“セックス”に溺れる男の苦悩を描いた衝撃作『シェイム』レビュー

突然ですが、“セックス依存症”という言葉を聞いた事がありますでしょうか?
あまり馴染みのない言葉かとは思いますが、これは精神疾患の一つです。「へぇ、自分とはまったく無縁のものだな。」と思う方もいるかもしれません。とんでもない!気づかないうちにあなたにも陥る可能性は十分にあります!何故、依存してしまうのか。何を求めるのか。そしてその結果どうなってしまうのか…。今回は、一人のセックス依存症の男の苦悩とその心の奥に迫ったセクシャルで美しい映画をご紹介します。

NYの高級アパートメントに暮らし、誰もが憧れるような生活を送るブランドン(マイケル・ファスベンダー)しかし、彼は自分ではどうすることもできない依存症に苦しみ、洗練された外見とは裏腹に人知れず葛藤し続けます。

セックス依存症とは

依存する対象は実際に相手のある性交渉だけでなく、自慰行為やポルノへの過度な耽溺および収集、強迫的な売買春、乱交露出や覗き行為、性的ないたずら電話、インターネットを介したアダルト・チャットなど全ての性的な活動が考えられる。依存者はそれらに性的な興奮や刺激に溺れることが習慣化し、徐々に自己コントロールを失っていく。ギャンブル依存や買い物依存などと同じく「行動への依存」に分類される。

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主人公は劇中でとにかくヤりまくりです。相手は街で出会った女性から娼婦まで関係ありません。彼が求めているのは決して相手に対する愛などではなく、純粋な欲望だということがわかります。自分でも異常だということは彼自身も認識しているはずなのですが、決してその欲望を断ち切ることはできません。電車の中で目があった女性の股間を見つめ、少しでも相手が誘っていると思われるような態度(実際は彼がそう思い込んでいるだけなのですが)をとれば、同じ駅で降りて追いかけ回すほど誰とでもセックスをしようとしていました。その欲望の対象は異性に対するものではなく「快楽」を求めるものなので、相手がいない時は自慰行為に没頭したり、夜のマンションの明かりの中に見える営みを隠れて覗いたり、形はどうであれ関係がないのです。

そんな彼のもとに、ある日突然、妹のシシー(キャリー・マリガン)が訪ねてきます。拠り所がないためどうしても一緒に住ませて欲しいと彼に懇願するのです。

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主人公の本当の苦しみは何?

しかし、同棲することになった妹のシシーと彼の関係はどこか不自然な様子を見せます。欲望に溺れて生きてきた主人公は、妹が家に転がり込んできたことで好きなときにセックスも自慰行為もできず、欲求不満の生活を余儀なくされることになりました。無邪気な妹に思わず感情的になり何をしにきた!どうしたいんだ!」と怒鳴りつけます。この一連の流れで見るものは気付かされます。妹は彼にとって何か重要な存在なのだと…。

二人の間で交わされる会話の中にも何か隠された真実があるように思えてしかたないのです。妹=彼の生まれてからすべての生い立ちをする者。過去を知る存在が現れたことで彼が逃げたかった”真実”が目の前に突きつけられたことになります。彼にとってセックスというものは真実から逃げる『手段』であったのでしょうか。

しかし、劇中で二人はどこでどのように育ち、一体何があったのか語られることはありません。依存症に陥ることになった原因がそこにあるようなことが節々で示唆されるのですが、答え合わせはされません。違和感を終始感じさせながらも、観客の想像に全てを委ねられているのです。

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他人事ではない?あなたも陥る可能性がある!

辛い出来事があった時、思わず逃げたくなるような壁にぶつかってしまった時、あなたはどうするでしょうか。友達とおしゃべりしたり、スポーツをしたり、何かに「熱中」することで気分転換をすることは良くあるのではないでしょうか。その延長線上に、この映画の主人公のような依存症はあるのです。

ここからは筆者の解釈ですが、彼は幼いころに親から虐待を受けてきたのだと思います。もちろん性的な虐待です。そして妹ともに過去に縛られることのないように故郷を離れ生きようとしたのですが、幼い頃の辛い記憶はそう簡単には忘れることができません。「トラウマ」そう呼ばれるものに彼は苦しみ続けてきたのです。不思議に思うかもしれませんが、自分が経験したトラウマに立ち向かうためにあえて辛いはずの過去と同じ事を繰り返し続けるという行動はよくあることなのです。さらにそれは無意識であることが多いです。

彼にとってセックスとは、過去の記憶を忘れる手段であり、愛や人間関係とは繋がりのない”欲望”そのものにしたかったのです。

何故なら、そこに感情が湧くとすれば過去の虐待は親の子に対する「憎悪」や「偏愛」といった感情も含まれる醜いものとなってしまうから。(実際、彼は好きになった人とはセックスできませんでした。)

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この作品は性的な描写があるにもかかわらず、まったく汚くなく、むしろ美しいようにも感じてしまいます。役者の方々が美男美女揃いなのはもちろん、監督が撮りたかったのは「心の葛藤」なので、映像表現としてエロの切り取り方がいやらしくないのです。女性でも安心して見れると私は思います。(保証はしませんが笑)

一人の男の心の葛藤をどこまでもリアルに描いた濃厚なドラマ。是非、ご覧ください。

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About the author

ゾンビからラブコメまで映画文化を愛するシネマフリーク。とにかく一人でも多くの人に素晴らしい映画に触れて欲しいため日々情報発信中。アジア映画と70年代アメリカンニューシネマにハマっております。

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