーグ監督によれば、本作のプレデターはシリーズで最も小柄でスリムだというが、それは本作の個体が特に機敏でリアリティに溢れているという意味である。かつてのプレデターは撮影時に「着ぐるみ」だったため、どうしても頭でっかちなシルエットになっていた。対して、最新の環境で製作された本作のプレデターはもっと機能的で、解剖学的にも正しいシルエットになっていると監督は説明している。本作に登場するプレデターを見れば、これまでにないほど写実的なクリーチャーらしさを感じられるだろう。

プレデター:ザ・プレイ
(C)2022 20th Century Studios

本作に登場するプレデターは、その一体のみ。そのため、全編を通じてプレデターとの戦いをシリーズ史上最もストイックに描いている印象だ。ひたすらに展開されるのは、ジワリジワリと忍び寄るプレデターの恐怖、返り血を浴びて突進してくるプレデターの恐怖、人間が束になっても絶対に敵わないプレデターの恐怖……、そして、そんなプレデターを相手に、勝利して生き延びることができるのかという絶望的なまでの緊張。まさにプレデター映画に求めていた「狩るか、狩られるか」の戦いが、臨場感たっぷりに描かれる。

これまでの作品と一味違うのは、人間側も「最強」であるということだ。特に主人公の少女ナルの戦闘スキルやフィジカルのセンスがすこぶる高い。確かにコマンチ族は原始的な装備しか持たないが、彼女たちは一族の誇りをかけて、明らかに強敵のプレデターに果敢に挑んでいく。最強VS最強の、究極ガチンコバトルだ。本作の人間は、どのようにプレデター攻略に挑むのか。

シリーズお馴染みのバイオレンス描写、ゴア描写も、全くもって手加減なし。むしろシリーズ最狂にグロテスクだ。本作はディズニープラス「スター」配信作品だが、思わず驚いてしまうほどの残虐なシーンも。しかも、過去作へのオマージュや小ネタも見られるので、ファンはニヤリとさせられるはずだ。「プレデター」映画に求める全てがあるというレビューにも頷ける。

監督はこの作品を、劇場向け映画として製作していたという。ディズニープラス「スター」で配信されることについて監督は、「自宅のリビングで、いきなり大スケールの劇場体験ができるわけです」とコメント。さあ、あなたはディズニープラス「スター」で、狩るか狩られるかの死闘に放り込まれることになる。プレデターファンはもちろん、アクション映画やスリラー映画ファンもきっと満足できるだろう。

プレデター:ザ・プレイ
(C)2022 20th Century Studios

『プレデター:ザ・プレイ』は、ディズニープラス「スター」で2022年8月5日より独占配信。「プレデター」シリーズ全作も配信中だ。

参考:SlashFilm, AVP Galaxy

Writer

アバター画像
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

Ranking

Daily

Weekly

Monthly