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【インタビュー】『シャザム!』が目指した80年代の冒険映画 ─ デヴィッド・F・サンドバーグ監督はDC映画に笑いをもたらす

シャザム!
©2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

今、DC映画が活力を得ている。かつて「暗い」「シリアスすぎる」と揶揄された同シリーズにとって大きな転換点となったのは『ワンダーウーマン』(2017)だろう。女性監督による女性主人公作品として様々な快挙を成し遂げた同作の特徴は、これまでのシリーズに比べて他作品とのつながりを極力抑え、1本の優れた映画を作ることに注力している点があったように思う。

この独立路線は『アクアマン』(2019)でさらにブラッシュアップ。日本を含む世界中で記録的大ヒットを飛ばした同作も、やはり1本の映画としてエンターテインメント性を確立させていた。快活な性格のアクアマンが放つ爽快感溢れるアクションは、陰鬱とされたイメージを弾き飛ばした。

DC映画の力強い快進撃は続く。2019年4月19日公開の『シャザム!』だ。その名を叫ぶだけで、少年が大人の姿のスーパーヒーローに変身するという『シャザム!』は、コミック史上では1940年から活躍するキャラクター。その性質ゆえ、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)の頃に実現していたら全く違った内容になっていたかもしれない。「見た目はオトナ、中身はコドモ」のギャップを最大限に活かし、スーパーパワーを得た子供たちの無邪気さを、笑いタップリに伸び伸びと描いている。これが底抜けに面白い。

監督は『ライト/オフ』(2016)や『アナベル 死霊人形の誕生』(2017)などホラー畑出身のデヴィッド・F・サンドバーグ。コメディ色の強い本作に起用されたホラー監督は、本作で何を目指したのか。THE RIVERでは、『シャザム!』デヴィッド・F・サンドバーグ監督にインタビューを行った。

『シャザム!』に視る80年代冒険映画のフレーバー

『シャザム!』の舞台は現代だが、映画からは一貫して80年代の冒険映画、たとえば『ゴーストバスターズ』(1984)や『グーニーズ』(1985)のような印象が感じられる。監督は、こうした80年代映画から「間違いなく影響を受けています」と認める。「時代設定を80年代にするつもりはありませんでした。ただ、80年代の感覚を再現したかったんです。」具体的にインスピレーションを受けた人物として、クリス・コロンバスやスティーブン・スピルバーグ、ロバート・ゼメキスといった巨匠たちの名を挙げた。その影響は、映画をご覧になればひしひしと感じられるはずだ。「家族みんなで楽しめる」と自信を覗かせる。

「派手なアクションもあるし、楽しみ満載。笑いたっぷりな作品です。それに、家族の大切さや、誰でも血の繋がりに関係なく家族を見つけられるんだという、ナイスなメッセージも込められていますよ。」

シャザム!
©2019 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

ところで80年代に少年少女を夢中にさせた映画を振り返れば、どこか「怖い」描写があった。洋画黄金時代の冒険映画たちは、子供たちをちょっぴり怖がらせながら、映画を通じて勇気を与えてくれていたような気がする。『シャザム!』はまさにこうした哲学を踏襲していて、そこでホラー出身の監督による手腕が活きてくるのだ。劇場を訪れた子どもは「ちょっぴり怖がるかもしれない」と笑った監督。とはいえ「今作はファミリー映画としての一面もあるので」、自身の過去作に比べればずいぶん抑えたという。

目指したのは『ジュラシック・パーク』や『インディ・ジョーンズ』のような、程よい怖さでした。今作では、血やゴア表現は我慢しています。沢山の人に観て欲しいからですね。」

それにしても最近では、80年代映画リバイバルの動きが多い。当時を「特別な時代でした。最近ではあまり見かけなくなったような、楽しい冒険映画が沢山ありましたね」と振り返るデヴィッド監督は、ポップカルチャーにおける80年代回帰傾向について、「80年代に育った僕と同年代が、いま映画監督になって映画を作っているからでしょう」と分析した。

THE NEW 52のコミックから映画へ

アメコミを読んで育ったというデヴィッド監督だが、実は『シャザム!』については今作のオファーをもらうまで「名前くらいしか知らなかった」という。そこでコミックを一通り読み、「少年がスーパーマンのようなヒーローに変身する」というアイデアを気に入ったという。「絶対にこの映画を作りたい!と思いました。」

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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