【レポート】邦訳アメコミができるまで…『ShoPro Books 感謝祭』新宿ネイキッドロフトに行ってきた!

2017年3月18日、東京・新宿ネイキッドロフトにて「ShoPro Books 感謝祭~独演~」が開催され、我々THE RIVERも取材という形でお邪魔させて頂きましたのでその模様をレポートします。

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満員の会場から伝わる『アメコミ人気』の高まり

こちらは、映画・アメコミ・BD好きならば最もお世話になっている出版社と言って過言ではない小学館集英社プロダクション(ShoPro Books、通称「ショウプロ」)。同社において長年にわたり邦訳アメコミ出版の指揮を執っている“山本G長”こと山本将隆さんが「邦訳アメコミのつくりかた」をテーマに独演会をするスタイルのイベント、失礼な言い方になりますが世間一般にはニッチな内容にもかかわらず、前売り券はSOLD OUT、立見のお客さんも出る盛況ぶりからも、昨今の日本におけるアメコミの盛り上がりを感じることができました。

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満員のお客さんの熱気はともかく、和やかな雰囲気でイベントがスタート。最初にイベントの構成と綿密なタイムテーブルの説明(笑)。気さくで軽妙な語り口と、カジュアルな服装に、つい親しみを覚えてしまいますが、厳格な一企業人としての山本さんの横顔を垣間見ることができました。

邦訳アメコミの歴史

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邦訳アメコミというとまっさきに思い浮かぶ出版社であるShoPro Books、今までにどのくらいの冊数を刊行されているのかというと、この記事を執筆しています2017年3月第4週発売予定の『ムーンナイト 影』で312作品目になるそうです(BDは含まず)。「目安として挙げるのに、ムーンナイトってどうなんだ」と苦笑する山本さん。

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それではShoPro Books刊行の312作品の中で、「最も売れた作品は?」というと、これはやっぱりDCコミックス『ウォッチメン』(2009年刊)でした。SF小説に贈られるヒューゴー賞をコミックとして唯一受賞したとか、タイム誌の長編小説ベスト100にランクインしたとか、とかく話題に事欠かない作品ですが、好きか嫌いかはともかく、アメコミを語るうえで「読んでないと話にならない」作品であるのは間違いありません。「やはり映画よりも、原作に力があった」と山本さん。ちなみに2位は『デッドプール:マーク・ウィズ・ア・マウス』(2013年刊)3位は『キック・アス』(2010年刊)です。いかにデップーが、邦訳アメコミにおいてもセンセーショナルな存在であったかがわかりますね。

ShoPro Books刊に限らない邦訳アメコミの歴史を紐解くと、1949年(第二次世界大戦のわずか4年後!)のコミックス社刊『スーパーマン』を皮切りに、1978年光文社刊『キャプテン・アメリカ』、1991年晶文社刊『マウス』、1996年メディアワークス刊『スポーン 日本語版』などに代表されるように、様々な出版社がアメコミの本格的輸入を試みてきたことが判ります。しかし、残念ながら多くの場合チャレンジは限定的なものに終わってしまいました。山本さんがShoPro Booksに入社したばかりの2000年頃は、同社にも「アメコミは売れないからもうやめよう」という風潮があり、当時刊行されたグラント・モリソンの『バットマン:アーカムアサイラム』も発行部数の半分以上が返本という状況だったそうです。それが最近では、あまり売れなかった当時の本を復刊しても重版がかかる時代になったそうで、「文化として根付いてきたのではないか」との分析でした。

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こちらはShoPro Books既刊312作品の刊行時期の内訳ですが、2009年以降は刊行ペースが、それ以前の15年間と比較して4倍に伸びていることが判ります。要因として、まずはご想像通り、映画の影響、中でも2009年に公開されたザック・スナイダー監督『ウォッチメン』や2010年の『キック・アス』、2012年の『アベンジャーズ』の大ヒットによる追い風が大きかったとのこと。

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また邦訳アメコミ出版「中の人」にしか判らない要因として、マーベルコミックスの交渉窓口が整理され、ライセンス契約がスムーズになったこと、またディズニーの資本が入り様々な媒体を通してキャラクターの認知が上がったことなどが、現在の邦訳アメコミの成長を後押ししているそうです。

