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巨匠スコセッシ、窪塚洋介の熱弁に目元ウルウル…『沈黙 -サイレンス-』ジャパンプレミアレポート

沈黙 ジャパン・プレミア

「僕も本当に監督に出会えて幸せでした。難しい役でしたが、常に僕らのことを見守ってくれて、待ってくれて、僕らの繊細な動きや表現を監督は見逃さずに見てくれていて、その中で新たなアドバイスを下さる。それがあって初めて僕はこの役を乗り越えられたと思っています。」

映画本編には「想像以上のものが描かれています」と期待感を煽った浅野は、「同時に、さっき素晴らしいことを語っていた窪塚君がこんな役なのかと」と、窪塚とキチジローのギャップを語り、再度笑いを誘った。

現場で辛かったことについて尋ねられると、「僕の役は通訳なので、辛いことがないんですよねぇ」と飄々と語った。浅野が演じる通辞は、拷問にかける井上と、拷問にかけられる隠れキリシタンや宣教師らの間に立つ役だ。

「だいたい、辛いことを井上様から聞いてきて、その辛いことを『お前どうやらやるらしいよ』って伝えて。で、その人が辛いことをしてるのを見て、『あいつ辛いことしてましたよ』って言ってるだけで。間に立っているだけだから僕は全然辛いことがなくて」と、またも会場を笑いで包んだ。

また、大きな波が必要となる海のシーンでは一部セットを使って撮影されたそうだが、そのセットを見学で訪れた際のことを「ここでやってんの?ここは僕は入れないなぁ、と涼しい顔をして(見学しました)」と明かした。

井上筑後守役 イッセー尾形

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©THE RIVER
オーディションから撮影までに十分時間があったというイッセー尾形は、「毎日、家で井上を育てた」と、役作りを子育てに例えた。

「まるで我が子のように井上が育ったんですね。我が子を悪人のように育てる親はいません。根は優しい子に育てました。私はその優しい子のように演じたんです。
私たちが戦う相手は、キリシタンだけでなく世間そのもの。そんな様子を監督は優しく暖かく見守ってくれまして、本当に感謝しています。」

尾形はさらに、「日本人スタッフがいなければこの映画は成り立たなかった」と、現場や裏方で活躍した日本人スタッフを大いに讃えた。

「朝早くから夜遅くまで。(衣装が)汚れたら洗濯して。次の日はケロっとして僕たちを迎えてくれて、その日の撮影がうまくいく。ホテルに帰ってきたスタッフは泥だらけで『今日も戦ったねぇ』なんて言う顔を見るんですね。すごい絆で結ばれています。そんなことも全部含めてこの映画が成り立っています。」

モキチ役 塚本晋也

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©THE RIVER
塚本晋也も「窪塚さんの挨拶聞いたら全部吹き飛びました」と笑う。

「モキチは敬虔なクリスチャンですが、僕自身は特別な宗教を持ち合わせてないので、”スコセッシ教”というのを作らせて頂きました(笑)。スコセッシ監督のためだったらなんでも出来ますし、磔(はりつけ)のシーンの撮影でも、もしかして死んじゃってもしょうがないかな、というくらい全てを捧げました。」

自身も映画監督として活躍する塚本は、スコセッシ監督の現場での振る舞いから盗みたいところがあったそうだ。

「監督は俳優に自由に演技をさせてくださる。何か提案したことでNOということが全くなく、素晴らしいと言ってくれました。
現場でも演じた後に『エクセレント!』と言ってくれるんです。」

これにはスコセッシ監督も声をあげて笑う。

「俳優って、常に不安なんです。今のでいいのかな…とクヨクヨするんですけど、監督が『エクセレント!』って言ってくださると、次のシーンに気持ちよく移れるんです。今度から僕も監督をやるときは真似させていただきます(笑)。」

予告編でも象徴的な、海上での磔(はりつけ)シーンの過酷な撮影については「僕はスコセッシ教の信者だから苦行も喜びなんです」とケロリとした様子。

「ただ、波がでかいんですよ。波があってセリフを言うんですが、どうしても鼻の穴の中に水が入って咳き込むんですね。咳を落ち着けてからセリフを言うんですが、そのセリフを言おうとしたらもう次の波が来てる(笑)。」

この苦労こそが、演技にリアリティをもたらしたんだと軽いトーンで明かした塚本だったが、スコセッシ監督は「あのシーンの塚本さんは凄すぎて、スタッフも涙を流していたんですよ」と、敬意を評さずにはいられない様子だった。

塚本は今作を「ひとつの答えでなく、いくつもの答えがある」「いつまでも歴史に残り、長く長く語り継がれる映画です。そんな歴史の一つに関わることが出来て本当に光栄です」と結んだ。

Writer

中谷 直登
中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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