【レビュー】『スモールフット』に大人の観客がハッとさせられる理由 ─ モジャかわの皮を被ったシニカル映画

子供から大人まで楽しめるが、大人の観客にとっては思いがけずハッとさせられる。2018年10月12日(金)より公開の『スモールフット』はそんな映画だ。臆病なイエティと、彼らにとって空想上の生物とされてきたスモールフット=人間との不思議な出会いを描く。『ミニオンズ』(2015)原作者と音楽が贈るミュージック・ファンタジーとあって、すべての世代を夢中にさせる楽しさは折り紙付きだ。
好奇心があるからこそ、人生はすばらしい
『スモールフット』イエティの主人公のミーゴは、人里離れた雪の山頂に暮らしている。そこではイエティたち特有の文化が形成されており、彼らは古代めいた伝統を疑うこと無く信じて生きている。
主人公ミーゴも、最初こそ「このまま全て変わらずにいてほしい」ことを望み、村の子どもたちには「ほんとかなって疑問がわいたら、モヤモヤはグッと押し込んで」、旧来の教えを疑わないことを説いて回る。ミーゴはこの保守的なメッセージを、アップテンポなミュージカル・ナンバーに乗せて歌うが、観客はすぐに曲調と歌詞がミスマッチであることに気づくようになっている。
この映画のテーマは、あくまでも「好奇心があるからこそ、人生はすばらしくなるんだ」という考えに基づくもの。だが、「何も疑わずに今のままが続くことを望め」というイエティたちの姿は、意外なほど大人の観客の心を突く。監督のキャリー・カークパトリックがインタビューで答えているように、イエティの世界は「人間より進化が1,000年ほど遅れている」設定で、「村の作りやその信念体系はどことなく原始的」である。しかしながら、映画の冒頭で観客は「だからといって私達は、このイエティを蔑視できるだろうか」というジレンマに陥る。
そしてミーゴは、スモールフット…、つまり人間のパーシーと偶然出会う。お互いの言葉は通じないようで、ミーゴからすると人間は、ミニオンのようにピーチク騒ぐ小動物に見えている。一方人間の目からすると、イエティはガウガウと吠える巨大な怪物だ。このあたりのユーモアは、『怪盗グルー』シリーズとミニオンを生み出したセルジオ・パブロス原作とあって安心の出来。往年のアメリカン・コメディ・アニメ「ルーニー・テューンズ」を意識したというアクションは賑やかで飽きさせない。
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