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マーティン・スコセッシ、映画の未来は「皆さんの手にある」と熱いエール ─ 「コンテンツは食べて捨てられるもの」

マーティン・スコセッシ
Photo by Siebbi https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Martin_Scorsese_Berlinale_2010.jpg

最新作『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』の公開を控える巨匠マーティン・スコセッシが、映画の未来について、若いフィルムメーカーに熱いエールを贈った。

近年、スーパーヒーロー映画への批判をはじめ、映画界に対する率直な意見で話題になることの多いスコセッシ。BFIロンドン映画祭のトークでは、ホストを務めたエドガー・ライト監督から「どういうわけか映画界の現状を語る役割になっていますよね」と問われると、「自分が最後の砦にはなりたくなかった」と笑いながら答えたという。

もっとも、スコセッシは映像文化の“今”に対してすこぶる謙虚だ。「正直なところ、(映画は)いまや皆さん全員の手にあると思います。私には、映画がこの先どうなるのかはわからない」と語ったのである。

「映画というものが、過去90~100年間と同じでなければならない理由はありません。なぜ私たちは過去90~100年間の映画が好きなのか……私は好きですが、もう年寄りです。若い人たちは、自分たちを取り巻く世界を別のかたちで見ることになるでしょう。世界を断片的に見るようになる。ならば今、ワンショットにはどんな意味があるのか。私にはわかりません。皆さんがそれを再発明しているんです。」

またスコセッシは、「今はとても特別な時期で、テクノロジーと関係しているものが多い」とも発言。新たな技術は作り手に自由をもたらすとともに、「自分が何を、どのように語りたいのか」を考え直すきっかけにもなるべきだと語った。「新しいテクノロジーと、この新しい世界でも──こんな言葉は使いたくないですが、“シリアス”な映画が変わらず作られることが私の願いです」

かねてより、スーパーヒーロー映画をはじめとするフランチャイズ作品が映画館を独占することに警鐘を鳴らしてきたスコセッシは、今回のトークでも「いつも映画館のオーナーには、若い人たちがフランチャイズ映画ではない新作を映画館で観たいと思える、それを周囲の人々と共有できる空間を作るようお願いしています」と話した。「足を運びたくなる、家でも観られるとは言わせない、そんな魅力的な場所にしてほしいと」。

ホストのエドガー・ライトも、『ベイビー・ドライバー』(2017)や『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』(2021)など、際立った作家性でオリジナル作品にこだわる映画監督のひとり。いまやフィルムメーカーが“コンテンツ製作者”だと思われていることについて彼が尋ねると、スコセッシは「コンテンツとは食べて捨てられるもの」と冗談めかして答えた。「けれど、人生を豊かにしてくれる体験は別のところにあります」

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Source: Variety

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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