Menu
(0)

Search

「劇場・配信の同時公開、映画業界を破壊」米ソニー幹部、他社スタジオの戦略を批判

映画館
Photo by Dick Thomas Johnson https://www.flickr.com/photos/31029865@N06/8050542847/ Remixed by THE RIVER

ソニー・ピクチャーズ幹部のジョシュ・グリーンスタイン氏が、ハリウッドにおける劇場公開&配信リリースの同時展開を批判した。米Deadlineが報じている。

2021年8月23日(現地時間)、米CinemaConにて、ソニー・ピクチャーズは『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の予告編のほか、『ゴーストバスターズ/アフターライフ』や伊坂幸太郎原作『マリアビートル』の映画版『Bullet Train(原題)』などの最新映像を上映。ソニー・ピクチャーズ モーション・ピクチャー・グループを統括するグリーンスタイン氏は、ソニーの「劇場公開を守り、保護することに力を注ぐ」という姿勢を明らかにした。

新型コロナウイルス禍において、ハリウッドの大手スタジオは劇場公開と配信リリースの可能性を模索。ディズニーは自社サービス「ディズニープラス」におけるプレミア アクセス(劇場公開と同日より追加料金の支払いで視聴可)としての配信を一部作品で実施し、ワーナー・ブラザースも自社サービス「HBO Max」にて、劇場上映作品はすべて公開同日に配信する戦略を取った(対応コースの会員は追加料金なし)。その中にあって、ソニーは大手スタジオでは唯一配信サービスを持たないため、一部作品の公開を断念し、NetflixやAmazonに売却するという方法を取ってきたのである。

グリーンスタイン氏は、プレゼンテーションの中で「劇場と自宅で映画を同時に公開することが、我々の業界全体を破壊しています。私たち(ソニー)の作品は、最初に映画館で独占公開します」とコメント。「映画館と劇場映画は勝利することでしょう。過去19ヶ月、つらく厳しいことが続いていますが、きわめて現実的な課題を無視することなく、ソニーは長期的な視点で映画ビジネスに取り組んでいく」とも述べた。

このプレゼンテーションには、同じくモーション・ピクチャー・グループのトム・ロスマン会長も登場。ディズニー/20世紀スタジオ製作の『フリー・ガイ』を名指しして、「最高のビジネスをやってのけた」と称えている。

「(『フリー・ガイ』は)まず素晴らしい作品であり、その次に、家のテレビでは観られない。(こういう方法を)とことんやってほしい。ビル・クリントンは“経済が重要なのだ、愚か者(the economy, stupid)”と言いましたよね? つまり“方法が重要なのだ、愚か者”ということですよ! 我々はハリウッドで最も賢いわけではないけれども、なんとかするつもりでいます。」

ロスマン会長は「コロナ禍も(いずれ)終わる」と述べ、「(ソニーでは)どのメディアよりも劇場を大切にします」との姿勢を強調した。2021年、映画業界はいまだ苦境を強いられており、興行成績がコロナ禍以前の数値まで回復するには時間がかかるとみられている。その中にあって、ソニーは自社のスタンスを明言し、他社との方針の違いをはっきりと打ち出した格好だ。

あわせて読みたい

Source: Deadline

Writer

アバター画像
稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

Ranking

Daily

Weekly

Monthly