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『ソウルフル・ワールド』が「夢を追う物語」ではない理由 ─ 監督「人生はその後も続く」

ソウルフル・ワールド
(C)2020 Disney/Pixar.

ディズニー&ピクサー最新作『ソウルフル・ワールド』が、2020年12月25日(金)よりDisney+にて配信開始となった。『インサイド・ヘッド』(2015)のピート・ドクター監督が新たに描くのは、生まれる前の魂(ソウル)の世界。テーマとして取り上げられるのは、人の夢や好奇心である。しかし監督は、本作がいわゆる“夢追い物語”ではないことを強調。むしろ”夢追い物語”という発想を覆すことが大切だったと力説する。

物語の主人公・ジョーは、ジャズ・ピアニストを夢見る音楽教師。名門のジャズクラブで演奏するチャンスを手にするが、その矢先にマンホールの中へ落下してしまう。目が覚めると、そこはソウル(魂)が暮らす世界で、ジョーもソウルの姿になっていた。そこはソウルたちが生まれる前に、どんな性格や興味を持つかを決める場所。そこでジョーが出会ったのは、人間の世界が大嫌いで、何の興味も見つけられないまま何百年もこの世界にいるソウル「22番」だった。

監督・脚本のピート・ドクターは、『ソウルフル・ワールド』について「私たち自身の人生からそのまま生まれたアイデア」だと米Comicbook.comにて語っている。

「私たちには、子どもの頃に条件を与えられるようなところがあります。小さいころ、どんな人になりたいと思っていたのか、という。だけど、かつての自分が思い描いたようになれたとして、本当に幸せになれるんでしょうか。もちろん、幸せになれる人もいるし、私も自分の生き方に大きな喜びを感じていますが、そこですべてが終わるわけじゃない。人生はその後も続きます。この映画ではそこを描きたいと思いました。それに、自分の夢を追いかけるという物語はよく見るし、慣れているものだと思うので。」

ドクター監督とタッグを組み、ともに監督・脚本を手がけたのは、劇作家のケンプ・パワーズ。「ファミリー映画であり、子どもから大人までを対象としていながら、ただ夢を叶えることが目的ではないところが良いと思いました」と述べ、「長らく見てきた中で最も大胆な決断だった」と振り返った。監督やプロデューサーのダナ・マーレーとは、本当にこの路線で完成させられるのか、ディズニーの許しを得られるのかという話し合いにもなったという。

そもそも本作は、『インサイド・ヘッド』以前に『モンスターズ・インク』(2001)『カールじいさんの空飛ぶ家』(2009)を手がけ、『トイ・ストーリー』(1995)『ウォーリー』(2008)にも携わってきたドクター監督が、「自分は本当にアニメーションを作るために生まれてきたのだろうか?」との問いかけをもとに着想したもの。「なぜ私はここにいるのか、私はどこからやってきたのか、何のためにここにいるのか」という深いテーマに挑んだ一作とあって、ピクサー作品らしい深みをじっくりと堪能してほしい。

映画『ソウルフル・ワールド』は2020年12月25日(金)よりディズニープラスにて独占配信中。

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Source: Comicbook.com

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。