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【特集】ランド・カルリジアンの知性と優雅 ― 『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』もうひとつの若き日の冒険

Donald Glover(ドナルド・グローバー)
Public Domain

ランド・カルリジアンという男をいかに形容すべきだろうか。たとえばハン・ソロの友人、仲間、ライバル、あるいはくされ縁。密輸業者、ギャンブラー、実業家、街の指導者……。どれだけ言葉を尽くしても、ランドという男の正体を言い当てることはできないだろう。

若き日のハン・ソロを描く映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』では、ハン・ソロとランド・カルリジアンの出会いが描かれる。若き日のハン・ソロが銀河の裏社会で懸命に格闘するのに対して、若かりしランドは、一体どんな活躍を見せてくれるのか……。
ランドを演じるのは、「スター・ウォーズは聖書のようなもの」だと述べているほどシリーズの大ファンであり、ランド・カルリジアンは「世界で唯一演じたかった役」だったというドナルド・グローバー。本記事では、彼の役づくりに注目しながら、ランドという男の表情に近づいてみたい。

https://www.youtube.com/watch?v=YLHCQtdr9bs

“初代”ビリー・ディー・ウィリアムズとの対面

ハン・ソロにハリソン・フォードという俳優がいるように、ランド・カルリジアンにはビリー・ディー・ウィリアムズという存在がある。『エピソード5/帝国の逆襲』(1980)、『エピソード6/ジェダイの帰還』(1983)に登場した彼は、その理知的で油断のならないキャラクター性で多くのファンを得た。しかしながら、このキャラクターがスクリーンに登場するのは実に35年ぶり。撮影にあたって、ドナルドはビリーとの面会に臨んだという。

「(ビリー・ディー・ウィリアムズは)最高でしたね。聞きたいことがいっぱいあったんですよ。[中略]『帝国の逆襲』が作られた当時、スター・ウォーズの世界で、彼は最初にしてほぼ唯一の黒人だった。どんなふうに参加していたのか、どんなことを考えていたのかを聞きました。型を破るというのは、いつだってスゴいことです。良いアドバイスをもらいましたよ。なるべく自分自身のままでいることや、キャラクターをリアルな人間にすることについて。」

具体的にどんなアドバイスを受けたのか、ドナルドはその詳細を明かしていない。ハリソン・フォードも、若きハン・ソロ役のオールデン・エアエンライクに助言を授けたあと「誰にも教えるんじゃないぞ」と話していたという。「スター・ウォーズ」のキャラクター役のレシピは、彼らを演じる俳優だけに知ることが許されているということなのか……。しかしビリーの場合、ドナルドにある“注文”を出していたという。

“チャーミングにやって”と言われました(笑)。[中略]それから“いろんなものに興味を示して”と。ランドは変人じゃなくて多趣味なんです。そういう部分は、できるだけ役に取り入れましたよ。」

ランド・カルリジアンを作るもの

ドナルドは若いランド・カルリジアンについて、「自分の置かれた状況の内と外を知りたがる」人物だと説明する。それこそが知性的な――時に狡猾な――ランドという人物の特徴だろう。

「ランドはルールを求めています。だって、彼はルールから利益を得られる立場の人間なんですから。(ルールの)抜け穴みたいなものを見つける賢さがあるんです。ハン・ソロはルールをぶち壊すほうだと思いますね。そうしていても彼は逃げ切れますし。」

そのスマートなキャラクターは、単純な賢さのみならず、同時に優雅な側面をあわせ持つ。本作には“ランドが所有する”ミレニアム・ファルコンが登場するが、ドナルドはミレニアム・ファルコンのセットで撮影の空き時間を過ごしながら役柄の性格を捉えていったようだ。

ランドは細かな好みのある、すごく細かい人間です。快適な生活が好きなんですよ。(撮影中は)ミレニアム・ファルコンのセットに住んでました(笑)。撮影の合間、みんなは“次の準備をしよう、自分の椅子に戻ろう”って感じですけど、僕は“ランドの部屋にいよう”と。ランドのベッドで横になって、本を読んだり、書き物をしたり。すごく居心地がいいんです。彼も居心地がいいのが好きなんだと思いますね。」

同じくランドによって欠かせない要素は、そのクールな装いだ。「撮影現場でいつも一番着飾っていた」とドナルドが語るように、用意された衣装の数も膨大。ドナルドは、ランドにとって服装がいかに重要かを強調している。

「ランドにとって服は生活の一部だし、彼は自分の服を誇りに思っている。服装が物事を簡単にするんです。誰かに会った時、その人が丁寧で礼儀正しそうだったら、簡単に何か与えたくなるでしょう。“この人はうまくやってきたんだろうな”って思いますよね。ランドは決して飢えていないし、良い服を選ぶ時間の余裕もあるんです。」

ちなみにドナルドは、本作『ハン・ソロ』に限らず、「キャラクターの若い頃を知るのが好きなんです。どんなふうに彼らが生きてきたのかを物語ってくれますから」と語って、いわゆる前日譚を好むことを明かしている。ではランドの場合、彼はどんな「若い頃」を見せてくれるのか……?

「ランドが初めて登場した時、彼はもう街を持っていましたよね(笑)。なので、そういうことができるようになる以前の彼を見せたいと思いました。(若い頃)自分にそんなことができると彼が思っていたかどうかはわからないですけど。」

ドナルド・グローバー

ドナルド・グローバー
Photo by NASA HQ PHOTO https://www.flickr.com/photos/nasahqphoto/20716556524/

1983年生まれのドナルド・グローバーは、俳優のみならず、コメディアン、ラッパー、脚本家、監督などさまざまな顔を持つクリエイターだ。おそろしいのは、彼がいずれの面でも高い評価を集めていること。俳優としては、ドラマ『コミ・カレ!!』(2009-2014)に出演したのち、映画『マジック・マイクXXL』(2015)や『オデッセイ』(2015)、『スパイダーマン:ホームカミング』(2017)に出演。さらに、ジョン・ファヴロー監督による実写版『ライオン・キング(邦題未定、原題:The Lion King)』で主人公シンバの声優を務めることも決まっている。

またドナルドは、チャイルディッシュ・ガンビーノ(Childish Gambino)の名で2011年よりラッパーとして活動中。2018年6月時点での最新曲“This Is America”は、そのメッセージ性と完成度、そしてミュージックビデオが全世界で話題を呼び、YouTubeでは3億回再生を突破している(6月29日現在)。さらに脚本家・監督としては、自身が主演を務めるドラマ『アトランタ』(2016-)が高く評価された。シュールとも脱力系とも言いがたい、しかし強烈な毒をはらんだユーモアは熱狂的なファンを数多く生み出している。

本作『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は、ドナルドにとって、ハリウッド大作映画で初めて務める主要キャストとなる。予告編の時点でランド・カルリジアンの存在感には注目が集まっていたが、その確かな演技は海外の「スター・ウォーズ」ファンの間で話題沸騰。この作品をきっかけに、ドナルドの名前が日本でさらに浸透することにも期待が高まる。

映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』は2018年6月29日より全国ロードショー

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』公式サイト:https://starwars.disney.co.jp/movie/hansolo.html

Sources: EW, CBR, CB

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。