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『スパイダーマン』サム・ライミ監督、故スタン・リーとの思い出を語る ― 90年代の『マイティ・ソー』映画化企画、カメオ出演秘話も

『スパイダーマン2』ピーター・パーカー(トビー・マグワイア)
© Sony Pictures 写真:ゼータイメージ

いまやハリウッドにおいてヒーロー映画はひとつのジャンルとして広く受け入れられているが、その歴史は決して平坦なものではなかった。トビー・マグワイア主演の『スパイダーマン』3部作(2002-2007)を手がけたサム・ライミ監督は、現在につながるヒーロー映画の黎明期を支えた一人だ。

2018年11月12日、マーベル・メディア名誉会長でありコミック界の重鎮であるスタン・リー氏がこの世を去った。米The Hollywood Reporterの取材にて、サム監督はスタン氏との思い出を振り返っている。

©THE RIVER

実現しなかった映画版『マイティ・ソー』

『スパイダーマン』3部作を監督する以前、サム監督はキャリアの初期段階でマーベル・コミックの映画化企画に着手していたことを明らかにしている。リーアム・ニーソンを主演に迎え、自らが原案を担当したヒーロー映画『ダークマン』(1990)を作り終えた後、監督はスタン氏と初めて面会したというのだ。

「『ダークマン』を作った後、スタン・リーに呼び出されて“やあ、どうも。君の映画が好きなんですよ”と言われました。ランチに連れて行ってもらって、一緒に仕事をしたいと言われたんです。僕はソーの映画を作りたいと話しましたね。それで、一緒にトリートメント(物語の要約)を書いて(20世紀)フォックスに提出しました。でも“絶対にダメだ、コミックは良い映画にならない”と言われてしまって。1991年の話ですよ。」

まだコミックの映画化がまったくメジャーなものではなかった1991年、スタン氏とサム監督は、コミック「ソー」の映画化を企画していたのだ。しかし残念ながら二人が執筆した物語はお蔵入りになってしまい、その後、コミック「ソー」は2011年に『マイティ・ソー』として映画化されている。それにしても『死霊のはらわた』シリーズ2作品や『ダークマン』を世に放ったあとのサム監督が手がける映画版「ソー」、実現していればどんな作品になったことか……。

『スパイダーマン』スタン・リーのカメオ出演に消極的だった

その後、サム監督は『スパイダーマン』3部作で、自身のキャリアとしても新境地へと踏み出している。当時を振り返って、監督はスタン氏のカメオ出演に消極的だったことを語っている。

「1999年に『スパイダーマン』の仕事をもらいました。そうしたら、(プロデューサーの)アヴィ・アラッドに“この映画にスタンを出してほしい”と言われたんです。“ノー。スタンのことは知ってますけど、彼は演技はできません”と答えました。するとアヴィは、“この映画に彼を出したいんだ。『X-メン』(2000)にも出したし、今回もやる”と言って。
そこで僕は、自分がイングランドの二流演出家で、『マクベス』をやっているんだと想像しました。そして“脚本家を芝居に出せ”と言われる。不合理ですけど、“わかりました、シェイクスピアを芝居に出したいのなら出しましょう”と。」

ただしサム監督は、結果として『スパイダーマン』(2002)にスタン氏が出演したことに満足しているようだ。なにせ監督は、スタン氏の出演シーンについて「今ではあの映画で気に入っているところのひとつですよ」と語っているのである。今でこそスタン氏のカメオ出演はお約束となったが、当時、まだスタン氏の出演作品は片手で数えられるほどしかなかった。あらゆる歴史には、その始まりを支えた人々がいるというわけだ。

スタン氏の訃報を受けて、サム監督は「スタンの作品には彼自身の人間としての強さがある。その力は時間とともに強くなっていきますよ」と述べた。「彼の遺したものが消えることはないでしょう。こういうことを人々は多くの人に対して言いますが、彼の場合こそ、それが真実だと思います。」

Source: THR

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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