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『THE LAST OF US』なぜサム・ライミの映画版は頓挫したか ─ ソニー会長、ドラマ化成功のHBOに嫉妬

The Last of Us
Photograph by Liane Hentscher/HBO

HBOドラマ「THE LAST OF US」は、2023年1月16日のリリース以来、記録的ヒットを飛ばし、早くも“2023年ベストドラマ”との呼び声が高い話題作だ。原作は、2013年にソニー・インタラクティブエンタテインメントが発売した同名人気サバイバル・アクションゲーム。世界が熱狂する中、ソニーの映画部門である米ソニー・ピクチャーズのトム・ロスマン会長が、自社で映画化を実現できなかった後悔と、ドラマ化を成功させたHBOへの嫉妬を語った。

ゲーム『The Last Of Us』の映画化企画が最初に報じられたのは、リリースの約1年後にあたる2014年5月のこと。ゲーム版のクリエイターであり、のちにドラマ版でも監督・脚本・製作総指揮を務めるニール・ドラックマンは、映画版『バイオハザード』シリーズを手がけたソニー・ピクチャーズ傘下のScreen Gemsに企画を持ち込んだのである。監督・製作にはニールの敬愛するサム・ライミが就任し、ニール自身もプロデューサーに名を連ねた。

ところが、この企画は思いのほか早く立ち往生する。2015年1月には脚本の第二稿が完成し、俳優陣による本読みも行われたものの、その後1年半にわたって動きが見られなくなってしまったのだ。2016年11月、ライミは「ニールの計画とソニーの計画が違うし、私の会社には権利がないので、彼(ニール)をきちんと手助けできない」と述べ、企画が身動きのとれない状況にあることを認めていた。

サム・ライミ
サム・ライミ Photo by Gage Skidmore https://www.flickr.com/photos/gageskidmore/14586845507/

のちにニールが明かしたところによると、当時のソニーはスケールの大きい映画化、『ワールド・ウォーZ』(2013)のような作品を目指していたが、ニール自身は『ノーカントリー』(2007)を参考にしていたとのこと。もちろん両者の意見は噛み合わず、数年間にわたる企画開発を実らせることができないまま、ソニーは映画化権を手放している。

ドラマ版「THE LAST OF US」が快進撃を見せる2023年2月、ロスマン会長は米Business Insiderのインタビューにて「『The Last Of Us』をソニーで映画化すればよかったと思いますか?」と聞かれたロスマン氏は「はい」と率直に回答。HBOを羨んでいることを明かした。

「でも私は彼ら(HBO)の成功をとても喜んでいますし、(『The Last Of Us』の映像化は)エピソード形式の方が適していると思います。いい意味で嫉妬しているんです。

本作が映画よりテレビドラマ向きだったことは、ニール自身も早くから実感していたことだった。彼は以前、映画化が頓挫した理由のひとつとして、「(ゲームの)通常15時間かかる体験を(映画の)2時間に凝縮してもうまくいきません。ストーリー上重要だと思われる要素が常に出てきますから」と指摘していたのである。

原作ゲームでトミー・ミラー役を、ドラマ版でペリー役を演じている俳優のジェフリー・ピアースは、映画版の本読みに参加していた人物のひとり。映画化の限界についてはニールと同意見のようで、「最高の出来であっても決して傑作にはならなかったでしょう」と語っている

ドラマ版「THE LAST OF US」はリリース以来、目覚ましい視聴者数を記録している。第1話は470万人の同日視聴者数を獲得し、過去13年のHBOオリジナルドラマとして「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」(2022-)に次ぐ最大のデビューに。その後第4話まで、毎週シリーズ最高視聴者数を更新し続けた。さらに、原作から大きく逸脱した第3話は約75分かけてビル&フランクの物語を掘り下げ、「テレビ史上最高のエピソード」と絶賛を浴びている。

HBOオリジナル「THE LAST OF US」は、U-NEXTにて独占配信中(毎週月曜に新エピソードを配信)。

Text: 稲垣貴俊, Kyoko

Sources: Business Insider, Entertainment Weekly, New Yorker, IGN(1, 2

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