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【インタビュー】『ロケットマン』デクスター・フレッチャー監督は、エルトン・ジョンの物語をなぜミュージカルに仕上げたのか

デクスター・フレッチャー
© THE RIVER

誰もが一度は耳にした数々の名曲で知られる伝説的ミュージシャン、エルトン・ジョンの激動の半生をタロン・エジャトン主演で映画化した伝記ミュージカルロケットマンが、2019年8月23日より公開となった。監督には、『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)最終監督として映画を仕上げたデクスター・フレッチャーだ。

なぜ『ロケットマン』はミュージカルの手法を取ったのか。「生ける伝説」として存命のエルトン・ジョンは、製作にどのように影響し、完成した映画を観てどのような反応を見せたのか。『ボヘミアン・ラプソディ』との違いは。来日したデクスター監督に、THE RIVERが詳しく聞いた。

デクスター・フレッチャー
© THE RIVER

『ロケットマン』がミュージカルのわけ

── 今日は雨が降ったかと思えば、急に晴れ間も広がってきましたね。まるでエルトン・ジョンの物語みたいです。

アハハハ(笑)、そうですね。良い時もあれば、悪い時もある。まさにそれこそ、『ロケットマン』が描いているものですよ。エルトン・ジョンという偉大な人間の、様々な感情をとらえています。

── そもそも、『ロケットマン』をなぜミュージカル・ファンタジーにしようと思ったのですか?

エルトン・ジョンの映画を作るとなれば、つまり素晴らしい楽曲の数々を扱えるということです。名曲の数々を、「知ってる歌」で終わらせるのでなく、ストーリーを語らせて、その瞬間にエルトンが抱いていた感情と結びつけるものにしたかった。歌詞も優れていますし、楽曲も素晴らしい。だから、ストーリーを語る上での、優れたツールになるんです。

音楽と映像の組み合わせは、映画における昔ながらの手法です。かつての映画は、無声映像に合わせてピアノを演奏するものでした。(映像と音楽の融合である)ミュージカルは、映画のオリジンに由来する、面白い手法だと思いました。

── もしもこの映画がミュージカルじゃなかったら、上手くいかなかったと思いますか?

いやいや、もしもミュージカルじゃなくても上手くいっていたように願いますよ。音楽もドラマも、等しく説得力がありますから。

──”伝記ファンタジー・ミュージカル”は、少なくとも監督にとっては初の試みですよね。挑戦的だったことはありますか?

もちろん、どんな映画を作る時でも挑戦的です。私は伝記もミュージカルも経験があるから、その組み合わせという感じ。ただ、何をやるにしてもオリジナルでユニークでなくてはいけない。今回の切り口もそうです。でも、完全にオリジナルなものを作るというのは難しいんですよね。私はアイデアを得るために、色々な映画を観て研究するんですけど、『ロケットマン』は実にユニークな切り口で、唯一無二の作品になっていると思います。

ロケットマン
©2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

── 『ロケットマン』の製作は、最終監督を手掛けた『ボヘミアン・ラプソディ』の前から進められていたと聞きます。『ボヘミアン・ラプソディ』の経験は今作で役に立ちましたか?

そうですね。2作には似ている部分もありましたから。でも、『ロケットマン』は『ボヘミアン・ラプソディ』とは全く違う作品にしようと決めていました。似たような映画を2度も観せるわけにはいきませんから。まぁ、観たい人もいるから、世の中にはフランチャイズ映画が多いんでしょうけどね。

それで、今作はミュージカルです。実際、私はこの映画を伝記映画であるとは言いません。『ボヘミアン・ラプソディ』は三人称視点からの俯瞰的な映画でしたよね。でも『ロケットマン』はエルトン・ジョン個人の、非常にパーソナルな経験を描くものです。エルトンを俯瞰するのでなく、彼の精神の中に入っていく。

── とても壮大な映画ですよね。エルトンの苦楽や、音楽的キャリア、それから今仰ったような精神的な面も描かれる。最も注力した部分はどこですか?

精神的な面ですかね。彼がどんな精神状態だったのか、それこそが、この映画で一番大事な部分ですから。より良い人間になりたい。かつての自分がそうだったように、と。この部分に最も集中して、それ以外はその周りにやってきた感じです。

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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