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『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』ラスト解説 ─ 『アイアンマン』と真逆のエンディングになった理由

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
©2019 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved. | MARVEL and all related character names: © & ™ 2020 MARVEL.

マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)では、スパイダーマン史上最大の危機的なラストが描かれる。この記事では、『アイアンマン』(2008)とは全く対照的となったこの映画のエンディングについて考察してみよう。

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019)の内容が含まれます。

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
© 2019 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved. | MARVEL and all related character names: © & ™ 2019 MARVEL.

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』の結末

ピーター・パーカーが通うミッドタウン高校が訪れた研修旅行先のヨーロッパで、彼はミステリオというヒーローを名乗るクエンティン・ベック(ジェイク・ギレンホール)と出会い、交流を深める。父親のいないピーターはトニー・スタークを失った喪失感に苛まれており、ベックはトニーに代わるような新たな友だった。しかしベックの正体はペテン師であり、彼がマルチバース(異世界)からやってきたという話も、エレメンタルズと呼ばれる怪物の存在も全てでっち上げだったことが明らかになる。

スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム
Jake Gyllenhaal is Mysterio in Columbia Pictures’ SPIDER-MAN: ™ FAR FROM HOME.

ピーターはロンドンで、ドローン軍団を操るベックとの最終決戦に挑む。命からがら戦いを制したピーターは、最後の最後まで騙し討ちを仕掛けようとしたベックの奇襲を見破ると、ロンドンを襲っていた大量のドローンに「攻撃中止!全て実行しろ!」と音声で指示を下して街を救う。その側でベックは「人は何かを信じたい。今の時代、なんだって信じる」と言い残して息を引き取る。

大惨事となった街でピーターはMJ(ゼンデイヤ)と再会すると、ついに想いが通じ合い、ぎごちない二人はキスをして結ばれる。ニューヨークに戻ったピーターは、スパイダーマンとして街を軽やかにスイングし、MJを迎えに行く。

二人は、映画『アベンジャーズ』(2012)クライマックスのニューヨーク決戦でアベンジャーズが結集したグランド・セントラル駅前で落ち合うと、ピーターはMJを抱えてニューヨークの摩天楼をスイングする。MJは絶叫マシンさながらに怖がっている。これは、サム・ライミ版『スパイダーマン』のピーター(トビー・マグワイア)が、メリー・ジェーン(キルスティン・ダンスト)を抱いてスイングしたシーンへのオマージュのようでもある。

この微笑ましいシーンと共に映画は一旦エンディングに入るが、その途中(ミッドクレジットシーン)では重大なおまけ映像が挿入される。ピーターはスイングに耐えられなくなったMJを路上に降ろし、そのまま解散の流れになったところ、街頭ビジョンに気になるニュースが放映される。先日戦ったロンドン襲撃事件の新事実が寄せられたという。

映像は、ミステリオことクエティン・ベックが死の直前に残していた“最後の嘘”によるものだ。映像内でベックは、エレメンタルズを退治したのは自分だが、ドローン軍団はスパイダーマンがトニー・スタークの技術を悪用して作ったもので、これに襲撃された自分は間も無く死ぬと詐称する。その“証拠映像”では、スパイダーマンが「全て実行しろ!」と発言した箇所のみが“切り抜き”され、「ドローン攻撃で死傷者が多数出ます」との音声アナウンスに貼り付けられており、あたかもスパイダーマンがドローンによる虐殺を実行したかのように仕上げられている。

このフェイク映像を公開したメディアとして登場したのが、かの有名なデイリー・ビューグルだ。サム・ライミ版の『スパイダーマン』トリロジーで、J・K・シモンズが演じた癇癪持ちのJ・ジョナ・ジェイムソンが編集長を務めるメディア。ライミ版では新聞社だったが、時代が変わった『ファー・フロム・ホーム』ではネットメディアとして再登場。ライミ版同様、シモンズがカメオ出演した。別シリーズの同名キャラクターを同一役者が演じるのはMCUとしてはこれが初で、公開当時は多くのファンが劇場で腰を抜かした。

ちなみにシモンズの出演は、映画の完成間近の土壇場になって急遽決定したもの。ライミ版の白髪頭とは違う「ノーヘアー」での登場となったが、実は撮影前日に出演が決まったものだから、カツラを作る時間すらなかったということである。

本バージョンのJ・Jも相変わらずのスパイダーマン嫌いで、「スパイダーマンがミステリオを惨殺した!」と決めつけてかかる。さらにJ・Jは、ベックがカメラに向かって「スパイダーマンの正体は……、ピーター・パーカーだ!」と証言する映像も公開。ピーターの素顔の写真まで放映したことで、彼の隠された正体が全世界的にバラされてしまったのだ。映画は、ピーターが「What the F**k!(マジかよクソ!)」と言いかける瞬間で終わるのだが……。

Writer

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中谷 直登Naoto Nakatani

THE RIVER創設者。代表。運営から記事執筆・取材まで。数多くのハリウッドスターにインタビューを行なっています。お問い合わせは nakatani@riverch.jp まで。

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