『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』ラスト、アナキンのゴースト姿を巡るファン賛否 ─ 新エンディングは運命の輪を閉じたか

また、一般的には「善のアナキンは、暗黒面に堕ちた時に死んだ」と捉えるのが良いだろう。後になって「見方次第では正しいだろう」と弁明したオビ=ワンによれば、アナキンとはシス卿ダース・ベイダーに殺されたのである。フォース・ゴーストが死の際の姿を反映するのなら、善のアナキンが死んだ瞬間、すなわち『シスの復讐』当時のヘイデン・クリステンセン演じる姿となって現れたのは納得ができる。
世界的な経済誌Forbsは、「若い姿のフォース・ゴーストは完全に理に適っている」として、2,820語にも及ぶ長文記事を発表した。この記事の中で映画ライターのマーク・ヒューズ氏は興味深い持論を展開している。フォース・ゴーストとして現世に姿を表すジェダイたちは、自分の姿、つまり年齢を意識によって変えられるのではないかというものだ。この仮説は、「なぜアナキンだけ若返り、オビ=ワンとヨーダは老年のままなのか」という意見に反撃できる。オビ=ワンとヨーダはルークに対して姿を見せていたのだから、自然と老年時の姿にならざるをえない。ではアナキンが若い姿を選んだ理由は?これについては想像だが、我が息子に自身が最も善のジェダイとして光を信じていた姿を見せてやりたかった、と解釈することもできるだろう。
もっとシンプルな考え方もある。創造主ジョージ・ルーカスと言えば、旧三部作に対して1980年代の公開当時では技術的に実現できなかった表現を後年になって頻繁に加えることで知られる。『ジェダイの帰還』公開当時も、本当は若い頃のアナキンの姿をフォース・ゴーストとして登場させたかった。しかし、それこそ当時の観客にとって突然見慣れない若者が現れることになってしまうので、セバスチャン・ショウの姿のままを起用していた、というものだ。
また、『ファントム・メナス』(1999)から『シスの復讐』までのプリクエルが出揃った2004年となっては、実はセバスチャン・ショウの姿は差し替えた方がむしろ好都合だった。なぜなら、『ジェダイの帰還』撮影当時のセバスチャン・ショウは70台後半の年齢だったが、プリクエルの設定で換算するとこの時点でアナキンは40台前半でなければならない。老けすぎてしまったのである。
公式の見解は
「ヘイデン差し替え問題」否定派と肯定派の両意見はまだまだあるが、ここで最も公式見解に近い情報を紹介しておこう。スター・ウォーズの公式Youtubeチャンネルが2014年12月に投稿した公式アニメ「クローン・ウォーズ」にまつわる製作陣のQ&Aセッションにて、ファンの「ダース・ベイダー(アナキン)はどうやってフォース・ゴーストとなる術を学んだのか」との質問に、アニメ版監督のデイブ・フィローニが答えている。
「その疑問は私もジョージに対して抱きました。私は答えを知ってるんですが、ここでは教えません」と少し意地悪なデイブ監督がわずかに語ったところによると、やはり「アナキンのフォース・ゴーストの姿は、彼が善人であった最後の瞬間のもの」であるという。
「フォース・ゴーストの姿が老人のままだったら、神話的に辻褄が合わなくなってしまいます。何故なら、(ベイダー時代の)彼は善人ではなかったから。あの邪悪な老人だった時、彼はバランスが取れていなかった。だから彼は姿を変え、若い姿として登場したというわけです。」
『最後のジェダイ』登場の可能性
アナキンのフォース・ゴーストを存命のヘイデン・クリステンセン姿に差し替えたことにより、現代になって喜ばしい副影響が生じた。2015年の『フォースの覚醒』より始まった新しい三部作に、ヘイデン姿のアナキンのフォース・ゴーストを登場させることが可能になったからだ。
実はアナキンのゴーストは『フォースの覚醒』時にも登場が検討されていた。書籍『アート・オブ・スター・ウォーズ/フォースの覚醒』では、黒いローブを纏ったヘイデン・モデルのアナキンの顔がこちらを睨みつけており、その表情がダース・ベイダーのマスクに次第に変化していくという悪夢的なコンセプト・アートを確認することができる。このシーンがその後実際に撮影された事実はなかったというが、続く『最後のジェダイ』や『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』にヘイデンが演じるアナキンの亡霊が姿を表す可能性は大いにあるだろう。
さて、あなたは『ジェダイの帰還』ラストでアナキンのフォース・ゴーストをヘイデン・クリステンセンの頭部に差し替えた事について、どう思われるだろうか。また、アナキンが『最後のジェダイ』や『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』に再登場するとしたら、どうだろうか。