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【ネタバレありレビュー】『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』でルーク・スカイウォーカーの伝説は初めて完成する

2016年12月16日、ついに『スター・ウォーズ』シリーズ第8作『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』が公開されました。本作は『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』のオープニング・クロールで語られた、反乱軍によるデス・スター設計図強奪作戦にフォーカスしたストーリーになっています。私もさっそく16日早朝の最速上映で3D字幕版を鑑賞し、そのあと『新たなる希望』を観て、再び2D吹替版を鑑賞しました。

結論から先に言うと、『ローグ・ワン』は『新たなる希望』の完璧な前日譚であり、ルーク・スカイウォーカーの伝説を名もなき戦士たちの目線で再定義した見逃し厳禁の傑作です。では、どうして『ローグ・ワン』がシリーズに欠かせない作品となりえたのか、その素晴らしさを一つずつ細かく見ていくことにしましょう。

【注意】

この記事には、映画『ローグ・ワン / スター・ウォーズ・ストーリー』のネタバレが含まれています。

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戦争映画のフレームで捉えなおした新感覚の『スター・ウォーズ』

『ローグ・ワン』は、『スター・ウォーズ』シリーズとしては全く新しい質感を持つ作品になっています。

まず本作にはジェダイが登場せず、したがってフォースやライトセイバーを使ったバトルも描かれません。『新たなる希望』の直前という設定ゆえに当然のことではあるのですが、『スター・ウォーズ』=ライトセーバー、というイメージは一般的に定着しているだけに非常に新鮮でした。

そして何よりも、第二次世界大戦を題材にした戦争映画のような演出と、スペースオペラの要素が混ざり合って、独特の空気感が作り出されています。たとえば予告編でも話題になったクライマックスのスカリフ戦なら、『スター・ウォーズ』と美しい南国ビーチという組み合わせがまず天才的発明でしょう。ここで描かれる白兵戦は『プライベート・ライアン』を思わせる凄惨な戦いでしたし、デス・スターの攻撃後に浮かび上がるキノコ雲は原爆のイメージと直結します。前半に登場するジェダは砂漠にぽつんと浮かぶ埃っぽい古代都市の街並みで、帝国軍と戦うソウの私兵の動きはテロリストそのものです。こちらはとても現代的な戦争のモチーフに近く、ニュースで見るイラク戦争やシリア内戦の風景と重なりました。

シリーズ屈指、本当に恐ろしい帝国軍

『スター・ウォーズ』の“ウォーズ”の部分をしっかり描写した、本作に登場する帝国軍はシリーズ屈指の恐ろしさです。

先述のデス・スターは核大量破壊兵器そのものであり、平和な星を焼き尽くすその様は、帝国軍が執着したのも納得の怖さです。クライマックスの爆発シーンには恐怖を通り越して美しさすら感じました。たしかに強力な抑止力として機能することでしょう。

そしてもうひとつ印象的なのはAT-ACTで、“大きいだけで強い”という当然の事実を改めて思い知らされます。見上げたアングルの巨大感は素晴らしいものでした。目の前にいたらまず死を覚悟しますね。反乱同盟軍が正面衝突を避けてゲリラ戦に徹さざるを得ない必然性がうまく表現されていました。こっそりデス・トルーパーが戦闘エリートであることを展開に落とし込んでいたのも見逃せません。

そしておそらく観客全員が興奮したであろう、ダース・ベイダーの無双シーン。旧三部作ではもっさりした殺陣で本当に戦いの達人なのか怪しい部分がありましたが、今回のダース・ベイダーは相当に強いです。怖いです。恐怖と暴力で宇宙を支配する帝国軍の象徴として申し分ない活躍でした。

このように『ローグ・ワン』では、帝国軍を“打倒すべき恐ろしい敵”として描き、その存在感を改めて強調しています。どうして反乱同盟軍は帝国軍を倒さなければならなかったのか、なぜ人々はあれほど「新たなる希望」を待ち望んだのか。旧三部作の物語が実は歴史的大事件であったことを、観客は改めて知ることになるのです。

希望のために散った名もなき戦士たち

これまで『スター・ウォーズ』シリーズは、常にスカイウォーカー家の物語でした。アナキンがダークサイドに堕ちていく悲劇と、その息子ルークが父親を乗り越えて銀河を救う英雄譚という二つの軸で展開される伝説は、いわば恵まれた(または呪われた)家系の歴史なのです。究極的にはアナキン・スカイウォーカー=ダース・ベイダー個人のストーリーでしょう。

『ローグ・ワン』はそんなシリーズの可能性を無限に広げました。ここに登場するのは、これまで語られてこなかった名もなき戦士たちです。彼らは自分たちがただの“繋ぎ役”でしかなく、戦いの行く末を見ることはできないと薄々気づきながらも、必死に戦います。すでに鑑賞された方はご存知のように、ローグ・ワンのメンバーはデス・スターの設計図を届けるため全員死亡します。お互いにメンバーが生きているのかもわからないまま、彼らは戦場のあちこちで呆気なく死んでいきます。これは先述した、本作が「戦争映画」のフレームで『スター・ウォーズ』をとらえ直したという話題と密接につながりますね。一人ひとりの命が驚くほど軽く扱われているのが『ローグ・ワン』の特徴です。『スター・ウォーズ』の裏側にある、シビアで悲惨な現実と真摯に向き合っています。だからこそ、スカイウォーカー家の神話とは異なった別の重みが『ローグ・ワン』には付与されるのです。

Writer

トガワ イッペー
トガワ イッペー

和洋様々なジャンルの映画を鑑賞しています。とくにMCUやDCEUなどアメコミ映画が大好き。ライター名は「ウルトラQ」のキャラクターからとりました。「ウルトラQ」は万城目君だけじゃないんです。

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