【インタビュー】『スパークス・ブラザーズ』エドガー・ライト監督、スパークスに今こそ聞きたいことは? ─『舞』映画化、ドキュメンタリー製作の裏話も明かす

『ベイビー・ドライバー』(2017)『ラストナイト・イン・ソーホー』(2021)などで知られる鬼才監督、エドガー・ライト。2022年4月8日より公開中の最新作『スパークス・ブラザーズ』は、監督初となる音楽ドキュメンタリーだ。
本作は米国出身の兄弟バンド、スパークスをとらえたドキュメンタリー。彼らの音楽的ルーツまでさかのぼり、50年に及ぶ謎に包まれた歴史が紐解かれていく。これまでに25枚ものアルバムをリリースし、その発表楽曲数は345にものぼるなど、いまなお精力的に活動を続けているスパークス。しかし、自分たちの独特な音楽を貫き続けることで、世間に受け入れられない時期も長くあった。そんな音楽界の異端児の過去・現在・未来が、メンバーのロン・メイル&ラッセル・メイルや、世界的アーティストたちへのインタビュー、さらにアーカイブ映像などで初めて明らかになる。
この度、THE RIVERはエドガー・ライト監督に取材する機会に恵まれた。ZOOMでの取材では、スパークスからサインしてもらったというアルバムをみせてくれたり、監督としてだけでなく、ひとりのファンとしてスパークスの魅力や秘話だったりを熱量満載で語ってくれている。
エドガー・ライトにとってのスパークスとは

──『ラストナイト・イン・ソーホー』のインタビューに続き、この度は貴重な機会をいただきありがとうございます。前回は、「ツイン・ピークス」に関する話をたくさんしていただきまして、とても有意義な時間でした。
ハハハ。もちろん、覚えていますよ!
──前回の取材では若い頃、「ツイン・ピークス」のオードリー・ホーンのポスターを部屋に飾っていたとお話されていましたが、スパークスのポスターは飾っていなかったのでしょうか?
実のところ、子供の頃は音楽のポスターはもっていませんでした。映画やドラマ、コミック関係のものが多かったですかね。ただ、今はもちろんありますよ。この映画のもので、ロンとラッセルのサインを書いてもらいましたから(笑)。
──羨ましすぎます。お気に入りのアルバムにサインをもらったことはありますか?
この映画で彼らが取材を受けに来ていたとき、僕の家で一緒に食事することになりました。僕は彼女と共に彼らに料理を振る舞ったのですが、何年にもわたり関係を築き上げ、映画を一緒に作った後にもかかわらず、それでも僕にとっては大事だったんです。“スパークスが僕の家で食事をしているなんて信じられない”みたいな(笑)。
これまでにスパークスからサインをもらったことがないことにも気付きました。そこで、“アルバムにサインしていただけませんか?”と彼らが帰る前に伝えて、「プロパガンダ」というアルバムに書いてもらいましたよ。
──これまた貴重な思い出話をしていただきありがとうございます。それではまず、スパークスとは監督にとってどんな存在なのでしょうか?何が監督を惹きつけているのでしょうか?
彼らの好きな部分は、真剣に音楽に取り組みながらも、ユーモアのセンスが必ず盛り込まれているところです。僕自身、映画に対して同じような価値観を持っていますから。それは作品を作り上げる上で、楽しむことを決して忘れないというところですね。
──たしかにスパークスの音楽は伝統的でありながらも独創性に満ち溢れていますよね。監督の作品や映画作りと共通点があるようにも感じました。
この映画を作り始めるまでは、スパークスと僕に何か繋がりがあるとは考えもしませんでした。ただ、初めて彼らと会ったとき、不思議にもすぐに仲良くなれたんです。彼らは本当に面白くて、魅力的で、大の映画のファンでもあるんです。たくさん話をしていく中で、ユーモアのセンスが似ていることに気付き、だからこそ仲良くなれたのだと思っています。
そこで、“そもそもスパークスがユーモアのセンスを僕に与えてくれたのかもしれない”と考え始めるようになって。それというのも、こういうのは若い頃に好きだったものなどから形成されていくことが多いと思うんです。実際に僕は若い頃、スパークスはもちろん、モンティ・パイソンやピーター・クック、ダドリー・ムーアが好きでしたから。
──若い頃から彼らに夢中になっていて、無意識にも影響を受けていたということですが、そんなスパークスと監督として仕事を共にしてみていかがでしたか?