『シャザム!〜神々の怒り〜』米公式がネタバレ全開の事態に監督もビックリ ─ 映画宣伝の難しさ浮き彫りに

映画の「サプライズ」を事前にどこまで明かすかは、プロモーションを行うにあたって常に議題となるものだ。宣伝側はとっておきのサプライズを披露して話題性を狙いたものの、それは劇場での純粋な鑑賞体験を望む観客の期待を裏切ることにもつながる。
そこで近年多く見られる手法は、公開直後はサプライズをひた隠しにした宣伝を行なって、コアなファン層があらかた鑑賞を終えたであろうタイミングでサプライズ情報を解禁、第二波・第三波の話題作りを行うというもの。例えば『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』には前2シリーズのスパイダーマンらが登場するという隠し玉があったが、公開後しばらくすると2人のスパイダーマンを宣伝でも見せるようになっていた。
ところが、2023年3月17日に公開されたばかりのDC映画『シャザム!〜神々の怒り〜』は、初めからサプライズを隠さない戦略を取っている。同作には観客を驚かすカメオキャラクターがいるのだが、米ワーナーはその場面の映像を使用したTVスポットCMを米放映しているのだ。当然、これはYouTubeにも数多く転載され、再生しようとせずともサムネイル画像だけで概要がわかってしまう状態となっている。
ネタバレ全開のプロモーション手法には、本作の監督を務めたデヴィッド・F・サンドバーグも「ビックリでした(笑)」と話している。米The Hollywood Reporterに向けて、驚きの胸中を語った。
「プレスツアーから帰ってきたら、“ねぇ、なんで◯◯(※編注:ネタバレのため伏字にしました)のネタバレしたの?”ってメールが来てたんです。何の話だ?って。僕も知らなかったんです。(ネタバレ宣伝についての)事前報告がなかったことは謝罪されましたよ。」
監督はワーナー側のネタバレ公開の意図について、「映画を観に足を運んで欲しいからですね。それはもちろん理解できます」との見解。しかし、「最近、本当の意味で映画を観られるのは、テスト試写の観客だけになりつつある」ことが残念だとも続けている。

監督が例に挙げるのは、レイチェル・ゼグラーが演じたアンの存在だ。彼女は劇中で、主人公らが通う学校の生徒として登場し、主人公の親友であるフレディと距離を縮める。しかし物語の中で、実はアンの正体は神々三姉妹の三女、アンテアであることが判明するというツイストがある。
監督は、この驚きを享受できたのはテスト試写の参加者だけになったことを嘆いている。「いざマーケティングが始まるとと、彼女が女神の格好をしていて、全部丸わかり状態になってしまったから」と監督。日本版ポスターを見ても、アンテアは姉のヘスペラ、カリプソと共に鎧姿で並んでいる。彼女が神々側の立場であることは自明だ。「だから、女神の彼女が学校に潜入していたということに、もう誰も驚かなくなってしまうんです」。

「ネタバレを踏みたくなければ、SNSや動画サイトを避けて、なるべく早く劇場に急げ」とはよく言うものの、『シャザム!〜神々の怒り〜』ではそのTVCMが米放映されているというのだから、全く事情が異なる。監督は『シャザム!』シリーズについて「今後も継続の可能性がある」と言うが、本作は間もなくリブートとなる現行DCユニバース最後期の作品。そのことは、やはり映画ファンの鑑賞意欲に響くことだろう。おそらく米ワーナーは、サプライズも事前に明かすほど、なりふり構わぬ宣伝を行いたい方針なのではないか。
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Source:The Hollywood Reporter