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アレック・ボールドウィン主演映画の銃誤射事故、発生時の状況が判明 ─ 直前にスタッフ7名離脱のトラブル、数日前には別の誤射事故も

アレック・ボールドウィン Alec Baldwin
Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/28246306070

アレック・ボールドウィンの主演映画『ラスト(原題:Rust)』の撮影現場にて小道具の銃が誤射された事故について、発生当時の状況や撮影チームをめぐる新たな情報がわかった。

2021年10月21日午後、ニューメキシコ州サンタフェの南部にある牧場「Bonanza Creek Ranch」にて、ボールドウィン氏が持っていた小道具の銃から銃弾が発射され、撮影監督のハリーナ・ハッチンス氏と、監督のジョエル・ソウザ氏の二人に当たった。ハッチンス氏はまもなく死亡が確認された。なお、ソウザ監督は病院で治療を受け、すでに退院している。

事故を受け、捜査にあたったニューメキシコ州警察はボールドウィン氏を一時取り調べたが、現在は解放。本件について逮捕者は出ておらず、また書類送検もなされていない。現時点で映画の製作は中断されており、再開の目処は立っていないとのこと。警察は現在も捜査を継続している。

事故当時の状況

米国メディアの取材によると、ボールドウィン氏が持っていた小道具の銃には実弾が入っていた。ただし、ボールドウィン氏本人はもちろん、手渡したアシスタント・ディレクターのデイヴ・ホールズ氏もその事実を認識せず、小道具は安全だと考えていたという。事故当時は直後に撮影するシーンの準備のため、ハッチンス氏やソウザ監督はカメラの付近に集まっており、ボールドウィン氏もすぐ近くでアクションの確認を行っていた。

それゆえに事故が起きた際、ハッチンス氏は至近距離から銃弾を胸部に受け、その後ろにいたソウザ監督の肩にも銃弾は当たった。ハッチンス氏が倒れたのち、周囲のスタッフは止血にあたり、すぐ隣で作業をしていたスクリプト・スーパーバイザーのメイミー・ミッチェル氏が通報したという。

実弾が入っていた銃を準備したのは、本作で銃器を担当していたハンナ・グティエレス氏。事故が起きたのは屋内のセットであり、誤射の瞬間、グティエレス氏はセットの外に出ていた。事故の後、ボールドウィン氏から銃を手渡されたグティエレス氏は、薬莢を抜き、銃とともに警察に提出したとされる。

ニューメキシコ州警察は、発砲された銃をはじめ、ボールドウィン氏が着用していた衣裳、その他の小道具の銃や弾薬などを調査するほか、事故の様子を記録した映像の有無も含め、現場となったBonanza Creek Ranchの捜索を実施するとのこと。現時点で使用された銃や銃弾の詳細は明らかになっておらず、なぜ実弾が小道具に入っていたのかも不明。発砲された銃弾は一発だったとの情報もあるが、正式な発表はなされていない。警察側の担当者は「来週の初めには新しい情報が入っていると思われる」との見解を示した。なお、ニューメキシコ州の労働安全衛生局も現場の調査にあたっている。

なお、現地の地方検事であるメアリー・カーマック=アルトウィーズ氏は、今後本件に関する告訴が行われる可能性について、捜査状況を注視する意向を明かした。現時点で捜査は初期段階であり、検察側は捜査に協力しながら事実や証拠を慎重に検討する方針だという。

事故直前のトラブル、数日前の誤射事故

『ラスト』の撮影は2021年10月6日に始まっており、事故が起きたのは、以前から予定されていた21日間の撮影の12日目だった。しかし事故を受けての取材の結果、撮影現場では複数の問題が発生していたことも判明している。

事故当日の10月21日、問題の誤射が起こる直前には、当初から本作に参加していたカメラスタッフ7名が製作を離脱していた。原因となったのは、スタッフに支払われる報酬や労働環境の問題、新型コロナウイルスの感染対策、そして撮影現場での危機管理不足。7名が現場を離れた決め手は、本来約束されていたホテルが実際には用意されなかったことだと伝えられている。

当初の契約では、ニューメキシコでの撮影中、スタッフにはセットに近いサンタフェ市内に宿泊場所が用意されるはずだった。ところが撮影の開始後、一部のスタッフは、現場から車で1時間ほどかかるアルバカーキのホテルに宿泊することを要求された。サンタフェの宿泊費が高かったことから、製作チームは支払うことを渋ったとされる。スタッフたちは、12時間以上の労働後に遠方のホテルまで自ら移動することに不安を示していた。

証言によると、あるプロデューサーはこれに立腹し、当該のスタッフたちに現場を去るよう要求。自主的に離れなければセキュリティを呼ぶ、と脅迫したともいわれる。その後、製作チームは急遽、全米撮影監督協会に所属していないスタッフを招集して撮影を継続。亡くなったハッチンス氏はこの事態を非常に悲しんでいたという。事故が起きたのは、カメラスタッフが現場を去った約6時間後だった。

また別の取材によると、今回の事故が起こる数日前にも、撮影セットにて銃の誤射事故が起きていたことも発覚している。10月16日、ボールドウィン氏のスタントダブルを務める男性が、やはり空砲として渡された銃を発砲したところ、実際には銃弾が入っていたという事故が発生。幸いにも怪我人などは出なかったが、複数のスタッフがこれを目撃していたにもかかわらず、原因の究明などは行われなかったという。

この問題について、製作チームは「銃や小道具の安全面を懸念する正式な申し立てはまったく認識しておりませんでしたが、製作を中断している間に、内部手続きに関する調査を実施いたします」とのコメントを発表。各機関による捜査に協力するとともに、キャストやスタッフの精神面をケアする取り組みを行っていくとも記した。

アレック・ボールドウィンの声明

『ラスト』の主演・製作を務め、誤射の張本人となってしまったアレック・ボールドウィン氏は、事故を受けての声明をTwitterにて発表している。

「妻であり、母親であり、心から敬服する同僚であるハリーナ・ハッチンスの命を奪った悲劇的な事故について、自分の動揺と悲しみをお伝えする言葉が見つかりません。この悲劇がいかにして起きたのか、警察の捜査に全面的に協力いたします。彼女の夫に連絡を取り、彼とご家族への支援を申し出ております。ハリーナの夫、息子、そして彼女を知り、彼女を愛するすべての方々を思い、私自身も失意のさなかにあります。」

亡くなったハッチンス氏は、2012年ごろから短編映画の撮影を多数手がけており、2019年に参加した長編ホラー映画『ダーリン』は日本でも2021年に劇場公開された。2019年には注目すべきアメリカ人撮影監督の一人に選ばれ、ジョー・マンガニエロ主演『Archenemy(原題)』でも撮影監督を務めるなど、新鋭フィルムメーカーとして今後が期待されていた。関係者や業界関係者からは、ハッチンス氏の逝去、および今回の事故に関するコメントが相次いで発表されている。

映画『ラスト』はアレック・ボールドウィン&ジェンセン・アクレスらが出演するアクション西部劇映画で、ボールドウィン演じる悪名高きアウトローと、殺人容疑で絞首刑を言い渡された孫の絆を描く物語。ボールドウィンは原案・製作も兼任している。

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Source: Deadline(1, 2, 3, 4,), The New York Times, AP, The Los Angeles Times

Writer

稲垣 貴俊
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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