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ケビン・スペイシーが「ハウス・オブ・カード」風、謎のメッセージ映像を投稿 ─ セクハラ・性暴力の告発後、約14ヶ月ぶり

https://www.youtube.com/watch?v=JZveA-NAIDI サムネイル

映画『ユージュアル・サスペクツ』(1995)や『セブン』(1999)、『アメリカン・ビューティー』(1999)、『ベイビー・ドライバー』(2017)。数えきれない代表作を持ちながら、2017年10月に少年へのセクハラ・性暴力が告発されて以来、活動を休止していた俳優のケビン・スペイシーが、2018年12月24日(米国時間)に謎のメッセージ映像をSNSにて公開した。

ケビンは今回の映像で、Netflixドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」(2013-2018)で演じた主人公フランク・アンダーウッドを思わせる演技をもってメッセージを語っている。性暴力問題の発覚時点で制作されていた「ハウス・オブ・カード」最終シーズンはストーリーが大幅に見直され、フランクは死亡した設定となり、ケビンはシリーズを降板。映像のタイトル「Let Me Be Frank」には、「素直に言わせて」、そして「フランクを演じさせて」という二つの意味が重ね合わせられている。

キッチンに立ち、サンタクロースのエプロンを付けたケビンは、おもむろに語りはじめる。以下はケビンによるスピーチの全文を日本語訳したものである。

「何を求めてるのか、分かってるぞ。彼らが我々を引き裂こうとしているのは知っている。でも我々は非常にたくましく、非常に強力だ。我々がすべてを分かち合った今、私は自分自身の一番深く、そして暗い秘密を君/君たち(編注:原語では“You”。以下「君」と記す)に話した。人々の度量を、私は君に対してはっきり示したんだ。

君は私の正直さに驚いていたね。確かに、私は君を試し、考えるよう促した。そして君は、知るべきではなかったことを知りながら、それでも私を信じた。だから我々はまだ終わってはいない、誰が何を言おうともな。そして私には、君が何を望んでいるのかがわかっている。君は、私の復帰を望んでいるんだ。

もちろん、すべてを信じている人間はいる。彼らは息を殺して、私がすべてを告白するのをずっと待っている。すべては真実だ、私は自分にふさわしい罰を受けているんだと、私に白状させたくてたまらないんだ。そんなに簡単だったらいいんだけどな。もしもそうだったら、すべてはとてもシンプルだ。君と僕だけが、そんなにシンプルな話ではないと知っている。政治にせよ、人生にせよな。

でも君は、証拠もないままに、最悪の出来事を信じたりしないだろう? 事実の認定もなしに判決を急いだりしないよな? そんなことをしたのか? いや、君はしない。そんなやつらよりも、君は賢いからな。

とにかく、すべての推測は、非常に不満の残る結末や、これは“忘れられないお別れ”なのかもしれないと思わせるために作られているんだ。この数年間で、君と私に学べなかったことがあるとすれば、それは生命と芸術についてだろう。そのほかはすべて学んだ。

我々は、我々が言っていないこと、我々がしていないことについては恐れなかった。今でも恐れてはいない。だから、このことを約束しよう。私がやったのだと我々が認識していることについて、もしも私が代償を払っていないというのなら、私がやっていないことの代償を払うつもりはまったくないと。

もちろん彼らは、私のことをルールに従わない無礼者だと言うだろう。まるで私が、かつて誰かのルールに従っていたかのように。けれども私は、一度たりともそんなふうにしたことはない。そして誰もが、そうすることを好んでいたんだ。

いずれにせよ、どんな戯言や悪意、記事の見出し、裁判なき弾劾にもかかわらず、そして自分自身が死んだことにさえもかかわらず、私は驚くほど良い気分だし、自信が日々大きくなっているんだよ。もうすぐ、誰もがすべての真実を知ることになるんだと。

ああ、ちょっと待ってくれ。君は、私が死んだのを実際に見たわけじゃないだろう? (薬指に指輪をはめ、カメラを見つめて)結末が大嘘だってこともありうる。私がいないと寂しいよな。」

この映像が投稿された12月24日、米マサチューセッツ州の検察当局は、ケビンを新たな強制わいせつの疑いで訴追したことを発表した。2016年秋、ケビンが18歳の少年に飲酒させたのち、わいせつ行為に及んでいたことが発覚したためだ(ただし被害者の少年は、自分が21歳だとケビンに伝えていたとも伝えられている)。

映像の中でケビンは訴追の件に言及しておらず、映像の公開と訴追の関係は不明。しかしながら不可思議なのは、今回のメッセージが、明らかにケビン・スペイシーとフランク・アンダーウッドの境目をぼかす意図をもって語られていることだ。ケビン自身のセクハラ・性暴力問題に対する反論だと受け取ることもできれば、「ハウス・オブ・カード」で死んだことになったフランクの声として聞くこともできる。言葉はすべてセリフとして語られているし、映像の終わり方もこれがフィクションであることを強調するかのようである。

Varietyが入手した情報によれば、やはりNetflixは今回の映像に関与していないとのこと。映像の発表にあたってはケビン本人以外にも仕掛け人がいるはずだが、その真意はどこにあるのか……。なおSNSには映像に対する激しい批判が寄せられている一方、ケビンが久々に見せた演技に対しては「この才能が失われたのは惜しい」というポジティブなコメントも確認できる。

ケビンがSNSに登場したのは、2017年10月、初めてセクハラ・性暴力が告発されたのちに声明文を発表して以来およそ14ヶ月ぶり。姿を見せたのは初めてとなる。

Source: Variety

Writer

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稲垣 貴俊Takatoshi Inagaki

「わかりやすいことはそのまま、わかりづらいことはほんの少しだけわかりやすく」を信条に、主に海外映画・ドラマについて執筆しています。THE RIVERほかウェブ媒体、劇場用プログラム、雑誌などに寄稿。国内の舞台にも携わっています。お問い合わせは inagaki@riverch.jp まで。

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