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巨匠スコセッシ、窪塚洋介の熱弁に目元ウルウル…『沈黙 -サイレンス-』ジャパンプレミアレポート

沈黙 ジャパン・プレミア

巨匠マーティン・スコセッシ監督の最新作『沈黙 -サイレンス-』のジャパンプレミアが1月17日(火)東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズにて行われ、監督のマーティン・スコセッシほか、出演の窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、プロデューサーのエマ・ティリンガー・コスコフ、共同脚本ジェイ・コックスが登場した。スコセッシ監督が積年の想いを経てようやく完成させた『沈黙 -サイレンス-』にまつわる想いやエピソードをたっぷりと語った。

窪塚や浅野ら6名の日本人キャストに囲まれた壇上のマーティン・スコセッシは、「こうして東京でキャスト皆さんで集まれるなんて凄いことです」と感慨深げに語った。

監督が初めて原作を読んでから今回の映画まで実に28年。これほど長くかかったことについて、「遠藤さんがこの作品で伝えたかったことを理解すること、そしていかに映像化するべきかを思案していた」と振り返る。また、「私が再び父になったりと、自分自身の人生の成長や変化を経て、この作品がより豊かに、そしてクリアーになりました」と説明した。

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©THE RIVER

日本人キャストらの演技について尋ねられると、「大袈裟と思われるかもしれませんが、皆さんの演技の深みや力強さを出来る限り映像化できるように、ただひたすら努めました」と敬意を払った。

出演者らの想いとエピソード

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©THE RIVER

続いて、日本人キャストらにコメントが求められると、まずは窪塚洋介が今作への想いを語った。窪塚は、自身の言葉で『沈黙 -サイレンス-』に捧げた熱愛を述べ、スコセッシ監督を感激させていた。そのスピーチ全文を起こしたい。

キチジロー役 窪塚洋介

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©THE RIVER

「こんばんは。窪塚です。

マーティン・スコセッシ監督、どんだけ日本に来てくれるんですか。この30年、制作のためにどれだけこの方が日本に来たと思いますか。どれだけ、日本に、そして遠藤周作さんに、遠藤周作さんのその想いに、ひいては皆さんに、どれだけの敬意を払ってくれているか。
こんな極東のどこの馬の骨ともわからないようなこの俺に、毎日どれだけ敬意を払ってくれていたか。
溢れるようなその敬意を僕らは感じて、毎日夢の中で仕事しているみたいでした。

どれだけ山の上が厳しい寒さだろうが、どれだけ正座長いことさられて、古傷が痛もうが、膝が痛かろうが、どれだけ長いこと待ち時間があろうが、
そんなもの、幸せの一部だろうと思うくらい、本当に幸せな時間を過ごさせてもらいました。

俺たちは、和の国の民です。ピースとか、コンパッションとか、リレイションシップとか、”和”の心を持ってます。
俺たちは和の国の民です。
この映画が、マーティン・スコセッシ監督の想いが、遠藤周作さんの想いが皆様のところに届いて、より良い明日が来ることを、俺は信じて疑いません。

今日来る時に、新雪を米原あたりで見て、自分が今、あぁそういう気持ちでいるんだなということを確認しながら、ここにたどり着きました。

今日、この場所が、僕の役者人生の最良の日です。
そこに立ち会って頂けて、本当に幸せに感じています。

神は沈黙しているので、自分で、自分の深奥に入っていって、その答えに触れてもらえたらと思います。

本当に、幸せです。ありがとうございました。」

窪塚が熱弁を終えると、スコセッシ監督は「アリガトウ」と讃え、まるで父のような目で窪塚を見ていた。眉は八の字に垂れ、瞳をうるわせ、涙粒がこぼれる手前だった。

これについて窪塚洋介ご本人も、Twitterで当記事リンクと共に言及している。

通辞役 浅野忠信

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©THE RIVER

「窪塚さんの素晴らしいスピーチの後で、何を言ったらいいかわからないんですけど…」と、会場の笑いを誘った浅野忠信。

「僕も本当に監督に出会えて幸せでした。難しい役でしたが、常に僕らのことを見守ってくれて、待ってくれて、僕らの繊細な動きや表現を監督は見逃さずに見てくれていて、その中で新たなアドバイスを下さる。それがあって初めて僕はこの役を乗り越えられたと思っています。」

映画本編には「想像以上のものが描かれています」と期待感を煽った浅野は、「同時に、さっき素晴らしいことを語っていた窪塚君がこんな役なのかと」と、窪塚とキチジローのギャップを語り、再度笑いを誘った。

現場で辛かったことについて尋ねられると、「僕の役は通訳なので、辛いことがないんですよねぇ」と飄々と語った。浅野が演じる通辞は、拷問にかける井上と、拷問にかけられる隠れキリシタンや宣教師らの間に立つ役だ。

「だいたい、辛いことを井上様から聞いてきて、その辛いことを『お前どうやらやるらしいよ』って伝えて。で、その人が辛いことをしてるのを見て、『あいつ辛いことしてましたよ』って言ってるだけで。間に立っているだけだから僕は全然辛いことがなくて」と、またも会場を笑いで包んだ。

また、大きな波が必要となる海のシーンでは一部セットを使って撮影されたそうだが、そのセットを見学で訪れた際のことを「ここでやってんの?ここは僕は入れないなぁ、と涼しい顔をして(見学しました)」と明かした。

井上筑後守役 イッセー尾形

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©THE RIVER

オーディションから撮影までに十分時間があったというイッセー尾形は、「毎日、家で井上を育てた」と、役作りを子育てに例えた。

「まるで我が子のように井上が育ったんですね。我が子を悪人のように育てる親はいません。根は優しい子に育てました。私はその優しい子のように演じたんです。
私たちが戦う相手は、キリシタンだけでなく世間そのもの。そんな様子を監督は優しく暖かく見守ってくれまして、本当に感謝しています。」