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邦訳アメコミが出来るまで

それでは実際、邦訳アメコミはどのような過程を経て、一冊の本となり書店に並べられているのでしょうか。山本さんが惜しげもなく披露した業務フローがこちら。

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いたってマジメです(失礼)。ShoPro Booksのアメコミ出版チームは総勢10名。皆様のお手元にあるShoPro Books刊のアメコミは、ほぼ全てが山本さん率いるチームの手ずから産み出されたものなのです。企画立案のやり方として、山本さんが最近変化を感じるところは、「SNS」を注視するようになったこと。ユーザーの声は、ユーザーが考える以上に製作者のもとに届きやすくなっているので、忌憚ない意見をどんどん聞かせてほしいとのことでした。

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製作のこぼれ話として、2012年刊行『スパイダーマン:ワン・モア・デイ』のエピソードをご紹介しましょう。同書はそれまでの『スパイダーマン』の設定を一旦全部なかったことにするストーリーで、ファンの間でも賛否分かれる一冊。当初山本さんは、この『ワン・モア・デイ』を出版するか、新しい話がイチから始まる、その次の『スパイダーマン:ブランニュー・デイ』を出版するか悩んでいたそうです。迷った挙句、『ブランニュー・デイ』に決めたのですが、契約の際に手違いで『ワン・モア・デイ』と記載してしまったために、仕方なく(笑)出版したところ、結果的になぜか『ブランニュー・デイ』よりも売れてしまったそうです。

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また2011年刊行の『マイティ・ソー:アスガルドの伝説』は、原書で使われている英語がシェイクスピア調というか古めかしく、そのため翻訳者の選定が非常に難航したそうです。困っていたところに、10年以上前にショウプロ編集部に翻訳を持ち込んできた中沢俊介さんの名刺と経歴を思い出して急遽依頼したものの、試行錯誤したり、会議室に籠もりきりと大変な作業になったそうです。ところがそれが縁となり、現在では中沢氏が翻訳を担当したShoPro Books刊のアメコミは50冊を優に数える関係となったそうです。

ShoPro Books 2017年邦訳アメコミラインナップ発表

第二部では、ShoPro Books刊の2017年邦訳アメコミラインナップが発表されました。この時が本邦初公開となる情報も多く、会場はどよめきの連続でした。詳細はTwitterなどで既に発表されていますので是非そちらをご参照ください。

以下は筆者が個人的に楽しみな作品を抜粋したものです。またこの後行われた、会場のファンが出版を希望するタイトルを山本さんに伝えるコーナーでは、ファンの熱さに山本さんが感心する一幕も。立場は違えど、「アメコミ好き同士」、響きあうものを感じました。

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太っ腹!豪華プレゼント大抽選会

そして第三部は「感謝祭」メインイベント、プレゼント大抽選会。スーパーマンのスタチューから、フィギュア、レアものTシャツ、缶バッジなどが大盤振る舞い。山本さんの仕事机に眠っていた幻のアイテムまで登場しました。当選された方々、おめでとうございました!(ちなみに筆者はジャスティスリーグのピンバッジをいただきました)

PowerPoint プレゼンテーション

プレゼント大抽選会で提供された豪華アイテムの一部

プレゼント大抽選会で提供された豪華アイテムの一部

こうして盛況のなか幕を閉じた「ShoPro Books感謝祭~独演~」は、日本にアメコミ文化を紹介する最前線におられる山本さんの貴重なお話、未発表情報、そしてプレゼントと、アメコミファン大満足の内容でした。イベントの次回開催は未定ですが、Shopro Booksのアメコミは次々と刊行が予定されています。映画を観て原作に興味も持ったという方には、今回のイベント内で山本さんが「初心者におすすめする邦訳アメコミ本」をDC・マーベルからそれぞれ1冊ずつピックアップされていましたので、そちらをご紹介したいと思います。是非お手に取ってみてくださいね。

『ベスト・オブ・スパイダーマン』

『DCキャラクターズ:オリジン』

ShoPro Booksさん Webサイトはこちら:http://books.shopro.co.jp/

Photo:©THE RIVER

About the author

1977年生まれ。週刊少年ジャンプ脳のクリーチャー愛好家。玩具コレクター。エンドレスダイエッター。「意識低い系」の文章を信条としています。

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