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名作『天使にラブ・ソングを…』いまさら聞けない基礎知識 ─ あらすじからキャスト&スタッフ、挿入歌まで

天使にラブ・ソングを…
© Buena Vista Pictures 写真:ゼータ イメージ

『天使にラブ・ソングを…』(1992)は、90年代を代表する名作コメディであり音楽映画だ。主演を務めたのは、本作をきっかけに世界的に知られた女優・歌手・コメディアンのウーピー・ゴールドバーグ。しかし米国公開から28年が経過する(本記事時点)とあっては、改めてこの作品の基礎知識を振り返っておくことにも意義もありそうだ。初めて『天使にラブ・ソングを…』を観るという方の、予習にお役立ていただければ幸いである。

『天使にラブ・ソングを…』

あらすじ

ウーピー演じる主人公デロリス・ヴァン・カルティエは、アメリカ・ネバダ州にあるナイトクラブ「ムーンライトラウンジ」で働く歌手。彼女はネバダを縄張りとするマフィアの首領、ヴィンスの愛人でもあった。盤石な立場にあったはずのデロリスだが、ひょんなことから、ヴィンスが裏切り者を殺害する現場を目撃したことから一転して命を狙われるようになってしまう。

警察に保護されたデロリスは、聖キャサリン修道院に匿われ、“シスター・クラレンス”として新たな生活を始めるのだった。しかし、ナイトクラブとはまるで違う世界に放り込まれたデロリスは、厳格な規律に縛られる日々になかなかなじめない。彼女が大きく変化するきっかけは、聖歌隊を任されたことだった。クラブ歌手としての経験とアイデアで、デロリスは聖歌隊を劇的に変え、やがて人気者になっていく。シスターたちとも強い絆を育んでいったデロリスだが、その先には思わぬ事態が待っており……。

主演 ウーピー・ゴールドバーグ

主演のウーピー・ゴールドバーグは、1990年の『ゴースト ニューヨークの幻』でアカデミー助演女優賞を受賞。そのほか、ドラマ界ではエミー賞、音楽界ではグラミー賞、演劇界ではトニー賞に輝いた、ショービジネスを代表する4つの賞を制覇した数少ない人物だ(ウーピーのほかには、オードリー・ヘップバーンやスコット・ルーディン、ジョン・レジェンドらがいる)。その演技と音楽の才能は、ソウルフルな“音楽コメディ”たる本作で存分に発揮された。

ウーピー・ゴールドバーグ
Photo by David Shankbone https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Whoopi_Goldberg_at_a_NYC_No_on_Proposition_8_Rally.jpg

音楽

“音楽映画”ゆえ、もちろん劇中の音楽には要注目だ。デロリス率いる聖歌隊は、グレゴリオ聖歌「サルヴェ・レジーナ」や、メアリー・ウェルズによる1966年の楽曲「My Guy」、リトル・ペギー・マーチが1963年に発表した「I Will Follow Him」などを独自のスタイルで歌いあげる。原曲をあらかじめ聴いておけば、本作ならではのアレンジもしっかりと楽しめるだろう。

また挿入歌には、フォンテラ・バス「Rescue Me」やエッタ・ジェームズ「Roll With Me Henry」、ディー・ディー・シャープ「Gravy」など、50~60年代の名曲が多数登場。いま聴いてもまったく色褪せない楽曲のパワーを堪能できる。また、C+Cミュージック・ファクトリー「Just a Touch of Love」(1991年発表)や、主題歌「If My Sister’s in Trouble」で“90sテイスト”をちょっぴり味わえるのもポイントだ。

キャスト&スタッフ

ウーピー・ゴールドバーグのほか、出演者には、デロリスを狙うマフィアのヴィンス役で『タクシードライバー』(1976)や『レザボア・ドッグス』(1992)『パルプ・フィクション』(1995)などのハーヴェイ・カイテル。『アイリッシュマン』(2019)への登場も記憶に新しいところだ。デロリスと対立する院長役には、『ハリー・ポッター』シリーズのマグゴナガル先生役で幅広くの層に知られるマギー・スミス。『眺めのいい部屋』(1976)などでアカデミー賞をはじめとする数々の映画賞に輝いてきた名女優で、ドラマ「ダウントン・アビー」(2010-2015)にも出演した。

ちなみに、サウザー警部補役のビル・ナンは、サム・ライミ版『スパイダーマン』3部作にてデイリー・ビューグルの編集者ロビー役を演じた人物。余談だが、ローマ法王(聖ヨハネ・パウロ二世)役のジーン・クレイタックは本人にそっくりすぎるため、本作以外にも『裸の銃(ガン)を持つ男PART33 1/3/最後の侮辱』(1994)や『ラスト・チャンスをあなたに』(1998)、ドラマ「アリー my Love」など多数の映画・ドラマでローマ法王役を演じてきた、いわば“法王専門役者”だ。

監督を務めたのは、青春恋愛映画の名作『ダーティ・ダンシング』(1987)で成功を収めたエミール・アルドリーノ。同作は映画の大部分をダンスシーンが占めているという、まごうかたなき“ダンス・ムービー”で、その音楽的な才気が『天使にラブ・ソングを…』にも活かされている。ちなみに、アルドリーノ監督は、若き日のロバート・ダウニー・Jr.が出演したラブコメディ『ワン・モア・タイム』(1989)なども手がけた。

続編&舞台化

『天使にラブ・ソングを…』は1992年5月の米国公開後、累計興行収入2億3,160万ドル(国内1億3,960万ドル、海外9,200万ドル)を記録。1992年の世界興収記録としては第8位を記録し、翌1993年には、続編『天使にラブ・ソングを2』が製作された。その後、2006年にはミュージカルとして舞台化され、日本を含む世界各国で上演されている。なお、2021年にロンドンで予定されている上演では、ウーピー・ゴールドバーグがデロリス役を28年ぶりに再演する

続編製作の可能性、こちらをどうぞ

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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