尾形はさらに、「日本人スタッフがいなければこの映画は成り立たなかった」と、現場や裏方で活躍した日本人スタッフを大いに讃えた。

「朝早くから夜遅くまで。(衣装が)汚れたら洗濯して。次の日はケロっとして僕たちを迎えてくれて、その日の撮影がうまくいく。ホテルに帰ってきたスタッフは泥だらけで『今日も戦ったねぇ』なんて言う顔を見るんですね。すごい絆で結ばれています。そんなことも全部含めてこの映画が成り立っています。」

モキチ役 塚本晋也

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©THE RIVER

塚本晋也も「窪塚さんの挨拶聞いたら全部吹き飛びました」と笑う。

「モキチは敬虔なクリスチャンですが、僕自身は特別な宗教を持ち合わせてないので、”スコセッシ教”というのを作らせて頂きました(笑)。スコセッシ監督のためだったらなんでも出来ますし、磔(はりつけ)のシーンの撮影でも、もしかして死んじゃってもしょうがないかな、というくらい全てを捧げました。」

自身も映画監督として活躍する塚本は、スコセッシ監督の現場での振る舞いから盗みたいところがあったそうだ。

「監督は俳優に自由に演技をさせてくださる。何か提案したことでNOということが全くなく、素晴らしいと言ってくれました。
現場でも演じた後に『エクセレント!』と言ってくれるんです。」

これにはスコセッシ監督も声をあげて笑う。

「俳優って、常に不安なんです。今のでいいのかな…とクヨクヨするんですけど、監督が『エクセレント!』って言ってくださると、次のシーンに気持ちよく移れるんです。今度から僕も監督をやるときは真似させていただきます(笑)。」

予告編でも象徴的な、海上での磔(はりつけ)シーンの過酷な撮影については「僕はスコセッシ教の信者だから苦行も喜びなんです」とケロリとした様子。

「ただ、波がでかいんですよ。波があってセリフを言うんですが、どうしても鼻の穴の中に水が入って咳き込むんですね。咳を落ち着けてからセリフを言うんですが、そのセリフを言おうとしたらもう次の波が来てる(笑)。」

この苦労こそが、演技にリアリティをもたらしたんだと軽いトーンで明かした塚本だったが、スコセッシ監督は「あのシーンの塚本さんは凄すぎて、スタッフも涙を流していたんですよ」と、敬意を評さずにはいられない様子だった。

塚本は今作を「ひとつの答えでなく、いくつもの答えがある」「いつまでも歴史に残り、長く長く語り継がれる映画です。そんな歴史の一つに関わることが出来て本当に光栄です」と結んだ。

モニカ役 小松菜奈

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©THE RIVER

今作でハリウッドデビューとなった小松菜奈は「慣れない英語でのセリフで壁にぶつかった」と振り返る。「どうやって英語でお芝居をすればいいのか、感情をどこに持っていけばいいのか迷った」そうだ。

『アメイジング・スパイダーマン』などでも知られるロドリゴ役アンドリュー・ガーフィールドと共演したことについては、「アンドリューさんはとても大変な役で、ストイックに減量していたり、声もかけられる状態でもなく、お話もなかなかできませんでした。」と、現場での緊張した空気感について語った。

「遠くで見ていても、本編を見ても、すごく過酷なものだったのだなと。自分たちとはとても比べられないなというくらいの大変さがあったようでした。クランクアップの際はハグをしてくださったんですけど、もうちょっとお話できればよかったなと思いました。」

そんな小松が現場で経験した苦難は、感情をさらけ出して挑んだシーンの再撮影だった。一度はオーケーになったものの、編集の都合で翌日にもう一度取り直しになったそうだ。

「その時の感情を思い出しちゃってすごい泣いちゃったんですけど、求めてくれているということはまだ出来ると思ってくれているのだと思い、そのときは辛かったんですけど、もう一度見てくれるのは幸せなことだと思いました。」

スコセッシ監督も小松のシーンには舌を巻いたようで、「彼女の芝居にはとても驚いて、再撮影を頼むのが辛くて辛くて…。でも翌日になれば同じくらい激しくエモーショナルな演技を見せてくれて、凄かったんですよ」と絶賛した。

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©THE RIVER

小松菜奈のキャスティングは巧みと言えるだろう。彼女の存在により、10代の若い世代も『沈黙 -サイレンス-』に触れる機会が演出される。小松自身も、「若い人たちにどんな気持ちでも観てもらえるかと、反響が楽しみです。とにかく一人でも多くの若い人たちに観て欲しい」とアピールした。

ジュアン役 加瀬亮

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©THE RIVER

「小松さんは普段ダルそうなのに、芝居に入ると200%くらいの力を出すんです。普段パワーを蓄えてるのかなと思いました。」と小松をユニークに評した加瀬亮。

「この共演者の名前と監督の名前を聞いた時に、すごくワクワクして、どうしても参加したいと思いました」と、今作への参加に至る想いを語った加瀬は、「自分は特別の宗教を持っていないので、ジュアンを演じながら自分の中で信仰になるものを探しながら演じていました」と回顧した。

「(信仰は)この映画のテーマでもあるので、観た後にきっとそれを感じてくれたら嬉しいです。」

沈黙 ジャパン・プレミア
(C)2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

日米最高のスタッフのもと、アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライバー、リーアム・ニーソンと、窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮といった豪華キャストで送るマーティン・スコセッシ監督最新作『沈黙 -サイレンス-』、いよいよ1月21日(土)より全国ロードショー。

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Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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